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往来
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ゆきき
ふりがな文庫
“
往来
(
ゆきき
)” の例文
旧字:
往來
迫った岡はその辺で
谷間
(
たにあい
)
のような地勢を成して、更に
勾配
(
こうばい
)
の急な傾斜の方へと続いて行っている。丁度他に
往来
(
ゆきき
)
の人も見えなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いろいろの異様なる
衣
(
ころも
)
を着て、白くまた黒き
百眼
(
ひゃくまなこ
)
掛けたる人、群をなして
往来
(
ゆきき
)
し、ここかしこなる窓には
毛氈
(
もうせん
)
垂れて、物見としたり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「昔は阿波のお国へも、
商人衆
(
あきんどしゅう
)
や
遍路
(
へんろ
)
の者が、自由に
往来
(
ゆきき
)
したそうでございますが、いつからそんな不便なことになったのでしょう」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人の
往来
(
ゆきき
)
は少く、ただ自動車の激しく走り過ぎる広い通りに添うて、どこまでも歩きながら、前川の沈黙は、無気味なくらい続いた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
両家の
往来
(
ゆきき
)
は杜絶されてゐたが、どちらの子がどちらへ行つても、毒を食べさゝれはしないかと、陰口を利いてゐた者もあつたさうだ。
幼少の思ひ出
(新字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
ほの暗いうちに出て
昏
(
く
)
れてから帰る。
往来
(
ゆきき
)
とも黒谷の
谿流
(
けいりゅう
)
に沿った
杣道
(
そまみち
)
をとるので、まだ途中で人にであったこともないと云った。
泥棒と若殿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
或
(
あるい
)
は散歩の疲れた足を休めたり、または単に
往来
(
ゆきき
)
の人の混雑を眺める為めには、新橋停車場内の待合所を選ぶがよいと思っていた。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
生きてさえおいでになればこんなふうに使いが常に
往来
(
ゆきき
)
することによって自分らは慰められたであろう、どんなに心細い日を送っても
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
筒井はいつもこの二つの問題のあいだを
殆
(
ほとん
)
ど一年間
往来
(
ゆきき
)
していて、いつも解決のつきようがなく深くはまってゆくばかりであった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
名ある山々をも眼の前脚の下に見るほどの山に在りて、夏の日の夕など、風少しある時、谿に望みて
遠近
(
をちこち
)
の雲の
往来
(
ゆきき
)
を観る、いと興あり。
雲のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
往来
(
ゆきき
)
に
馴
(
な
)
れて、
幾度
(
いくたび
)
も蔦屋の客となって、心得顔をしたものは、お米さんの事を
渾名
(
あだな
)
して、むつの花、むつの花、と言いました。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それから、
繁
(
はげし
)
い
往来
(
ゆきき
)
が始まって、そうしているうちにいつしか二人は、互いに相手の理智と聰明さに
惹
(
ひ
)
かれてしまったのである。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
二階の雨戸がすっかり閉っている上に、外の
往来
(
ゆきき
)
にも薄暗い門燈の外には何の光もないので、電燈が消えると部屋の中は真の
暗
(
やみ
)
であった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
甲胄
(
かっちゅう
)
の擦れ合う音をたてて、宮様ご警護の竹原家の家来が、館の庭を
往来
(
ゆきき
)
している姿が、
簾越
(
すだれご
)
しに見えるのへ、隆貞は視線を投げていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其の頃、お役目向の方々の外に、伊豆守様はじめ高位の方々も頻りと御奉行様と
往来
(
ゆきき
)
をなされて居られましたのでございます。
殺された天一坊
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
おとら夫婦は、金ができるにつれて、それ等の人達との間に段々隔てができて、
往来
(
ゆきき
)
も絶えがちになっていた。
生家
(
さと
)
とも
矢張
(
やっぱり
)
そうであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
小学校中学校を通しての級友だったし、東京へ出てからも始終
往来
(
ゆきき
)
をしていた。尚お悌四郎君は正晴君に全く頭の上らないことが一つある。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
