“いた”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:イタ
語句割合
傷20.2%
痛13.4%
到11.5%
至6.8%
致6.6%
板6.1%
悼5.9%
労4.9%
太3.4%
疼2.8%
劬2.7%
甚1.7%
惨1.5%
詣1.3%
抵1.0%
宥1.0%
勞0.7%
損0.6%
臻0.5%
舞台0.5%
愁0.3%
効0.3%
慘0.3%
慰0.3%
破損0.3%
勦0.2%
迄0.2%
達0.2%
格0.2%
造0.2%
頂0.2%
迨0.1%
愴0.1%
多0.1%
徒0.1%
恤0.1%
悪戯0.1%
戴0.1%
苛0.1%
虐0.1%
逮0.1%
大0.1%
愍0.1%
版0.1%
亥太0.1%
伊太0.1%
傷心0.1%
可傷0.1%
呵責0.1%
哀傷0.1%
在世0.1%
威丈0.1%
害0.1%
就0.1%
居立0.1%
居耐0.1%
届0.1%
悪0.1%
悪痛0.1%
惡戲0.1%
投0.1%
抱0.1%
拷問0.1%
敗0.1%
木板0.1%
殺0.1%
淫0.1%
演0.1%
炒0.1%
煉0.1%
版木0.1%
疾0.1%
病0.1%
痛疼0.1%
破0.1%
竟0.1%
蒲鉾0.1%
蹙0.1%
躋0.1%
輸0.1%
隠0.1%
風0.1%
高座0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
『副馬(そえうま)には、いつも、浅月(あさずき)を曳いて参るが、いつぞや、馬場で少し脚を傷(いた)めたらしい故、他の馬に、鞍の用意をいたして置くように』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お品(しな)には與吉(よきち)が惡戯(いたづら)をしたり、おつぎが痛(いた)いといつて指(ゆび)を啣(くは)へて見(み)せれば與吉(よきち)も自分(じぶん)の手(て)を口(くち)へ當(あて)て居(ゐ)るのが目(め)に見(み)えるやうである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幸い秘境に到(いた)る道順を描いたスケッチ地図が、一枚だけついていたので、それを説明してやると、この方は簡単に承服してしまった。
ひるがへつて歐米(おうべい)を見(み)れば、さすがに母語(ぼご)は飽(あ)くまでもこれを尊重(そんてう)し、英米(えいべい)の如(ごと)きは至(いた)るところに母語(ぼご)を振(ふ)りまはしてゐるのである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
灰色にしてややつめたく、透明(とうめい)なるところの気分である。さればまことに豚の心もちをわかるには、豚になって見るより致(いた)し方ない。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
板(いた)の間(ま)には余(あま)り人が居(を)りませぬで、四五人(にん)居(を)りました。此湯(このゆ)は昔風(むかしふう)の柘榴口(ざくろぐち)ではないけれども、はいる処(ところ)が一寸(ちよつと)薄暗(うすぐら)くなつて居(を)ります。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
『可哀さうに! 恐ろしい火山の煙りが、あの勇敢なプリニイを窒息させたんですね。』とジユウルが悼(いた)ましさうに云ひました。
お咲を労(いた)わったりしているのを見ても、浩はほんとうに、もう帰るとか帰らないとかいうことを、問題にもならなくしてしまう予感が
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
稍(やゝ)老いた顔の肉は太(いた)く落ちて、鋭い眼の光の中に無限の悲しい影を宿しながら、じつと今打ちに蒐(かゝ)らうとした若者の顔を睨(にら)んだ形状(かたち)は
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
葉子は寝床にはいってから、軽い疼(いた)みのある所をそっと平手でさすりながら、船がシヤトルの波止場(はとば)に着く時のありさまを想像してみた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
驢馬や趙先達は早くも中流を渡りきり岸に近づいていたが、童伊は危っかしい許生員を劬(いた)わりがちで、ついおくれなければならなかった。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
次の年の夏、韓国にあるわが子寛の重き病煩(わづら)ふよし聞きて甚(いた)く打歎きしが、十一月二日夜更(ふけ)て門叩くを誰かと問へば、寛の声なりけり。
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
私は心からの涙に浸された先生の死のあとにそれとは相反な惨(いた)ましい死を迎えるはずであった。しかし先生の死の光景は私を興奮させた。
夏目先生の追憶 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
