いた)” の例文
オリオン号は既に長い前からいたんでいた。方々への航海中に、貝殻の厚い層が喫水部きっすいぶに付着して、速力の半ばを減じていた。
「お前はその帶を見付けるのだ。金襴きんらんの立派な帶が、ひどくいたんでゐる。兩方の端には穴くらゐあいたかも知れない」
と千代子と秋子さんは悉皆すっかり感心してしまった。天下泰平だ。尋常科は半ばお伽噺とぎばなしの世界に住んでいる。斯う考えると、思い当ることがある。千代子は日外いつか僕の万年筆をいじって先端をいためた時
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
またシャツは三つきりなかった、一つは身につけ、一つは戸棚に入れて置き、も一つは洗たく屋にいっていた。いたむにつれてまた新しくこしらえた。
「それを今俺も考えているんだ。木戸まで踏石が七つ、よくついた石苔がいたんでいるのはどうしたわけだ」
「それを今俺も考へてゐるんだ。木戸まで踏石が七つ、よくついた石苔がいたんでゐるのはどうしたわけだ」
そこへ激しい彼岸嵐に襲われて、左舷さげん船嘴せんしと一舷窓とがこわれ、前檣ぜんしょうの索棒がいたんだ。そしてそれらの損所のためにまたツーロン港にはいってきたのである。
フトその扱帶に手を觸れた平次は、この柔かく細く、しやういたんだところもない扱帶で、健康な十八娘を、聲を立てさせずに殺せるものか、それを考へてゐた樣子です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
その艦は、荒れた海のためにひどくいたんでいたが、港にはいって来るとすこぶる偉観であった。
「いえ、彈みでございます、長い間使つた麻繩で、いたんでゐたのでございませう」