しん)” の例文
破陣の勢いで錫杖を一しんすれば、丘小一の影は宙へ躍って新月のやいばをかざし、崔道成は低く泳いで颯地さっちけんを横に払う。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しんぱつ、また、眼もとまらぬ一げきとつ、すべて見事な肉体のから演舞だった。史進は、声をらして、そののどから臓腑ぞうふを吐かんとするほどに身も疲れてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、この夜は、わざと大祝宴を張って、近来とみに沈衰ちんすいしがちな山寨さんさいの士気に一しんの気を吐かせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しんとう——つまり斬り損じた刀の力がそれなり空間へ失われて、また二の太刀を持ち直して斬り込むというような——そんな速度ののろいものではなかったのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この人の習慣として、毎朝、起きぬけに百しゃしんをことかかなかった。百射とは、まだきに起きて、弓を百本射る。百振とは、大剣を払って、居合いあいの素振りを試みることである。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)