日本婦道記:おもかげ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
				
			
		分って下さるでしょう? 劬わられ、知らされない。それは有難く、うれしい。でもくちおしいというようなことがないとどうして云えましょう。
			
				
					獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
				
			
		父は始終私の身辺を気遣い、わが身のことは忘れたかのように劬わってくれました。
			
				
					幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち (新字新仮名) / 高村光雲(著)
				
			
		内蔵助は、弥兵衛老人をふり向いてこう劬わった。老人は例の気性で、なあにと首を振ってあるきつづけていたが、若い人たちとの足幅が一致しないので、お船蔵あたりから町駕へ乗った。
			
		私はその口固い秘色もそうあろうし、そうなければならぬことを思い、酒行の別れぎわにじゃ行って来たまえ、たまに僕の話でも出るようだったら宜しく言ってくれと、言づけて劬わりたかったのだ。
			
				
					わが愛する詩人の伝記(三):――萩原朔太郎―― (新字新仮名) / 室生犀星(著)
				
			
		無味無色でありすぎたその失はれた青春をまた一生を劬はるためにも、養子夫婦をいぢめぬくことに偏執せずにゐられなかつたのであらう。
			
				
					吹雪物語:――夢と知性―― (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
				
			
		
				
					我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
				
			
		然し、子供の時から常に与えてであった母、より強きものであった母を、或る時、弱きもの、全然自分の劬わるべきものとして発見するのは、なほ子にとって異様な感動であった。
			
		
				
					吹雪物語:――夢と知性―― (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
				
			
		で——武蔵が優しく劬われば劬わるほど
			
				
					宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
				
			
		公平に客観すれば、しょせん鼻っ摘みの、しかもまったく無縁な人間にすぎない。それをかれらはこんなにも劬わって呉れた。こんなにも無条件で心配し、厚意を寄せて呉れた。
			
		弱い心をむしろ劬はる思ひが激しい
			
				
					吹雪物語:――夢と知性―― (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)