わり)” の例文
旧字:
番新「あらまア、可愛相に、小三さんがあの眼のわりい人を頼んでお金を持たしておまはんの様子を聞きによこしたのかも知れないよ」
「艶じゃア無い、真個ほんとにサ。如才が無くッてお世辞がよくッて男振も好けれども、唯物喰ものぐいのわりいのが可惜あったらたまきずだッて、オホホホホ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「五十五銭だっていいさ。日を並べられるもの。おらなど、天気のわりえどぎ出来ねえがら、そうさな、一日四十銭平均にもなんめえで、きっと。」
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
わりいどころか! 誰だって、賞めとるよ。ようでけた心のひれえお方じゃと……あの人柄だもん、悪くいわれるところなんぞ、なえじゃなえか……」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
屠犬児は天窓あたまきて、「むこうがおめでたいだけにちっとは冥利みょうりわりいようだ。はて、てい騙取かたりじゃねえか。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それ、そこがですよ! どこもわりいと言っていらっしゃらねえだが、——それがてえへん病気なんでがす」
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
してこんなところへ来ているとは人がわりいな、人じゃなかった、犬が悪いんだ——だが、お前は良い犬だ
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あに! 年によ。わりいこたあいわねえだから、日傭取るだあよ。いつだあておらが世話あしてやる」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その間にゃいい目にもわりい目にも遭えば、もっといい目にももっと悪い目にも遭ったし、いい天気にも悪い天気にも遭ったし、食物がなくなったこともあれば、斬り合いをやったこともあるし
内の犬は弱虫で、軍鶏なぞ捕る器量はないが、と云いつゝ、確に此方の犬とみとめたのかときいたら、かみさんは白い犬だった、聞けば粕谷かすやわりイ犬が居るちゅう事だから、れで来たと云うのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
安「お帰んなせえ、何方どちらへ、おむけえにきたくっても見当が分らねえから出る事が出来ねえんだ、お目がわりいから親方も心配してました」
その訊き方はちょっと狼狽あわてていた。同時に梅三爺の顔には、さっと不安の表情が流れたようであった。「市平が、何かわりごどでもしたのであんめえがな?」
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
といっちゃわりいでやすが、……こいでまあお嬢様お二人も、もうこの世に何にも思い残しなさることもねえようなわけで……今頃はお三人で、楽しく三途さんずの川原ででも
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「そのまたわりい文三の肩を持ッてサ、あたしに喰ッて懸ッた者があると思召おぼしめせ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「何、抱ッこで寝るッ、若い奴等、気のわり談話はなしをしてるな。」と表の戸がらりと開け、乱髪の間より鬼の面をぬっと出すは、これ鉄蔵という人間の顔なり。これにおびえてかの女の児は遁出にげだしたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「気味のわりい笑い方をするじゃないか。なぜだい?」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
作「はア宜うござえやす、立派な先生だからわりい烟草なんぞア呑まねえから、大急ぎでいゝのを買ってなせえ……あんた銭有りますかえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しんわりいてッたッて」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
長「真暗だから見えねえや、鼻アつままれるのも知れねえくれとこにぶっつわッてねえで、燈火でも点けねえ、縁起がわりいや、お燈明でも上げろ」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
作「話したってかんべえ、それで其の蚊帳かやア質屋へ持って行こうって取りに掛ると、女房かみさん塩梅あんべえわりいし赤ん坊は寝て居るし」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わりい跡はいだアから貴方あんたも気を落さずに身体を大切でいじにして下せえまし、何事も子供と年寄に免じて勘忍しておくんなさいよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長「いつぞやは種々御馳走を戴きまして、それから此来こっち体がわりいので、碌に仕事をいたしませんから、棚も木取きどったばかりで未だ掛りません」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
男「エヽコウ潮時がわりいもんだから滅法界めっぽうけえに遅くなった、なにしても寒くって堪らねえから何処かで一ぺいろうか」
與「誰エ小言云った、能くねえこった、貴方あんた正直だからわりい、此の大病人たいびょうにんに小言を云うってえ、此の馬鹿野郎め」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いくら温順おとなしいたってからにわりい奴にでもくっついて、え、おう、智慧え附けられてい気になって、其の男に誘われてプイと遠くへくめえもんでも
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
めえさん此の薬をあまの口んなけっぺし込んで……半分噛んで飲ませろよ、なに間がわりい……横着野郎め
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実はおらアお内儀さんのめえだが、てめえに手を突いて謝るくれえ親の方がわりいんだが、汝の知ってる通り、此の暮は何うしても行立たねえ訳になっちまったんだけれども
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
われなさけねい人だなア、わしから事を起して旦那様に御迷惑をかけては済まねえし、われを突出して此のに難儀の掛るのを見ては居られねえから、おれわりい事をした覚えはねえが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多「身分が違うから仕様がねえが、貴方あんたでもお母様かゝさまでも加減のわりいような事もなかんべいが、し有ったらば山口屋の手代多助と云って呼びによこして、わし逢わしておくんなせいよ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小「手前てめえほんとに六百しかねえのか、縁起がわりいや、夜が明けてしまう、おきろ/\」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私がわりいか向うな士族とかいうが悪いか見定めて人を引張ったら宜かろう
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はアーわりい事をしたと思いやしたから、正直に打明ぶんまけて旦那さまに話いして、私が千代に代って切られた方がいと覚悟をして此処こけえ出やした、さアお切んなせえ、首でも何でもお切んなせえまし
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此の皿さえ無ければいと私は考えまして、とうから心配しんぺえしていました、所で聞けば、お千代どんはとしもいかないのにかゝさまが塩梅あんばいわりいって、い薬を飲まねば癒らない、どうか母さまを助けたい
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もっと金次きんじの野郎がわりいんでございやさアねえ、湯屋ゆうやでもってからに金次の野郎が挨拶しずにぐんとしゃがむと、おめえさん甚太っぽーの頭へ尻をせたんでごぜいやす、そうすると甚太っぽーが怒って
清「なに来たアきまりがわりいなア」