或日
箕輪
(
みのわ
)
の内儀は思も懸けず
訪来
(
とひきた
)
りぬ。その娘のお俊と宮とは学校
朋輩
(
ほうばい
)
にて常に
往来
(
ゆきき
)
したりけれども、
未
(
いま
)
だ
家
(
うち
)
と家との交際はあらざるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
まして岸を行く
往来
(
ゆきき
)
の人々は、丸頭巾をかぶつたのも、革足袋をはいたのも、皆
凩
(
こがらし
)
の吹く世の中を忘れたやうに、うつそりとして歩いて行く。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
賑
(
にぎ
)
やかに
往来
(
ゆきき
)
していた病舎を一人二人と去って行くにつれて、今までは陽気でさえあった歌声も、何故か妙にいじけた寂しいものになって来て
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
往来
(
ゆきき
)
の人や車が
幻影
(
まぼろし
)
のように現われては
幻影
(
まぼろし
)
のように霧のうちに消えてゆく。自分はこんな晩に
大路
(
おおじ
)
を歩くことが好きで。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
尊は門人達に、「熊山、吉野山、
伯耆
(
ほうき
)
の
大山
(
だいせん
)
などには
仙境
(
せんきょう
)
があって、吉野山の神仙と、熊山の神仙とは常に
往来
(
ゆきき
)
している」
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうした、おなじ国の、おなじ年頃の、フランスの人になっている、おなじ京都の
女性
(
ひと
)
にさえお雪は
往来
(
ゆきき
)
がなかったのだ。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
兎角
(
とかく
)
男は不愉快らしく、人家の壁に沿うて歩いていて、面白げに
往来
(
ゆきき
)
する
人達
(
ひとたち
)
に触れないようにしているので、
猶更
(
なおさら
)
押し隔てられ
易
(
やす
)
いのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
お高は
往来
(
ゆきき
)
の人のなきを見て、力ちやんお前の事だから何があつたからとて気にしてもゐまいけれど、私は身につまされて
源
(
げん
)
さんの事が思はれる
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
往来
(
ゆきき
)
したものはこの附近の山容水色とここの御殿でおすごしになった花やかな
御遊
(
ぎょゆう
)
のかずかずではなかったであろうか。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お針友達で
懇意
(
こんい
)
になって、互いに
往来
(
ゆきき
)
までしているうち、お春が、お雪の許嫁、酒屋の倅の長吉に心を寄せるようになったのが間違いの
因
(
もと
)
でした。
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
むしろ寂しい位おおどかに
往来
(
ゆきき
)
する船のすがたや、いそがしく波を蹴立てゝ行く蒸汽のさまや、まん/\と岸を浸してながれる青い水のひかりや
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
相模や紀州の
突端
(
とつぱな
)
だけに、
往来
(
ゆきき
)
が不自由で、さう/\は出掛けられないが、
然
(
しか
)
し雪舟の名幅だつて、
何時
(
いつ
)
も掛け通しにして置く訳のものでは無い。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今夜は樹の蔭か岩の下で野宿をしてもかまわぬから行けるところまで行こうと決心して、全く人の
往来
(
ゆきき
)
のない細路をずんずん歩きつづけたのである。
狂女と犬
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
相川へ参るのはそんなに
厭
(
いや
)
か、相川はつい鼻の先の水道端だから毎日でも
往来
(
ゆきき
)
の出来る所、何も
気遣
(
きづか
)
う事はない、手前は気強いようでもよく泣くなア
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
茶店といつても
型
(
かた
)
ばかりのもので、大きい
榎
(
えのき
)
の
下
(
した
)
で
差掛
(
さしか
)
け同様の店をこしらへて、
往来
(
ゆきき
)
の旅人を休ませてゐた。店には秋らしい柿や栗がならべてあつた。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
寧ろ私はその大根船の
往来
(
ゆきき
)
を殺風景なりとした江戸末年の俗謡〽時世時節とあきらめしやんせ屋形船さへ大根積む
大正東京錦絵
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
もちろん、人の
往来
(
ゆきき
)
とてもないこの山の中ですから、その時はスグにそんなことがわかったわけではありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
兄は人の手前
極
(
きわ
)
めて自尊心の強い男であった。けれども、子供のうちから兄といっしょに育った自分には、彼の脳天を動きつつある雲の
