舞台いた)” の例文
旧字:舞臺
「どうしてなかなか結構もんだ。いとにも乗れば、ちゃんと舞台いたについている。おめえが、踊りの下地がねえといったのは、ありゃあ嘘だろう」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
黒衣くろごをかぶり、拍子木を打ち、稽古をつけ、書抜きをかき、ここに幾年かの修業を積んだ上でなければ、いわゆる“舞台いたに乗る”劇は書けないものであると決められていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その堺屋さかいやあき木挽町こびきちょうで、おまえのことを重助じゅうすけさんにきおろさせて、舞台いたせようというのだから、まずねがってもないもっけのさいわい。いやのおうのということはなかろうじゃないか
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ビラばかり景気よくはり出してあるんでどうも世間ていが持ち切れない。慾をいわないで、ひとつ明日から舞台いたに立って見るさ。……太夫たゆうの衣裳や支度はあっしの方で工面しておいたから」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神田の伯母からふんだくった一枚看板と、この舞台いたについた出語りとで、勘次は先に立って三十間堀を拾って行った。
この舞台いたに端役ながらも綺麗首を見せていた上方下りの嵐翫之丞という女形おやま、昨夜ねてこやを出たきり今日の出幕になっても楽屋へ姿を見せないので
今までどこにひそんでいたのか、しまの着物に股引ももひ腹掛はらがけ、頭髪あたまも変えて、ちょいと前のめりに麻裏あさうらを突っかけて、歩こうかという、すっかり職人姿の舞台いたに付いているこの喬之助である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)