榛軒が事に阻げられて墓に詣(いた)らなかつたので、柏軒が代つて往つた。わたくしは前(さき)に景珉の氏が不詳だと云つたが、此日記に谷村氏としてある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
永楽(えいらく)元年、帝雲南(うんなん)の永嘉寺(えいかじ)に留(とど)まりたもう。二年、雲南を出(い)で、重慶(じゅうけい)より襄陽(じょうよう)に抵(いた)り、また東して、史彬(しひん)の家に至りたもう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「勿体ないお宥(いた)わりです。戦いに参っては病躯、陣後に帰っては、碌々(ろくろく)御恩に浴すのみで、何ひとつ、御奉公らしいこともならぬこの病骨へ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御米(およね)はかう宗助(そうすけ)から勞(いた)はられた時(とき)、何(なん)だか自分(じぶん)の身體(からだ)の惡(わる)い事(こと)を訴(うつ)たへるに忍(しの)びない心持(こゝろもち)がした。實際(じつさい)又(また)夫程(それほど)苦(くる)しくもなかつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「お前はその帶を見付けるのだ。金襴(きんらん)の立派な帶が、ひどく損(いた)んでゐる。兩方の端には穴くらゐあいたかも知れない」
今世間に行われて居る批評の径路を考えて見ると、申し訣ないが、私のやった行きなり次第の分解批評が、大分煩いして居るのに思い臻(いた)って、冷汗を覚える。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
黒衣(くろご)をかぶり、拍子木を打ち、稽古をつけ、書抜きをかき、ここに幾年かの修業を積んだ上でなければ、いわゆる“舞台(いた)に乗る”劇は書けないものであると決められていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曹操は、帰京後も典韋の霊をまつり、子の典満(てんまん)を取りたてて、中郎に採用し、果てしなく彼の死を愁(いた)んでいた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早稲田大学は学問の独立を全うし学問の活用を効(いた)し模範国民を造就するを以て建学の本旨と為す
早稲田大学の教旨 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
幽靈(いうれい)のやうに細(ほそ)く白(しろ)き手(て)を二(ふた)つ重(かさ)ねて枕(まくら)のもとに投出(なげいだ)し、浴衣(ゆかた)の胸(むね)少(すこ)しあらはに成(な)りて、締(し)めたる緋(ひ)ぢりめんの帶(おび)あげの解(と)けて帶(おび)より落(おち)かゝるも艶(なまめ)かしからで慘(いた)ましのさまなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平次の調子があまりに穏やかなのと、その言葉の奥に優しく慰(いた)わる響があるので、お鶴はびっくりして顔を挙げました。お鶴の想像していた御用聞という概念とはおよそ心持の違った平次です。
⦅あれはなかなか立派な銀時計で、真鍮や赤銅(あかがね)の品とはどだい物が違うわい。すこし破損(いた)んじゃいるが、なあに、そりゃ自分で直すじゃろうて。
「汝(わ)りやそんなに夜更(よふか)しするもんぢやねえ」と勦(いた)はるやうな窘(たしな)めるやうな調子(てうし)ていつて見(み)るのである。さうすると
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今に迄(いた)りて死せず、復(ま)た父兄今日の累を致す、不幸の罪、何を以てかこれに尚(くわ)えん。然(しか)れども今日の事は、皇家の存亡に関わり、吾が公の栄辱に係(かか)わる、万々(ばんばん)休すべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
当然気管を狭搾(きょうさく)し、やや長時間にわたる漸増的な窒息の結果、死に達(いた)らしめたものであると思う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
横井は実学を唱う、物に格(いた)りて知を致(いた)すは、彼が学問の功夫(くふう)なりといえども、彼の彼たる所以は、「神智霊覚湧きて泉の如き」直覚的大活眼(かつがん)にあるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
吾妻鏡は「偽はりて称す云〻」と記し、大日本史は「秀郷陽に之に応じ、其の営に造(いた)りて謁を通ず」と記してゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「本当に取(と)り掛(かゝ)つたのは、つい此間(このあひだ)ですけれども、其前(そのまへ)から少(すこ)し宛(づゝ)描(か)いて頂(いた)だいてゐたんです」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
所謂伊沢分家は今の主人(あるじ)徳(めぐむ)さんの世となつたのである。以下今に迨(いた)るまでの家族の婚嫁生歿を列記して以て此稿を畢(をは)らうとおもふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
