いた)” の例文
濶歩かっぽ埋葬地の間をよぎりて、ふと立停たちどまると見えけるが、つかつかと歩をうつして、謙三郎の墓にいたり、足をあげてハタと蹴り、カッパとつばをはきかけたる
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当然気管を狭搾きょうさくし、やや長時間にわたる漸増的な窒息の結果、死にいたらしめたものであると思う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
破三味線やぶれざみせん盲目めしいの琴、南無妙なむみょう太鼓、四ツ竹などを、叩立て、掻鳴かきならして、奇異なる雑音遠くにいたる。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婦人はうしろたたずみて、帯の間より手帳を取出し、鉛筆をもて何やらんまたたきもせず書きしたため、一遍読返して、その紙を一枚引裂き、音低くしてしかも遠きにいたる口笛を吹鳴らせば
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)