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労
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いた
ふりがな文庫
“
労
(
いた
)” の例文
旧字:
勞
こちらを
労
(
いた
)
わった上に、武芸者は相見たがいというようなわけで、一晩とめて、その上に
草鞋銭
(
わらじせん
)
をくれて立たせてくれるに相違ない。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お咲を
労
(
いた
)
わったりしているのを見ても、浩はほんとうに、もう帰るとか帰らないとかいうことを、問題にもならなくしてしまう予感が
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
御米はこう宗助から
労
(
いた
)
わられた時、何だか自分の身体の悪い事を訴たえるに忍びない心持がした。実際またそれほど苦しくもなかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
嘉兵衛は
労
(
いた
)
わるように云った、「お絹が身を売ったなあおめえのためじゃあねえ、もとはといえばみんなおらの向うみずが祟ったことだ」
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私はいくら美しく智的詩人型の若夫人でも、あんまり自分の幻想に固執して老夫を
労
(
いた
)
わらなさ過ぎる態度に嫌な気がして遠のいてしまった。
噴水物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
古田織部は、つくづくと見入つてゐた眼を、木の枝から果物をもぐ折のやうに、
労
(
いた
)
はりながらそつと茶入からひき離しました。
小壺狩
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私はその
度
(
たび
)
に機関助士と佐川二等兵に見せながら、この調子ならじきにもとの成績にもどれるよ、と
労
(
いた
)
わるのを忘れなかった。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
その肩口を、レヴェズは
労
(
いた
)
わるように抱きかかえて、あたかも秘密の深さを知らぬ者を嘲笑するような眼差を、法水に向けた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
がまがり、
中啓
(
ちゅうけい
)
が、飛んだ。と、吉良は、美濃守に受けとめられて、すうっと、
労
(
いた
)
わるように、抱き下ろされていた。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もう一つには前にもいう通り、師匠の御新造が愛想のいい人で、蔭へまわって優しく
労
(
いた
)
わってくれるので、それを力に我慢しているのもあった。
半七捕物帳:48 ズウフラ怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
他人の争いの仲裁者となったり、病める青年を慰めたり、新聞売りの老婆や、
飯焚
(
めした
)
きの小娘や、犬やをも
労
(
いた
)
わり愛した。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
どうぞわたくしの心の臓をお
労
(
いた
)
わりなすって下さいまし。あなたの御尊信なさる神様と同じように、わたくしを大胆に、偉大に死なせて下さいまし。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
女ははつきりさう答へ、蒲原氏がお礼の意味でガックリ頷くのを見ると、なほも何やら
労
(
いた
)
はりたげな様子であつたが、ふりむいて、軽々と歩きだした。
逃げたい心
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
突いた時が四十一歳初老に及んでの失明はどんなにか不自由だったであろうがそれでいながら
痒
(
かゆ
)
い処へ手が届くように春琴を
労
(
いた
)
わり少しでも不便な思いを
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
長き
海路
(
うみじ
)
も
恙
(
つつが
)
なく無事横浜に着、直ちに汽車にて上京し、
神田
(
かんだ
)
錦町
(
にしきちょう
)
の
寓居
(
ぐうきょ
)
に入りけるに、一年余りも先に来り居たる叔母は大いに喜び、一同を
労
(
いた
)
わり慰めて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
東軍は昨日奮戦した藤堂井伊を
労
(
いた
)
わり退かしめ、岡山口の先陣を前田利常、天王寺口のそれを本多
忠朝
(
ただとも
)
に定む。然るに
悍勇
(
かんゆう
)
なる松平忠直は、自ら先登を企てた。
大阪夏之陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
久子さんなどは大変親切にして下すって、よく気をつけ、
労
(
いた
)
わって下さったり、度々優しい情のこもったお手紙を頂きましたが、いい加減にあしらって居りました。
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
多助が十二歳の時より
労
(
いた
)
わって
遣
(
つか
)
って居りますから、庚申塚の前へ来ると馬は足が自然に前へ進みませんのは、丹治が待伏している事を知り、
後
(
あと
)
