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往来
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わうらい
ふりがな文庫
“
往来
(
わうらい
)” の例文
旧字:
往來
おれは時々こんな空想を浮べながら、ぼんやり
往来
(
わうらい
)
の
人音
(
ひとおと
)
を聞いてゐる。が、いつまでたつても、おれの所へは訪問に来る客がない。
窓
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
水を
渉
(
わた
)
る
状
(
すがた
)
に
似
(
に
)
たるゆゑにや、又
深田
(
ふかた
)
を
行
(
ゆく
)
すがたあり。
初春
(
しよしゆん
)
にいたれば雪
悉
(
こと/″\
)
く
凍
(
こほ
)
りて
雪途
(
ゆきみち
)
は石を
布
(
しき
)
たるごとくなれば
往来
(
わうらい
)
冬よりは
易
(
やす
)
し。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
さう
怒
(
おこ
)
つてはこまる
喧嘩
(
けんくわ
)
しながら
歩行
(
あるく
)
と
往来
(
わうらい
)
の
人
(
ひと
)
が
笑
(
わら
)
ふぢやアないか。だつてあなたが
彼様
(
あん
)
なこと
許
(
ばつ
)
かしおつしやるんだもの。
闇桜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
もう
暫
(
しばら
)
く
炬燵
(
こたつ
)
にあたつてゐたいと思ふのを、
無暗
(
むやみ
)
と時計ばかり気にする母にせきたてられて
不平
(
ふへい
)
だら/\、
河風
(
かはかぜ
)
の寒い
往来
(
わうらい
)
へ出るのである。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
枝折戸
(
しをりど
)
閉
(
と
)
ぢて、
椽
(
えん
)
に
踞
(
きよ
)
す
程
(
ほど
)
に、十時も過ぎて、
往来
(
わうらい
)
全
(
まつた
)
く絶へ、月は頭上に
来
(
きた
)
りぬ。一
庭
(
てい
)
の
月影
(
つきかげ
)
夢
(
ゆめ
)
よりも
美
(
び
)
なり。
良夜
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
私は一瞬はげしい憤怒を感じたが、今度は直ぐ心が元に帰つた。そして急いで著物を著、戸を開けて
往来
(
わうらい
)
に出た。街上には人の往来が未だ絶えてゐなかつた。
南京虫日記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
先
(
ま
)
づ
聞
(
き
)
かつしやい、
彼
(
か
)
の
孤家
(
ひとつや
)
の
婦人
(
をんな
)
といふは、
旧
(
もと
)
な、これも
私
(
わし
)
には
何
(
なに
)
かの
縁
(
えん
)
があつた、あの
恐
(
おそろし
)
い
魔処
(
ましよ
)
へ
入
(
はい
)
らうといふ
岐道
(
そばみち
)
の
水
(
みづ
)
が
溢
(
あふ
)
れた
往来
(
わうらい
)
で、
百姓
(
ひやくしやう
)
が
教
(
をし
)
へて
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
十分な事を書く
訳
(
わけ
)
には行かんのでありますから、
其
(
そ
)
の
当時
(
たうじ
)
往来
(
わうらい
)
して
居
(
を
)
つた
人達
(
ひとたち
)
に
問合
(
とひあは
)
せて、
各方面
(
かくはうめん
)
から事実を
挙
(
あ
)
げなければ、
沿革
(
えんかく
)
と
云
(
い
)
ふべき者を書く事は
出来
(
でき
)
ません
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
アヽ
予
(
よ
)
は
華族
(
くわぞく
)
の
家
(
いへ
)
に
生
(
うま
)
れたが、
如何
(
いか
)
に
太平
(
たいへい
)
の
御代
(
みよ
)
とは
申
(
まう
)
せども、手を
袖
(
そで
)
にして遊んで
居
(
を
)
つては
済
(
す
)
まぬ、え
我
(
わが
)
先祖
(
せんぞ
)
は
千軍萬馬
(
せんぐんばんば
)
の
中
(
なか
)
を
往来
(
わうらい
)
いたし、
君
(
きみ
)
の
御馬前
(
ごばぜん
)
にて
血烟
(
ちけむり
)
を
揚
(
あ
)
げ
華族のお医者
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人
(
ふたり
)
は
片足
(
かたあし
)
づゝ
揚
(
あ
)
げまして、
坂
(
さか
)
になつた
村
(
むら
)
の
往来
(
わうらい
)
を『ちんぐら、はんぐら』とよく
遊
(
あそ
)
びました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
悠然
(
いうぜん
)
と
車上
(
しやじよう
)
に
搆
(
かま
)
へ
込
(
