往来ゆきか)” の例文
旧字:往來
こう、途絶え途絶え、ちらほらこの処を往来ゆきかう姿は、あたかも様々の形した、切れ切れの雲が、動いて、そのおもてを渡るにひとしい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みな表町おもてまちなる大通おおどおりの富有の家に飼われしなりき。夕越ゆうごえくれば一斉にねぐらに帰る。やや人足繁く、戸外おもて往来ゆきかうが皆あおぎて見つ。楓にはいろいろのもの結ばれたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また一つ細く成る廊下を縫うと、其処にも、此処ここにも、二三人、四五人ずつは男、女が往来ゆきかう、たたずむ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幸いに可忌いまわしい坊主の影は、公園の一ぼく一草をも妨げず。また……人の往来ゆきかうさえほとんどない。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幸ひに可忌いまわしい坊主の影は、公園の一ぼくそうをもさまたげず。又……人の往来ゆきかふさへほとんどない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二階のと、三階の燈と、店の燈と、街路の燈と、あおに、萌黄もえぎに、くれないに、寸隙すきまなくちりばめられた、あやの幕ぞと見る程に、八重に往来ゆきかう人影に、たちまち寸々ずたずたと引分けられ、さらさらと風に連れて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なまめかしい、べにがら格子ごうしを五六軒見たあとは、細流せせらぎが流れて、薬師山を一方に、呉羽神社くれはじんじゃの大鳥居前を過ぎたあたりから、往来ゆきかう人も、来る人も、なくなって、古ぼけた酒店さかみせの杉葉のもとに、茶と黒と
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)