の方へ
退
(
さが
)
りまする。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
竜神
(
りゅうじん
)
さんはいとど
優
(
や
)
さしく、いろいろと
母
(
はは
)
を
労
(
いた
)
わってくださいましたので、
母
(
はは
)
もすっかり
安心
(
あんしん
)
して、
丁度
(
ちょうど
)
現世
(
げんせ
)
でするように
私
(
わたくし
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うえ
)
を
懇々
(
こんこん
)
とお
依
(
たの
)
みするのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
私どもは和衷協同の精神をもって、互いに愛しあい、
労
(
いた
)
わりあい、助け合って、すみやかにわが民族の理想である、平和な、文化国家の創造に
邁進
(
まいしん
)
すべきであります。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
たとえば、お前さんたちみたいな流刑者でも、ご門前へ寄れば、きっと施し物をくださるか、一晩泊めて、
労
(
いた
)
わってやるとか、とにかく、たいそうな
侠客大尽
(
きょうかくだいじん
)
さまなのさ
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妻は
頬笑
(
ほほえ
)
みながら「そんなに侘しいのなら、勤めなきゃいいでしょう」と
労
(
いた
)
わるように云った。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
嫋
(
しなや
)
かではあるが
粗
(
あら
)
い手で私の
全身
(
からだじゅう
)
を
擦
(
さす
)
っている。その快い触覚が疲労と苦痛とで麻痺している私の
肉体
(
からだ
)
を
労
(
いた
)
わってくれる。私の意識は次第次第に恢復するように思われた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
八五郎はそれを
労
(
いた
)
わるように、小腰を
屈
(
かが
)
めて、
白々
(
しらじら
)
と夜霧に包まれた娘の顔を
覗
(
のぞ
)
きました。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
然し北国の寒さは私たち五人の暖みでは間に合わない程寒かった。私は一人の病人と
頑是
(
がんぜ
)
ないお前たちとを
労
(
いた
)
わりながら
旅雁
(
りょがん
)
のように南を指して
遁
(
のが
)
れなければならなくなった。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と
労
(
いた
)
わりつつ鍵屋の軒下へ入れた。町奉行が駈付ける。又右衛門が事情を話す。負傷者の手当をする。それぞれ役人警護の下に引取る所へ引取って上役の指図をまつ事になる。
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
一寸した用事をさせるにも、命令するよりも
労
(
いた
)
はりながら遠慮勝に頼むといふ風であつた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
これによって見ると、彼は窃盗を罪するより盗者の心を
労
(
いた
)
わることを重しとするのである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
熊
(
くま
)
さんは、
情
(
なさけ
)
深い男でしたから、道の
傍
(
そば
)
の草一本にも気をつけて、
労
(
いた
)
わるたちでした。
日輪草:日輪草は何故枯れたか
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
門口にかぶさりかかつた
一幹
(
ひともと
)
の松の枝ぶりからでも、それが今日でこそ
徒
(
いたづ
)
らに硬く太く長い針の葉をぎつしりと身に着けて居ながらも、曾ては人の手が、
懇
(
ねんごろ
)
にその枝を
労
(
いた
)
はり葉を揃へ
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
しかし「お家」を大事にするためにはその
拠
(
よ
)
るところの基礎たる国土臣民をも愛護し、撫育するという必要を感じて、そこで当時の政治は頗る人民を
労
(
いた
)
わるという事になったのである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
彼は
恢復
(
くわいふく
)
した自信を
労
(
いた
)
はりながら、細い小路を静に家の方へ曲つて行つた。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今日のいわゆる西部劇には、野蛮な面も、殺伐な面も大いにあるが、開拓精神を失うまいとする意図が働いている点を見逃してはならない。第四は、弱い者を徹底的に
労
(
いた
)
わるという教育である。
ピーター・パン
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
で
労
(
いた
)
わるような調子でこう答えた。
湖水と彼等
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「……あれはきっと素姓卑しからぬ男だ、必ず一芸一能に秀でている人物だ、みんなもっと
労
(
いた
)
わってやらなくてはいけないぞ」
足軽奉公
