しず)” の例文
私は氏の部屋を辞して自分の部屋で暫くやすむ——しずけさや、昼寝まくらにまつわる蚊——こんな「句」のようなものを詠んで麻川氏の寂し相な眼つきをおもった。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もりを越え、田を横ぎり、また林を越えて、しのびやかに通りく時雨の音のいかにもしずかで、また鷹揚おうような趣きがあって、やさしくゆかしいのは、じつに武蔵野の時雨の特色であろう。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そのなんともいえないしずけさがいくら見ていてもきないのです。
「夜窓留客一灯幽。酔後陶然解旅愁。談笑何妨渉奇怪。匹如坡老在黄州。」〔夜窓客ヲ留メテ一灯しずカナリ/酔後陶然トシテ旅愁ヲク/談笑何ゾ妨ゲンヤ奇怪ニわたルヲ/たとフレバ坡老ノ黄州ニ在ルガ如シ〕また或時はかき
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)