わろ)” の例文
旧字:
けれど、下々の嗜める鱧の皮とあっては聞こえいとわろし、この日よりこの肴を『待宵の鱠』と命名せよ。と仰せられて、ご機嫌なみなみならずうるわしかったと伝う。
にらみ鯛 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
こんな溝板どぶいたのがたつく様な店先へそれこそ人がらがわろくて横づけにもされないではないか、お前方ももう少しお行義を直してお給仕に出られるやう心がけておくれとずばずばといふに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ごく簡単の理窟を含む歌にて善しと思ふ者あり、些の理窟を含まざる歌にてわろしと思ふ者あるは事実なればなり。もし理窟といふ語を広き意味に解すれば解するほどこの除外例は多くなる道理なり。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あまり職掌を重んじて、苛酷かこくだ、思いりがなさすぎると、評判のわろいのに頓着とんじゃくなく、すべ一本でも見免みのがさない、アノ邪慳じゃけん非道なところが、ばかにおれは気に入ってる。まず八円の価値ねうちはあるな。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
 句の表はわろき酒を飲みて胸わるくなりたりといふまでなり。されどその裏面にはさらでも人を失ひたる悲みに胸つかえたる頃を、焼け酒飲み過ぎてなほ胸苦しさよとかこちたるさまをも見せたり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)