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芯
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しん
ふりがな文庫
“
芯
(
しん
)” の例文
「たびたび御苦労様で——、二階から今日はよく富士が見えます。邪魔な竹の
芯
(
しん
)
を止めて、よく眺めのきくようにしました。どうぞ」
銭形平次捕物控:141 二枚の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「おらあもういっそく(百)四五十もあげたぜ、そろそろひきあげて一杯やるとしようや、おらあもう躯の
芯
(
しん
)
まで冷えきっちまった」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と
睨
(
ね
)
め廻した時は、さしも戦い
下手
(
べた
)
の同勢も、非を
覚
(
さと
)
って形を変え、五弁の花が
芯
(
しん
)
をつつむように、この敵ひとりを囲み込んでいた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
サイは、婆さんに押しつけられた洗いものまで竿にとおしてしまうと、徹夜して来た眼玉の
芯
(
しん
)
がズキズキ疼くような疲労を覚えた。
三月の第四日曜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
平たい顔なのに
顎
(
あご
)
がとがってみえ、ぎゅっと引きむすんだ口もとは
芯
(
しん
)
の強さをみせ、Iとは逆に何か寄りつきがたさを感じさせた。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
▼ もっと見る
★明治二十四年九月、探偵小説「薔薇娘」ブラック訳述(原作不明)今村次郎速記、三友舎発行、四六判ボール
芯
(
しん
)
表紙、二九二頁。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だが、そういう、いわば外括的なことではなく、もっと
芯
(
しん
)
のほうにまで画一化が及んでくる、ぼくはそういう気がしてきたんだ。
お守り
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「ふん!」大次郎は不愉快気に顔をしかめて、「変えたのは、名前だけではないようだな。貴公、心の
芯
(
しん
)
から変ったようだな。」
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ところで大気中で水蒸気が凍りついてといっても、大気中に、何か凍りつく
芯
(
しん
)
になるものがなくては、水蒸気は凍りつけない。
自然の恵み:――少国民のための新しい雪の話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「佐治という男は、学校時代から一寸変ったところがあって、他人から随分誤解されたものだが、
芯
(
しん
)
は、気の弱い正直な男さ」
偽悪病患者
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
そう聞くとあっしも頭の
芯
(
しん
)
がジインとして
考
(
かんげ
)
え込んじまいました。口では強いことを云いながら心の奥ではやっぱり心配していたんですね。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
目の動き、顔いろのそよぎ、心の
芯
(
しん
)
に何ぞ
狼狽
(
ろうばい
)
しているところはないかと、その鋭く
烱々
(
けいけい
)
と光るまなざしでじいっと両名を見すくめました。
右門捕物帖:27 献上博多人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
背の高い、ひょろひょろしているところが、弱そうに見えたけれど、
芯
(
しん
)
は
丈夫
(
じょうぶ
)
で、歩兵にはもって来いだと云う人もあった。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そこでまず、
糞
(
ふん
)
だとか、根だけ食い残したのぼろ
菊
(
ぎく
)
だとか、
玉菜
(
たまな
)
の
芯
(
しん
)
だとか、
葵
(
あおい
)
の葉だとかいうものの
堆高
(
うずたか
)
く積まれた上に、彼は腰をおろす。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「世界を闇とわたしとだけにのこした。」そして夜の黒い
芯
(
しん
)
はいかなる人間の近づきによってもけがされることはなかった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
芯
(
しん
)
は金無垢の伸べ棒で、その上に蝋を薄く流しかけて、蝋燭のように見せかけてある。これにはみんなも驚いて、早速に係りの役人衆に訴え出る。
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
さて或る日、巳之助がランプの
芯
(
しん
)
を仕入れに大野の町へやって来ると、五、六人の
人夫
(
にんぷ
)
が道のはたに穴を堀り、太い長い柱を立てているのを見た。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