往来
(
ゆきき
)
がよく解った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
研究室に
閉籠
(
とじこも
)
っていて世間とはまったく
往来
(
ゆきき
)
をしなかったばかりか、博士号をどうしても固辞して受けなかった、ということは聞いていたが、それにしても
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
大都会に一歩あしを踏み入れると、彼等はその広いことと、
往来
(
ゆきき
)
の人の多いことに、しばしは途方に暮れた。
親ごころ
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
昼は
小町
(
こまち
)
の街頭に立って、
往来
(
ゆきき
)
の大衆に向かって法華経を説いた。彼の説教の態度が予言者的なゼスチュアを伴ったものであったことはたやすく想像できる。
学生と先哲:――予言僧日蓮――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
満目
蕭条
(
しょうじょう
)
たる平野に雑草の花が揺れて、雲の
往来
(
ゆきき
)
が早い。陽が照ったり影ったりして、枯木のような粗林のむこうに土民の家が傾き、赤土に
烏
(
からす
)
が下りていた。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
こゝは車も通らぬ山坂の通ばかりで、河のみが
往来
(
ゆきき
)
の大通りに使はれてゐる私達の小さな竜巻村であつた。
ダニューヴの花嫁
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
それはふだんわたしどもの
往来
(
ゆきき
)
している友達の知らぬことばかりで、彼等は本当に何一つ知らなかった。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
柳の影が、トロリと水にうつって、
団々
(
だんだん
)
たる白い雲の
往来
(
ゆきき
)
を浮かべた川が、遠く野の末にかすんでいる。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もとより人里には遠く、街道
端
(
はず
)
れの事なれば、旅の者の
往来
(
ゆきき
)
は無し。ただ
孵化
(
かえ
)
り立の
蝉
(
せみ
)
が弱々しく鳴くのと、
山鶯
(
やまうぐいす
)
の
旬
(
しゅん
)
脱
(
はず
)
れに啼くのとが、
断
(
き
)
れつ続きつ聴えるばかり。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
その嬉しさのうちには、やはり胸を騒がせるような
戦
(
おのの
)
きが幾度か
往来
(
ゆきき
)
をします。その戦きはお君にとって怖ろしいものでなく、
心魂
(
しんこん
)
を
恍
(
とろ
)
かすほどに甘いものでありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何分ここはチベット第二の府からして首府ラサへ通ずる公道でありますから、
往来
(
ゆきき
)
の者も随分多い。そこで一人出遇ったのがネパールの兵隊で余程
瓢軽
(
ひょうきん
)
な面白い男でした。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
四、
往来
(
ゆきき
)
をまねくをばな咲く、野尻より、亀山、庄野、石薬師。こちや追分行くのは四日市。
東京の風俗
(新字旧仮名)
/
木村荘八
(著)
暗い町を肩を並べて歩き乍ら、稀なる
往来
(
ゆきき
)
の人に遠慮を
為
(
し
)
い/\、
密
(
ひそ
)
めた声も時々高くなる。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
毎日
(
まいにち
)
学校
(
がっこう
)
の
往来
(
ゆきき
)
に、
手
(
て
)
にはめてきたばかりでなく、
町
(
まち
)
へ
買
(
か
)
い
物
(
もの
)
にやらされたときも、この
赤
(
あか
)
い
手袋
(
てぶくろ
)
をはめてゆき、お
湯
(
ゆ
)
にいったときも、この
赤
(
あか
)
い
手袋
(
てぶくろ
)
をはめてゆき、また、
夜
(
よる
)
赤い手袋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
朝まだき
外
(
そと
)
に
出
(
い
)
で
候
(
さふらふ
)
に、左右なる砂山に
数多
(
あまた
)
鴨の居る如く見えて
駱駝
(
らくだ
)
の眠り居るが見え申し
候
(
さふらふ
)
。やや日たけ
行
(
ゆ
)
けば、その
獣
(
けもの
)
にうち乗りて
往来
(
ゆきき
)
するアラビヤ人なども多く見え
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
艫
(
とも
)
を擦り、
舷
(
ふなべり
)
を並べる、その数は幾百艘。
檣
(
ほばしら
)
は押並び押重なって遠くから見ると林のよう。出る船、入る船、積荷、荷揚げ。沖仲仕が
渡
(
わたり
)
板を渡って
筬
(
おさ
)
のように船と陸とを
往来
(
ゆきき
)
する。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
往
常用漢字
小5
部首:⼻
8画
来
常用漢字
小2
部首:⽊
7画
“往来”で始まる語句
往来中
往来際
往来止
往来側
往来傍
往来状
往来繁
往来餽遺