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
つらい世間の前に立つて、自分をあれ程までに
労
(
いた
)
はり
羽含
(
はぐく
)
んでくれた亡き人の犠牲的な愛を思ふと、須磨子は堪へ難い思ひがしたに相違ない。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
労
(
いた
)
わり、一言に云えば人情に縋って生活する状態では、事実に於て、妻も良人も二人の人として肩を並べた心持は知り難いものではないかと危ぶまれます。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この間何かの雑誌か新聞で
英吉利
(
イギリス
)
のお婆さんたちが愚痴をこぼしている記事を読んだら、自分たちが若い時分には年寄りを大切にして
労
(
いた
)
わってやったのに
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自分を
労
(
いた
)
わってこの屋敷まで送って来て、そのうち相談相手になると言って今日までここに待たしておいたもてなしは、親切であり行届いたものでありましたから
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二人へ向って、こう
労
(
いた
)
わりの言葉をかけると、内蔵助は立ち上って、自身の居間へ入った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう少しは
労
(
いた
)
わりを見せて、辞職の羽目にまで突き落さずともよさそうなものなのに、おめ/\
傍
(
そば
)
で見殺しにするとは、たとえ葛岡の気持として、わたくしと安宅先生へとでは
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は甲板の端に甲板用の椅子を持って来て、欄干に腕をのせてぼんやりしていると、例のお嬢さんをお父さんが
労
(
いた
)
わりながら、二人でそろりそろり、と階段を上って甲板へ出て来た。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
一つには
屡〻
(
しばしば
)
苦しめられたことが、その原因にはなっていたが、さらに重大な原因といえば、親の敵を討たねばならず、それまでは
迂濶
(
うかつ
)
には死なれぬ体と、あまりに自分を
労
(
いた
)
わって
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と袖に
縋
(
すが
)
るのを
振切
(
ふりき
)
って
往
(
ゆ
)
きますから、おいさは
欄干
(
らんかん
)
に縋って重二郎を見送りしまゝ、ワッとばかりに泣き倒れました所へ、お兼が帰ってまいり、
漸々
(
よう/\
)
労
(
いた
)
わり
連立
(
つれだ
)
って
家
(
うち
)
へ帰りました。
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
降
(
ふ
)
るのに御苦労だつた」と
労
(
いた
)
はつて呉れた。其時始めて気が
付
(
つ
)
いて見ると、
父
(
ちゝ
)
の
頬
(
ほゝ
)
が
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にかぐつと
瘠
(
こ
)
けてゐた。元来が
肉
(
にく
)
の多い方だつたので、此変化が代助には余計目立つて見えた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかるに次の場面では彼女は、お染と久松の「底の心」を見破り、母親の心を
労
(
いた
)
わるために己が悲しみに耐え、二人を「殺しとむないばっかりに」尼になるという複雑な心の主に変化している。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
互いに
労
(
いた
)
わりあう乙女心の、なごやかな優しさが、この殺伐な場面に一脈の色彩を添えるかに見えた。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
気の毒な俘虜を並外れて
労
(
いた
)
はるところから、いつとなく
其処
(
そこ
)
にゐる人達と懇意になつて、毎朝顔を見合はすと、仲のいい友達のやうに、につと笑ふ程の
間
(
なか
)
になつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
やさしく
労
(
いた
)
わってくれるほどなお気の毒で、何と云われても自分の
越度
(
おちど
)
であることは、———それも軽からぬ越度であることは、
否
(
いな
)
みようもなく思えるのであった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
逞ましい雄獅子が自分と妻の致命的な傷口を
嘗
(
な
)
め
労
(
いた
)
わりつつ
呻
(
うめ
)
く、絶体絶命の呻きです。私の身体はぶるぶると慄えました。ここまで苦しんだなら、いくら厚い仕切りでも消える筈だ。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“労”の解説
労(ろう)とは律令制の官人が官職に勤務すること及びその勤務期間を指す。労効(ろうこう)ともいう。また、特定の官職における勤務期間を年労(ねんろう)とも称した。
(出典:Wikipedia)
労
常用漢字
小4
部首:⼒
7画
“労”を含む語句
疲労
労働者
労働
徒労
辛労
労苦
博労
塵労
足労
労力
苦労人
心労
功労
勤労
気苦労
苦労
御苦労
気労
慰労
労症
...