いた)” の例文
とその家庭かてい苦痛くつう白状はくじやうし、ついにこのしよ主人公しゆじんこうのち殺人さつじん罪人ざいにんなるカ……イ……をともなひてその僑居けうきよかへるにいた一節いつせつきはめて面白おもしろし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ひるがへつて歐米おうべいれば、さすがに母語ぼごくまでもこれを尊重そんてうし、英米えいべいごときはいたるところに母語ぼごりまはしてゐるのである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
およそ雪九月末よりふりはじめて雪中に春をむかへ、正二の月は雪なほふかし。三四の月にいたりて次第にとけ、五月にいたりて雪全くきえ夏道なつみちとなる。
初更しよかういたるや、めるつまなよやかにきて、粉黛ふんたい盛粧せいしやう都雅とがきはめ、女婢こしもとをしてくだん駿馬しゆんめ引出ひきいださせ、くらきて階前かいぜんより飜然ひらりる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分じぶん大学だいがくにいた時分じぶんは、医学いがくもやはり、錬金術れんきんじゅつや、形而上学けいじじょうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもうていたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
第二にその神学の解釈にいたっては私の最疑義を有する所であります。ことにも摂理の解釈に至っては到底とうてい博士は信者とは云われませぬ。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたくし三浦みうらとついだころは五十さいくらいでもあったでしょうが、とう女房にょうぼう先立さきだたれ、独身どくしんはたらいている、いたって忠実ちゅうじつ親爺おやじさんでした。
金時計きんどけいだの金鎖きんぐさりいくつもならべてあるが、これもたゞうつくしいいろ恰好かつかうとして、かれひとみうつだけで、ひたい了簡れうけん誘致いうちするにはいたらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
利根源泉の上部にいたりては白雲皚々がい/\たり、之れ地勢上及気象上のしからしむる所なりと雖ども、利根の深奥しんおくなる亦おもひ見るべし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
したがつてそれ以前いぜん原始人げんしじんだとか、ハイデルベルグじんだとかにいたつては何萬年前なんまんねんまへであるか、にはかに見當けんとうがつかないくらゐです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
あの通り正直で律義りちぎで自分から脳の鈍いのを言立いいたてほかの人より二倍も三倍も勉強するからああいう人が末にいたって大成するよ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ある田舎いなかの山里に、甚兵衛じんべえという馬方うまかたがいました。いたってのんき者で、お金がある間はぶらぶら遊んでいまして、お金がなくなると働きます。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
独逸どいつ名高なだかい作者レツシングとふ人は、いたつて粗忽そそつかしいかたで、其上そのうへ法外ばかに忘れツぽいから、無闇むやみ金子かねなにかゞくなる
横穴よこあななかでも格別かくべつめづらしい構造かうぞうではいが、ゆかみぞとがやゝ形式けいしきおいことなつてくらゐで、これ信仰しんかうするにいたつては、抱腹絶倒はうふくぜつたうせざるをない。
此差このさおよそ二年半餘はんあまりにして一月ばかりなるゆゑ、其時そのときいた閏月しゆんげつき十三ヶ月を一年となし、地球ちきうすゝんもとところ行付ゆきつくまつなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
此頃このごろおい日本地震學界につぽんぢしんがつかい解散かいさんむなきにいたつたが、あらたにわが政府事業せいふじぎようとしておこされた震災豫防調査會しんさいよぼうちようさかいこれかはつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
平地の人のごとく多量に消費してはおられぬが、日本では山中に塩分を含む泉いたって多く、また食物の中にも塩気の不足を補うべきものがある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
龐涓はうけんすでつかへ、惠王けいわう將軍しやうぐんるをて、みづか以爲おもらへく(一五)のう孫臏そんびんおよばずと、すなはひそかに((人ヲシテ))孫臏そんびんさしむ。ひんいたる。
火影ほかげ片頬かたほゝけたつまかほは、見恍みとれるばかりに綺麗きれいである。ほゝもポーツと桜色さくらいろにぼかされて、かみいたつてつやゝかである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「先生、そんな気の弱いことでは、駄目じゃありませんか。敵の手にいたらず、まだ逃げていくところが残っていますぞ」
これからのち室町時代むろまちじだいからときぎて江戸えど時代じだいいたるまで、そんなにすぐれた歌人かじんは、おほくはてまゐりませんでした。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
おつぎはまたおさへた卯平うへい頭部とうぶうたがひのそゝいで、二にんかなしむべき記念かたみにおもひいたつた。おつぎは原因げんいん追求つゐきうしてかうとはしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今日きょうにも、ってがろうとおもっていたのでございます。たびたびおかけをねがって、まことに恐縮きょうしゅくいたりにぞんじます。」と、主人しゅじんはいいました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして其後そのご現在げんざいいたるまで、本統ほんたうのコスモポリニズムはわたし心中しんちうそうそう徹底てつていきたつてゐるのである。
したがつこの獲得くわくとくしたかね本年ほんねん輸入時期ゆにふじきいたつて拂出はらひだして減少げんせうしても、下半期しもはんき輸出超過ゆしゆつてうくわ時期じきまたふたゝこれ取返とりかへすことが出來できれば、非常ひじやう仕合しあはせである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
