破損いた)” の例文
濡縁ぬれえんの外は落葉松からまつの垣だ。風雪の為に、垣も大分破損いたんだ。毎年聞える寂しい蛙の声が復た水車小屋の方からその障子のところへ伝わって来た。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
⦅あれはなかなか立派な銀時計で、真鍮や赤銅あかがねの品とはどだい物が違うわい。すこし破損いたんじゃいるが、なあに、そりゃ自分で直すじゃろうて。
その裾の辺りへ去年の枯れ草を茂らせ、ところどころ壁土を落とした築地ついじ。鋲は錆び、瓦は破損いたみ、久しく開けないために、扉に干割ひわれの見える大門。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、小暗く木の茂った、一構えの社地が現われた。古びた社殿、狐格子、縁も所々破損いたんでいる。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)