つまり鉛筆の
芯
(
しん
)
の折れほどのラジウムは、紙風船の花びらと尻あてとの紙の間に巧みに貼り込まれてしまったのだった。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
頭の
芯
(
しん
)
がトロトロと
微睡
(
まどろ
)
んでるような、それでいて好奇心が胸一杯にはびこって、眼が
冴
(
さ
)
えてくるような、何ともいえぬ妙な気持がしてくるのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
出帆
(
しゅっぱん
)
前からの神経異常が、あなたとの
愉
(
たの
)
しい交わりに、
紛
(
まぎ
)
らわされてはいたが、こうした場合一度に出て来て、頭の
芯
(
しん
)
は重だるく、気力もなくなり
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そうして私はランプの
芯
(
しん
)
を出して、その光を出来るだけ大きくしたことを覚えておる。ゲーテが死ぬ前に、光という一語を
洩
(
も
)
らしたとも聞いておる。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
見ると、小さな油壷の中の石油はまったく尽きはてて、灯は
芯
(
しん
)
だけが含んでいる油で、盛んな油煙を吐きだしながら、真黄色になってともっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それはたちまち器械の中で、きれいな黄色の穀粒と白い細長い
芯
(
しん
)
とにわかれて、器械の両側に落ちて来るのでした。
耕耘部の時計
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
鼻
(
はな
)
の
穴
(
あな
)
が
開
(
ひら
)
きッ
放
(
ぱな
)
しになる
程
(
ほど
)
吸
(
す
)
い
込
(
こ
)
んでいた
春重
(
はるしげ
)
は、ふと、
行燈
(
あんどん
)
の
芯
(
しん
)
をかき
立
(
た
)
てて、
薄気味悪
(
うすきみわる
)
くニヤリと
笑
(
わら
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
背骨の
芯
(
しん
)
がズキズキと痛んだ。身体の節々がしびれるようであったが、その癖身体の内側が変に熱っぽかった。柱によったまま宇治はしずかに目を閉じた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
芯
(
しん
)
が減ってきた。待てよ、月に一スー以上は
灯火
(
あかり
)
にかけられねえ。横になったら眠るが一番だ。もうポール・ド・コック(訳者注 当時の物語作者)の話を
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
空間が小刻みに
顫
(
ふる
)
えて、頭の
芯
(
しん
)
が
茫
(
ぼう
)
として来る。このような時——人間は何を考えるのか——このような時、人間は人間の……人間の白い
牙
(
きば
)
がさっと現れた。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
好きで好きで武者振りつきたいくらいだったわ。お母さんだって、あたしを
芯
(
しん
)
から可愛かったらしいのね。
冬の花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あれでこいさんは、何と云ってもお嬢さん育ちのところがあって、
芯
(
しん
)
は気の弱い、人の好い女なのである。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は座のまン中を、膳や盆の並んでいる間をたくみに避けて、次第に近よって来た。酔いのまわった身体の
芯
(
しん
)
に、一筋だけ白く光って、胸の思いが通っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
先程私が庭で話をした看護婦が、安樂椅子に腰を掛けて眠つて居り、
卓子
(
テエブル
)
の上には
芯
(
しん
)
を切らない蝋燭が仄暗くゆらめいてゐた。テムプル先生の姿は見えなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
ななえは
芯
(
しん
)
まで冷える寢臺の枠につかまり、社村を押し退かうとして身悶えしたが、あの折は蜜でも舐めてからだが温まるやうな、からだに輕いものを感じてゐたが
渚
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
まあ話を聞くよりは自分で
一寸
(
ちょっと
)
息を止めてみ給え、始めの二三十秒はなんでもないかも知れないが、仕舞いになるとこめかみの辺の脈管の搏動が頭の
芯
(
しん
)
まで響いて来る。
息を止める男
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
獄中でゲタの鼻緒の
芯
(
しん
)
をない、封筒はりをしたが、獄房の中へもシャバのタヨリが伝わってくる。ある房から新潟県の木崎村で大小作争議が起っていることを知らされた。
私の履歴書
(新字新仮名)
/
浅沼稲次郎
、
日本経済新聞社
(著)
あたりの騒がしい物音を突きぬけて、ガーンと鉄材が鉄材にぶつかる恐しい音響が強く