寝巻もいたって粗末で、取乱し放題に乱しているのは、中年女の覚悟のていではなく、窓の方二間にけんも先へ放り出した短刀とともに、一つ一つが疑問の種です。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
現時げんじひとよりうらやまるゝほど健康けんかうたもれども、壯年さうねんころまでは體質たいしついたつてよわく、頭痛づつうなやまされ、み、しば/\風邪ふうじやをかされ、えずやまひためくるしめり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
ウィリアムだいせい其人そのひと立法りつぱふ羅馬ローマ法皇はふわう御心みこゝろかなひ、たちまちにして首領しゆれう必要ひつえうありし英人えいじんしたがところとなり、ちかくは纂奪さんだつおよ征服せいふくほしひまゝにするにいたりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
れど目科は妻ある身に不似合なる不規則千万せんばんの身持にて或時は朝なお暗き内に家をいずるかと思えば或時は夜通し帰りきたらず又人の皆寝鎮ねしずまりたるのちいたり細君を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
伊太利に遅れること三艇身、千五百メエトルにいたるや、懸隔益々甚けんかくますますはなはだしく、英国と伊太利が二艇身半の差、日本は三艇身遅れて続き、さらにブラジルが後を追う。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
おちつけ、落つけ——とか、こんなときアセってはならぬぞ——とか、そんな文句を「日記」のいたるところに書き散らし、心の底でも必死に叫んでいるのであるが
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
この少年せうねん數學すうがく勿論もちろん其他そのた學力がくりよく全校ぜんかう生徒中せいとちゆうだいりう以下いかであるが、天才てんさいいたつてはまつたならぶものがないので、わづかるゐさうかともはれるもの自分じぶんにん
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
幾分安堵あんどおもいをなし、室内に閑居かんきょするにいたるや、予が意気豪ならざる故といわんか、た人情の免れざる所ならんか、今まではいとまなくて絶えて心に浮ばざりし事も
たといこれを拒絶きょぜつするも真実しんじつ国と国との開戦かいせんいたらざるは請合うけあいなりとてしきりに拒絶論きょぜつろんとなえたれども、幕府の当局者は彼の権幕けんまく恐怖きょうふしてただち償金しょうきんはらわたしたり。
東京とうきようでは一月いちがつ中旬ちゆうじゆんつぼみひらはじめ、二月にがついたつて滿開まんかいし、三月さんがつ上旬じようじゆんまではなひらきつゞけてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いろ/\のあつ待遇もてなしけたのちよるの八ごろになると、當家たうけ番頭ばんとう手代てだいをはじめ下婢かひ下僕げぼくいたるまで、一同いちどうあつまつて送別そうべつもようしをするさうで、わたくしまねかれてそのせきつらなつた。
うしなはれゆく感覚かんかく懸命けんめいたゝかひながら、いたるまで、まもとほしたたうをとぎれ/\にんだ
生来うまれつき頭脳あたまはそんなに悪いとは思いませんけれど、いたって挙動が鈍く手先が不器用ですから、小学校時代には「のろま」中学校時代には「愚図ぐず」という月並な綺名あだなを貰いました。
痴人の復讐 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
しゆり、しゆれに宿やどときは我はつとめずして光をはなつなり、而してわれより出るしゆひかりわれしんぜずしてしゆしんずるにいたる、しんずる基督教的きりすとけうてき伝道でんだうなる者なり。
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
吉野川ながるるなり両岸は大なる岩なり岩の高さ五間ばかり屏風びょうぶを立たるごとし両岸の間川の広さ三間ばかりせばき所に橋あり大河ここにいたってせばきゆえ河水はなはだ深しその景絶妙なり
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ろうしよくのぞむは人情にんじやうつねなるかも、ひやくいたればせんをとねがせんにいたればまたまんをと諸願しよぐわんやすときなければこゝろつねやすからず、つら/\おもへば無一物むいちぶつほど氣樂きらくなるはあらざるべし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
航海中より彼地かのちいたりて滞在たいざい僅々きんきん数箇月なるも、所見しょけん所聞しょぶん一としてあらたならざるはなし。
見せにつかはされしに役人は家主いへぬし徳兵衞を案内に庄兵衞が家を調べんといたり見しに此節女房は傷寒しやうかんにて打臥とこに着しまゝ立居も出來できぬ體なり斯る所へ家主の案内にて役人やくにん入り來り家搜やさがしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
富士見坂ふじみざかの上、ちょうど花見寺はなみでらの裏山にあたるので、いたって見晴しのいい場所。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その度毎に明あん悲喜ひきこもごもいたる二人のかほ附たるやおさつしに任せる次第だ。
あとけば、なんでも太平洋汽船会社たいへいやうきせんぐわいしや税関ぜいくわんだか桟橋会社さんばしぐわいしやだかとのあひだに、前々まへ/\からひどい確執かくしつがあつて、これためふねくのもおそくなれば、灯光あかりひとつない桟橋さんばしなかひとたせるにもいたつたのだといふ。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
梵天宮ぼんてんきういたたまひし富士ふじみね
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
これは恐縮きようしゆくいたりです
港八九は成就じょうじゅいたり候得共そうらえども前度せんどことほか入口六ヶ敷候むずかしくそうろうに付増夫ましぶ入而いれて相支候得共あいささえそうらえども至而いたって難題至極ともうし此上は武士之道之心得にも御座候得そうらえば神明へ捧命ほうめい申処もうすところ誓言せいげんすなわち御見分のとおり本意ほんいとげ候事そうろうこと一日千秋の大悦たいえつ拙者せっしゃ本懐ほんかいいたり死後御推察くださるべくそうろう 不具ふぐ
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
可笑をかしき可憐あはれなる事可怖おそろしき事種々しゆ/″\さま/″\ふでつくしがたし。やう/\東雲しのゝめころいたりて、水もおちたりとて諸人しよにん安堵あんどのおもひをなしぬ。