こ
)
んで
四方
(
しはう
)
を
睥睨
(
へいげい
)
しつゝ
駆
(
か
)
けさせる時は
往来
(
わうらい
)
の
奴
(
やつ
)
が
邪魔
(
じやま
)
でならない右へ
避
(
よ
)
け左へ
避
(
さ
)
け、ひよろひよろもので
往来
(
わうらい
)
を
叱咜
(
しつた
)
されつゝ歩く時は
車上
(
しやじよう
)
の奴
が
(
やつ
)
が
癇癪
(
かんしやく
)
でならない。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
夫
(
それ
)
から
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
へかけて、カリフォルニヤ
街
(
がい
)
の
坂道
(
さかみち
)
を、
断間
(
たえま
)
なく
鋼索鉄道
(
ケーブルカー
)
の
往来
(
わうらい
)
するのが
見
(
み
)
える。
地震
(
ぢしん
)
の
時
(
とき
)
に
焼
(
や
)
けたのが
彼処
(
あすこ
)
、
近頃
(
ちかごろ
)
建
(
た
)
てかけた
市庁
(
しちやう
)
は
彼
(
あれ
)
と、
甲板
(
かんぱん
)
の
上
(
うへ
)
の
評定
(
ひやうぢやう
)
とり/″\
頗
(
すこぶ
)
る
喧
(
やかま
)
しい。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
その代り
人気
(
ひとげ
)
のない薄明りの
往来
(
わうらい
)
を眺めながら、いつかはおれの戸口へ立つかも知れない遠来の客を待つてゐる。前のやうに寂しく。
窓
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
然
(
しか
)
し
間
(
ま
)
もなくこの
陰鬱
(
いんうつ
)
な
往来
(
わうらい
)
は
迂曲
(
うね
)
りながらに
少
(
すこ
)
しく
爪先上
(
つまさきあが
)
りになつて
行
(
ゆ
)
くかと思ふと、
片側
(
かたがは
)
に赤く
塗
(
ぬ
)
つた
妙見寺
(
めうけんじ
)
の
塀
(
へい
)
と
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
寄
(
よつ
)
て
三升
(
みます
)
の
目印
(
めじるし
)
、
門前
(
もんぜん
)
に
市
(
いち
)
を
為
(
な
)
すにぞ、のど
筒
(
づゝ
)
の
往来
(
わうらい
)
かまびすしく、笑ふ
声
(
こゑ
)
富士
(
ふじ
)
筑波
(
つくば
)
にひゞく。
落語の濫觴
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
はい、これは五十
年
(
ねん
)
ばかり
前
(
まへ
)
までは
人
(
ひと
)
が
歩行
(
ある
)
いた
旧道
(
きうだう
)
でがす。
矢張
(
やツぱり
)
信州
(
しんしう
)
へ
出
(
で
)
まする、
前
(
さき
)
は一つで七
里
(
り
)
ばかり
総体
(
そうたい
)
近
(
ちか
)
うござりますが、いや
今時
(
いまどき
)
往来
(
わうらい
)
の
出来
(
でき
)
るのぢやあござりませぬ。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
初編
(
しよへん
)
にもいへるが如く、○ホウラは冬にあり、
雪頽
(
なだれ
)
は春にあり。他国の人越後に来りて
山下
(
さんか
)
を
往来
(
わうらい
)
せばホウラなだれを用心すべし。他国の人これに死したる
石塔
(
せきたふ
)
今も所々にあり、おそるべし/\。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
其
(
これ
)
に
就
(
つい
)
て
不便
(
ふべん
)
な事は、
其昔
(
そのむかし
)
朝夕
(
あさいふ
)
に
往来
(
わうらい
)
して文章を見せ合つた仲間の大半は、
始
(
はじめ
)
から文章を
以
(
もつ
)
て身を
立
(
たて
)
る
志
(
こゝろざし
)
の人でなかつたから、
今日
(
こんにち
)
では
実業家
(
じつげふか
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
を
)
るのも有れば
工学家
(
こうがくか
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
を
)
るのも有る
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何しろその頃洛陽といへば、天下に並ぶもののない、繁昌を極めた都ですから、
往来
(
わうらい
)
にはまだしつきりなく、人や車が通つてゐました。
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
往来
(
わうらい
)
の片側に長くつゞいた
土塀
(
どべい
)
からこんもりと枝を
伸
(
のば
)
した繁りの
蔭
(
かげ
)
がいかにも
凉
(
すゞ
)
しさうに思はれた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