焔は忽ち熾(さかり)なり、とみれば、また、かつがつうちしめて滅し去る、怪みて人に問へば、これ各(おの/\)わが家の悲しき精霊(しやうりやう)の今宵ふたたび冥々の途に就くを愴(いた)み
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
其(そ)の悪戯(いたづら)に多(いた)く機嫌(きげん)を損(そこ)ねた形(かたち)、あまり子供(こども)がはしやぎ過(す)ぎると、若(わか)い母様(おふくろ)には得(え)てある図(づ)ぢや
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「坊ちゃん、お母様がお友達と仲よくこれを召し上がるようにって。………それから今日は好いお召を召していらっしゃるんですから、あんまりお徒(いた)をなさらないように大人しくお遊びなさいましよ」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
尊き兄を溺らせしかと兄弟共に慚ぢ悲みて、弟の袂を兄は絞り兄の衣裾(もすそ)を弟は絞りて互ひに恤(いた)はり慰めけるが、彼橋をまた引き来りて洲の後面(うしろ)なる流れに打ちかけ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「相変わらずのお悪戯(いた)でござりますか」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ね、諸君(しよくん)、それを聞(き)かして戴(いた)だかうではないか。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そうして、その動悸は肉体を苛(いた)めつけるような苦しいものがともなっている場合がある。よその奥さんの気持ちの中に、こんな気持(こころ)はミジンも湧いて来ないものだろうか。
恋愛の微醺 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
このやうに酷(むご)い目にあはされてゐるのです! その胸に可哀さうなこの孤兒(みなしご)を抱きしめて下さい! 廣い世の中に身の置きどころもなく、みんなから虐(いた)めつけられてゐるのです!……お母さん
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
伏して惟(おも)ふに皇帝陛下二、一を得て光宅(くわうたく)し、三に通じて亭育(ていいく)したまふ。紫宸に御(いま)して徳は馬の蹄(つめ)の極まるところに被(かがふ)り、玄扈(げんこ)に坐(いま)して化は船の頭(へ)の逮(いた)るところを照したまふ。
ここにその矢雉子の胸より通りて逆(さかさま)に射上げて、天の安の河の河原にまします天照らす大御神高木(たかぎ)の神一五の御所(みもと)に逮(いた)りき。この高木の神は、高御産巣日の神の別(また)の名(みな)なり。
ここに伊耶那岐の大御神、大(いた)く忿らして詔りたまはく、「然らば汝はこの國にはな住(とど)まりそ」と詔りたまひて、すなはち神逐(かむやら)ひに逐(やら)ひたまひき二四。
この時伊耶那岐の命大(いた)く歡ばして詔りたまひしく、「吾は子を生み生みて、生みの終(はて)に、三柱の貴子(うづみこ)を得たり」と詔りたまひて、すなはちその御頸珠(みくびたま)の玉の緒ももゆらに取りゆらかして一八
それは、良い果実を収穫し、良い花を咲かせたいという考よりもむしろ、それ等の木や草やを愍(いた)わり愛する情のためからであった。房子は、今、朝顔の鉢を幾つとなく持っていた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
で、愍(いた)わってやるつもりで背中の上へ自分の手を乗せた。すると、その瞬間、彼は、ごそごそした木綿着物の下にむっちりした丸みを持った、弾力性に富んだ肉体の触感を覚えた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
これもまた眞鍮の版(いた)
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
眞鍮(しんちゆう)の角(かく)なる版(いた)に
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
西は明るいが、東京の空は紺色(こんいろ)に曇って、まだごろ/\遠雷(えんらい)が鳴って居る。武太(ぶた)さんと伊太(いた)さんが、胡瓜(きゅうり)の苗を入れた大きな塵取(ごみとり)をかゝえて、跣足(はだし)でやって来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
