いた)” の例文
然れども天の時いまだいたらざりしかば、南の山に蝉のごとくもぬけ、人とことと共にりて、東の國に虎のごとく歩みたまひき。
今世間に行われて居る批評の径路を考えて見ると、申し訣ないが、私のやった行きなり次第の分解批評が、大分煩いして居るのに思いいたって、冷汗を覚える。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
余イヘラク、コノ語非ナリト。何ゾヤ。則チ少陵しょうりょう虁州きしゅう以後、山谷さんこくハ随州以後更ニソノ妙ニいたル。而シテ放翁ほうおう七十余ノ作イヨ/\絶妙ト称セラル。あに頽唐ニ属センヤ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
米使渡来以還このかた政務の多端なることはいにしへより無き所である。其上乙卯の地震があり、丙辰の洪水があつた。此の如く内憂外患並びいたつた日に、公は局に当つて思を労した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
朕薄徳を以てかたじけな重任ぢゆうにんけたり。未だ政化をひろめず寤寐ごみにも多くづ。いにしへの明主は皆先業をくしてくにやすらかに人楽しみわざわひ除かれさきはひ至れり。何の政化を修め能く此の道をいたさむ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
万々やむをえざるの場合においてただ一国の正義と体面とを平和の談判にて調ととのうべからざるの場合において、すなわち仁いたり義尽くるの場合において初めてこれをなさんと欲するものなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
流言蜚語しきりにいたるで、人心恟々、何が何だか少しもわからぬ。
震災日誌 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
そうしてとどのつまり、短歌の宿命に思いいたった。私は自分のあきらめを以て、人にも強いるのではない。石川啄木の改革も叙事の側に進んだのは、ことごとく失敗しているのである。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ここに八十神ぎ追ひいたりて、矢刺して乞ふ時に、木のまたよりき逃れてにき。
称ハ次郎右衛門、杉井ハ其ノ号、姓ハ大沼、襲世シテ幕府ニ禄仕シ、嘉永元年致仕ス、禅ヲ真浄和尚ニ問ヒ、削髪ノ法名ハ無夢ト曰フ、旁ラ俳歌ヲ好ミ、頗ル其ノ妙ニいたル、芭蕉翁ノ統ヲ継ギ
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)