六十
余州
(
よしう
)
往来
(
わうらい
)
する
魔物
(
まもの
)
の
風流
(
ふうりう
)
思
(
おも
)
ふべく、はた
是
(
これ
)
あるがために、
闇川橋
(
やみがはばし
)
のあたり、
山
(
やま
)
聳
(
そび
)
え、
花
(
はな
)
深
(
ふか
)
く、
路
(
みち
)
幽
(
ゆう
)
に、
水
(
みづ
)
疾
(
はや
)
き
風情
(
ふぜい
)
見
(
み
)
るが
如
(
ごと
)
く、
且
(
か
)
つ
能楽
(
のうがく
)
に
於
(
お
)
ける、
前
(
まへ
)
シテと
云
(
い
)
ふ
段取
(
だんどり
)
にも
成
(
な
)
る。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
初編
(
しよへん
)
にもいへるが如く、○ホウラは冬にあり、
雪頽
(
なだれ
)
は春にあり。他国の人越後に来りて
山下
(
さんか
)
を
往来
(
わうらい
)
せばホウラなだれを用心すべし。他国の人これに死したる
石塔
(
せきたふ
)
今も所々にあり、おそるべし/\。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
凩
(
こがらし
)
の吹く町の
角
(
かど
)
には、
青銅
(
からかね
)
のお前に
跨
(
またが
)
つた、やはり
青銅
(
からかね
)
の宮殿下が、寒むさうな
往来
(
わうらい
)
の
老若男女
(
らうにやくなんによ
)
を、揚々と見
下
(
おろ
)
して
御出
(
おい
)
でになる。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
座頭
(
ざとう
)
むくと
起直
(
おきなほ
)
つて、
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て、
道端
(
みちばた
)
にあつて
往来
(
わうらい
)
の
障
(
さまたげ
)
なりと、二三十
人
(
にん
)
ばかりにても
動
(
うご
)
かしがたき
大石
(
だいせき
)
の
角
(
かど
)
に
手
(
て
)
をかけ、
曳
(
えい
)
やつといふて
引起
(
ひきおこ
)
し、
目
(
め
)
より
高
(
たか
)
くさし
上
(
あ
)
げ、
谷底
(
たにそこ
)
へ
投落
(
なげおと
)
す。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
父は
往来
(
わうらい
)
の左右を見ながら、「昔はここいらは原ばかりだつた」とか「
何
(
なん
)
とか
様
(
さま
)
の裏の田には鶴が下りたものだ」とか話してゐた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
以前
(
いぜん
)
激流
(
げきりう
)
に
逆
(
さから
)
つて、
大石
(
だいせき
)
を
転
(
ころ
)
ばして
人助
(
ひとだす
)
けのためにしたと
言
(
い
)
ふのも、
第
(
だい
)
一、かちわたりをすべき
川
(
かは
)
でないから
石
(
いし
)
があるのが、
然
(
さ
)
まで
諸人
(
しよにん
)
の
難儀
(
なんぎ
)
とも
思
(
おも
)
はれぬ。
往来
(
わうらい
)
に
穴
(
あな
)
があるのとは
訳
(
わけ
)
が
違
(
ちが
)
ふ。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
おれの家の二階の窓際には、古ぼけた
肱掛椅子
(
ひぢかけいす
)
が置いてある。おれは毎日その
肱掛椅子
(
ひぢかけいす
)
へ腰を
下
(
おろ
)
して、ぼんやり
往来
(
わうらい
)
の
人音
(
ひとおと
)
を聞いてゐる。
窓
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
経師屋閉口して、
仰向
(
あふむ
)
けに
往来
(
わうらい
)
へころげたら、河童一匹背中を離れて、川へどぶんと飛びこみし由、幼時母より聞きし事あり。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕は泥のはねかかつたタクシイの窓越しに
往来
(
わうらい
)
を見ながら、金銭を武器にする
修羅界
(
しゆらかい
)
の空気を憂鬱に感じるばかりだつた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕は教師をしてゐた頃、ネクタイをするのを忘れたまま、澄まして
往来
(
わうらい
)
を歩いてゐた。それを幸ひにも見つけてくれたのは当年の
菅忠雄
(
すがただを
)
君である。
続澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
父「何しろ変りも変つたからね。そら、昔は夕がたになると、みんな門を
細目
(
ほそめ
)
にあけて
往来
(
わうらい
)
を見てゐたもんだらう?」
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
運河には石の
眼鏡橋
(
めがねばし