(良人は、辺土の北国へ、念仏をひろめ賜うために立って今朝は教化(きょうげ)の旅の門出(かどで)——)と信じているので、そこに悲惨らしい影や、流人的(るにんてき)な傷心(いた)みとか悶えなどは、見られないからであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……撫肩(なでがた)に重荷に背負って加賀笠を片手に、うなだれて行く細(ほっそ)り白い頸脚(えりあし)も、歴然(ありあり)目に見えて、可傷(いた)々々しい。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前がそういつて剛情を張つておいでのところを見ると、何(ど)うしてもあたしが彼家(あすこ)へ嫁入(いつ)たのを根にもつて、あたしを呵責(いた)めて泣かして、笑つてくれやうと思つておいでなのにちがひない。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
と、彼の才気や新知識を、哀傷(いた)む者もあった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思(おも)へば頼母(たのも)しいやうにもあり故郷(こきやう)へ歸(かへ)るといふからして亡(な)き親(おや)の事(こと)が思(おも)はれますと打(うち)しほるれば夫(それ)は道理(ことわり)わたしでさへも乳母(うば)の事(こと)は少(すこ)しも忘(わす)れず今(いま)も在世(いた)なら甘(あま)へるものを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
清逸は我れ知らず威丈(いた)け高になって、そう厳命した。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
送れとは、解(げ)せぬことを申すものかな。彼美酒に酔うて、ついには張郃に害(いた)められるに至ろうも知れぬ
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
視よ我(われ)戸の外に立ちて叩くもしわが声を聞きて戸を開く者あらば我その人の所(もと)に就(いた)らん而して我はその人と偕(とも)にその人は我と偕に食せん
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
うち、山ン中にひっこんでるせいか、こないしてると、中腰で居立(いた)ってるような気ィして、ちょっとも落着けしませんのン
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さあれ、其許(そこ)たち母子(おやこ)は、朝敵のとがに連(つら)なる者とはせぬ。——安住の地を与えてやろう、これにおれ——と仰せてはくださいましたが、なんぼうにも居耐(いた)え難(がと)うて
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よほど前に大坂飛脚に出し候」と云ふ詩集が久しく蘭軒の許(もと)に届(いた)らなかつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
甘ったるいかるいくすぐる様な悲しみが悪(いた)ずらの様に心の中にわき上って来る。うす暗(やみ)の夕方そうっと誰かの名をよんで見たい様な気もする事もある。
身に悪痛(いた)みを感ずるような寒気が沙原に降る。怖れと愕(おどろ)きに何(いず)れの方角を撰ぶという余裕がなかった。彼は闇の中に幾たびか躓(つまず)いた。そのたびに柔かな沙地に跪(ひざまず)いた。最後に、急な崖から転倒した。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あら秋子さん、どこへいらつしやるの。お惡戲(いた)をなすつちやいけないことよ。」
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
飛鳥(あすか)の清原(きよみはら)の大宮に太八洲(おほやしま)しらしめしし天皇二の御世に曁(およ)びて、潛龍元を體し、洊(せん)雷期に應(こた)へき。夢の歌を聞きて業を纂(つ)がむことをおもほし、夜の水に投(いた)りて基を承けむことを知らしたまひき。
直ちに熊(くま)を抱(いた)きて相角し遂(つひ)に之を殺(ころ)すなり、熊人を見(み)て逃(のが)れんとする時(とき)も亦然すと云ふ、此回の探検中(たんけんちう)は熊(くま)に逢(あ)ひし事なし、之れ夏間は人家近(ちか)き山(やま)に出でて食(しよく)を取(と)り
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
わかってるじゃねえか、顎化(あごばけ)と一騎打ちに行くのだ。……口書(くちがき)も爪印(つめいん)もあるものか、どうせ、拷問(いた)めつけて突き落したのにちげえねえ。……ひとつ、じっくりと調べあげて、ぶっくらけえしてやろう。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「へええ。そうかね。なるほどそういわれるとどこかで見たような気もするが、しかし昔のものはやっぱり丈夫なんだね。ちっとも敗(いた)んでいないじゃないか」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汽笛(ふえ)なんか鳴らしたから不可(いけ)なかったんです。……傾(かし)いだ原因はまだ判然(わか)りませんが、船底の銅版(あか)と、木板(いた)の境い目二尺に五尺ばかりグザグザに遣られただけなんです。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……それにしても、古い路考の色文を、うまい工合に使い廻して有頂天にさせて戸外(そと)へ引出し、鷲を使って殺(いた)めつけようなんてのは、あまりといえば凄い思いつき。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