鼓膜
(
こまく
)
をうった。頭の
芯
(
しん
)
まで響いて来た。けたたましい人声が聞えたような気もした。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
ランプの
芯
(
しん
)
は思ひ切り出されて、炎の舌はぺろぺろと伸び縮みした。蓆の二つの隅に蚊いぶしが焚かれ、青い煙が風の加減でランプを包む時だけ、あたりがわづか暗くなつた。
生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
母は
浅墓
(
あさはか
)
ですけれども、その浅墓さが幾枚も重なり合っていて、
剥
(
む
)
く骨折さえ
厭
(
いと
)
わなかったら、その
芯
(
しん
)
に何かありそうにさえ見える女でございました。父はそれに引っかゝった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ネヤマノネホズキという
芯
(
しん
)
を抜き出し、袋にしてかんで鳴らすことがその一つで、これは多分ずっと前からもあったろうが、丹波酸漿の口にいっぱいになるようなのが出てから
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
こんなことをいっては申し訳ないのだが、その
握飯
(
むすび
)
は、びっくりするほど黒い色をしている。それに、二つに割ったその
芯
(
しん
)
には、何ひとつ慰みになるようなものもはいっていない。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼は自分の不安な心を見るやうにランプの揺れる
芯
(
しん
)
を凝視して、
癇
(
かん
)
を
苛立
(
いらだ
)
てて居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
それに対抗するような気で、やたらに噴霧を注ぎかけてやりたくなった、後はアルコール・ランプの
芯
(
しん
)
をかき立てた。コップの食塩水が少しでも減ると、すぐに缶からなみなみと注いだ。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そのナデコフ型置洋燈と云うのは、電燈普及以前
露西亜
(
ロシア
)
の上流家庭に
流行
(
はや
)
ったもので、
芯
(
しん
)
の加減
捻子
(
ねじ
)
がある部分にそれがなく、そこが普通型のものより遙かに大きく小大鼓形をしている。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
中庭の
籐椅子
(
とういす
)
に寝て夕ばえの空にかがやく
向日葵
(
ひまわり
)
の花を見る。勢いよく咲き盛る花のかたわらにはもうしなびかかってまっ黒な大きな
芯
(
しん
)
の周囲に
干
(
ひ
)
からびた花弁をわずかにとどめたのがある。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
今は
芯
(
しん
)
を細めた、一基の燭台の
幽
(
かす
)
かな光が、わずかに四辺一間四方ぐらいを、明るめているばかりだったので、その光の輪の中にはいっている、範覚の姿と姥の姿と、姥の膝の前の床の上に
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
当時はまだ電灯はなくて
蝋燭
(
ろうそく
)
やランプで、ランプも昔は五分
芯
(
しん
)
三分芯などがあったが改良されて芯を丸くした空気ランプというのが出来、それが非常に明るいのでそれを使って一生懸命に勉強した。
美術学校時代
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
まだ頭の
芯
(
しん
)
は妙にもやもや
火照
(
ほて
)
つてゐますけれど、でももうあと一踏んばりです。千恵はこの手紙をとにかく最後まで書きあげて、封をしてしまはないことには、とても今夜は眠れさうもありません。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
諏訪 頭の
芯
(
しん
)
が、少し痛いの。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
「それなんですよ、甘いやうでビリヽとして、柔かいやうで
芯
(
しん
)
があつて、
口説
(
くど
)
けさうにして、その實口説かせないのがあの女なんで」
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
初めの拳で頭の
芯
(
しん
)
が
痺
(
しび
)
れ、よろめきながら、腹とうしろ
頸
(
くび
)
に烈しい打撃を感じ、倒れたときに、後頭部が岩に当る鈍い音を聞いた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
油ボロを
芯
(
しん
)
に枯れ葉などを仕込んだ竹編みの火焔玉やら、投げ
松明
(
たいまつ
)
の類だった。たちまち、火を噴く活火山のように寄手の上へ降りそそぐ。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芯
常用漢字
中学
部首:⾋
7画
“芯”を含む語句
花芯
燈芯
帯芯
三分芯
二分芯
前芯
灯芯
燈芯剪
燈芯奇僧伝
燈芯皿
紙燈芯
芯切
芯切壺
芯切鋏
鉄芯
雌芯雄芯