)
。橋には
往来
(
わうらい
)
の
麦稈帽子
(
むぎわらばうし
)
。——忽ち
泳
(
およ
)
いで来る
家鴨
(
あひる
)
の一むれ。
白白
(
しろじろ
)
と日に照つた家鴨の一むれ。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜寒
(
よさむ
)
の細い
往来
(
わうらい
)
を
爪先上
(
つまさきあが
)
りに
上
(
あが
)
つて
行
(
ゆ
)
くと、古ぼけた板屋根の門の前へ出る。門には電灯がともつてゐるが、柱に掲げた標札の如きは、
殆
(
ほとん
)
ど
有無
(
うむ
)
さへも判然しない。
漱石山房の秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜寒
(
よさむ
)
の細い
往来
(
わうらい
)
を
爪先上
(
つまさきあが
)
りに
上
(
あが
)
つて
行
(
ゆ
)
くと、古ぼけた板屋根の門の前へ出る。門には電燈がともつてゐるが、柱に
掲
(
かか
)
げた
標札
(
へうさつ
)
の如きは、
殆
(
ほとん
)
ど
有無
(
うむ
)
さへも判然しない。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大正十二年の冬(?)、僕はどこからかタクシイに乗り、
本郷
(
ほんがう
)
通りを一高の横から
藍染橋
(
あゐそめばし
)
へ
下
(
くだ
)
らうとしてゐた。あの通りは甚だ街燈の少い、いつも
真暗
(
まつくら
)
な
往来
(
わうらい
)
である。
凶
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
遠藤は妙子の手紙を見てから、一時は
往来
(
わうらい
)
に立つたなり、夜明けを待たうかとも思ひました。が、お嬢さんの身の上を思ふと、どうしてもぢつとしてはゐられません。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしその
後
(
ご
)
は吉江氏を始め、西条君や森口君とはずつと
御無沙汰
(
ごぶさた
)
をつづけてゐる。唯鎌倉の
大町
(
おほまち
)
にゐた頃、日夏君も
長谷
(
はせ
)
に
居
(
きよ
)
を移してゐたから、君とは時々
往来
(
わうらい
)
した。
「仮面」の人々
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唯
鴛鴦
(
をしどり
)
は
鷺
(
さぎ
)
よりも幾分か器量は悪いかも知れない。僕はそれぎりこの二人を忘れ、ぶらぶら
往来
(
わうらい
)
を歩いて行つた。往来は前にも云つた通り、夏の日の照りつけた銀座である。
鷺と鴛鴦
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
学生時代の僕は第三次並びに第四次「新思潮」の
同人
(
どうじん
)
と最も親密に
往来
(
わうらい
)
してゐた。元来作家志望でもなかつた僕のとうとう作家になつてしまつたのは全然彼等の悪影響である。
「仮面」の人々
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
両国
(
りやうごく
)
より
人形町
(
にんぎやうちやう
)
へ
出
(
い
)
づる
間
(
あひだ
)
にいつか孫娘と離れ離れになる。心配なれども探してゐる
暇
(
ひま
)
なし。
往来
(
わうらい
)
の人波。荷物の山。カナリヤの籠を持ちし女を見る。
待合
(
まちあひ
)
の
女将
(
おかみ
)
かと思はるる服装。
鸚鵡:――大震覚え書の一つ――
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何かものを考へるのに
善
(
よ
)
いのはカツフエの一番隅の
卓子
(
テエブル
)
、それから孤独を感じるのに
善
(
よ
)
いのは人通りの多い
往来
(
わうらい
)
のまん中、最後に静かさを味ふのに善いのは開幕中の劇場の
廊下
(
らうか
)
、……
都会で
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
どこへつけるつて、
宿
(
やど
)
へつけるのにきまつてゐるから、宿だよ、宿だよと
桐油
(
とうゆ
)
の
後
(
うしろ
)
から、二度ばかり声をかけた。車夫はその
御宿
(
おやど
)
がわかりませんと云つて、
往来
(
わうらい
)
のまん中に立ち止まつた儘、動かない。
京都日記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕は
往来
(
わうらい
)
を歩きながら、
鮫
(
さめ
)
の卵を食ひたいと思ひ出した。
春の夜は
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
五 春の日のさした
往来
(
わうらい
)
をぶらぶら一人歩いてゐる
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
往
常用漢字
小5
部首:⼻
8画
来
常用漢字
小2
部首:⽊
7画
“往来”で始まる語句
往来中
往来際
往来止
往来側
往来傍
往来状
往来繁
往来餽遺