自分から淫(いた)ずら事の手引きをしようとする、この三郎兵衛の態度に、雪之丞は堪えがたいいまわしさを覚えて、ほとんど吐き気すら感じて来るのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
女「大層巧(よ)く演(いた)しますね、今度の狂言は中々大入で、私が参りましたら一杯で、尤も土曜日でございましたが、ぎっしりでございましたよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
スパゲティを牛酪(バタ)で炒(いた)めている最中で、こちらも火急の場合だったが、石亭先生の弱りかたがあまりひどいので、肉叉(フゥルシェット)を持ったまま先生のほうへ近づいて行った。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
打ちかちがたくあきらめられていた地上の法則が滅亡して、魂は今新しき天の法則の支配にはいろうとしている。試みられ煉(いた)められたる魂は新生のよろこびにおどっている。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それから、膝栗毛は生れたんでげす。次にゃ、木曾道中を書きやすから、版木(いた)になりましたら又御覧なすッて
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お兄さんの精神の疾(いた)みはますますはげしくなるのを、悪魔はほほ笑んで見ていたのです。
恐怖の幻兵団員 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
伏(ふせ)たる程の腫物(しゆもつ)出來て病(いた)むこと甚だしく自由には起居(たちゐ)も成ざればお花は又もや駭(おどろ)きて以前の醫者を呼(よび)て見するに此度は醫師も首(かうべ)を傾け是は何共名付(なづけ)難き腫物(しゆもつ)なり何にもせよ口を明て毒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
捉(とら)うる処法に合(かな)えば、門番は立竦(たちすくみ)になりて痛疼(いた)さに堪(たま)らず、「暴徒が起った。大(た)……大……大変、これ、一大事じゃ、来てくれい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此間廿町ばかりなるも、泥水の溜まるあり、或は道路の破(いた)む処ありて歩行甚だ究するも、漸く二宮家に着するを得たり。然るに尊親氏は不在なり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
豪食、十二日に竟(いた)り、梵士教法に従い誦経(ずきょう)して雌雄猴を婚せしめたと出づるも、王夫妻の相愛または猴にあやかって子を産むようの祈願から出たのであろう。
……魚(さかな)も常ならお前に頼むんやが、今日のこツちやさかい、朝から榮吉が町へいて、鯛五枚に鱧(はも)五本、蒲鉾(いた)と厚燒を十枚づゝ買うて來よつた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
舜瞽瞍を見てその容(かたち)蹙(いた)めるあり、孔子曰く、この時に於てや、天下殆(あや)うかりしかな、岌岌乎たりきと。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
雑誡(ざっかい)三十八章、学箴(がくしん)九首、家人箴(かじんしん)十五首、宗儀(そうぎ)九首等を読めば、希直(きちょく)の学を為(な)すや空言を排し、実践を尊み、体験心証して、而して聖賢の域に躋(いた)らんとするを看取すべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其(その)姉は即(すなわ)ち燕王の妃(ひ)にして、其弟増寿(ぞうじゅ)は京師(けいし)に在りて常に燕の為(ため)に国情を輸(いた)せるも、輝祖独り毅然(きぜん)として正しきに拠(よ)る。端厳の性格、敬虔(けいけん)の行為、良将とのみ云(い)わんや、有道の君子というべきなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
〈王もしその罪なくして死地に就くを隠(いた)まばすなわち牛羊何ぞ択ばん〉といえるにてその意明らけし。
曰く、暮春(ぼしゅん)春服既に成り、冠者(かんじゃ)五、六人、童子(どうじ)六、七人を得て、沂(き)(水の上)に沿(そ)(浴)い舞雩(ぶう)(の下)に風(いた)り詠じて帰らん。夫子喟然(きぜん)として嘆じて曰く、吾は点に与(くみ)せん。三子者出でて曾皙(そうせき)後(おく)る。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
新作嫌いのこの男が、最近「寄席」「圓朝」と二つも私の長篇小説を自由に脚色し、構成して、高座(いた)にかけ、内的にも奏効していることを思えば——。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)