これ)” の例文
少しは邪推の悋気りんききざすも我を忘れられしより子を忘れられし所には起る事、正しき女にも切なきじょうなるに、天道怪しくもこれを恵まず。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これえらい!……畫伯ぐわはく自若じじやくたるにも我折がをつた。が、御當人ごたうにんの、すまして、これからまた澁谷しぶやまでくゞつてかへるとふにはしたいた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これから釣堀つりぼりへまゐりますと、男女なんによ二人連ふたりづれゆゑ先方せんぱうでもかして小間こまとほして、しゞみのおつけ、おいも煑転につころがしで一猪口いつちよこ出ました。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いわゆる扶桑ふそう伝説はすなわちこれで、多分は太陽の海を離るる光景の美しさとうとさから、導かれたもののごとく私たちは推測している。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかこれきたはなしとか、交際かうさいとかとふものとはまたべつで、あま適切てきせつれいではりませんが、たとへば書物しよもつはノタで、談話だんわ唱歌しやうかでせう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
三四郎はこれで云へる丈の事をことごとく云つた積りである。すると、女はすこしも刺激に感じない、しかも、いつもの如く男を酔はせる調子で
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
従来わめて親切につ妥当な批評をして来た、甲賀三郎氏がこれいて、批評しなかったということを、私には鳥渡受け取れません。
印象に残った新作家 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「平和と戦争」と題するトルストイの著書の終局に載するところ、即ちこれなり。其他の著書にも、此意を談ずるところ少なからず。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
春の雪はきえやすきをもつて沫雪あわゆきといふ。和漢わかんの春雪きえやすきを詩哥しいか作為さくいとす、これ暖国だんこくの事也、寒国の雪はふゆ沫雪あわゆきともいふべし。
『エヘン!』と一つ咳拂せきばらひして、ねずみ尊大そんだいかまへて、『諸君しよくんよろしいか?もつと乾燥無味かんさうむみなものはこれです、まァだまつてたまへ、諸君しよくん! ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これ等が黄色なてらされて居るのを私は云ひ知れない不安と恐怖の目で見て居るのであつた。しまひには両手で顔を覆ふてしまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
これはまあく/\秘密なんだが——君だから話すが——』と青年は声を低くして、『君の学校に居る瀬川先生は調里ださうだねえ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
責任せきにんといふことおもききたいのもこれがめ、依頼心いらいしんおほいのもこれめ、また意志いし強固きやうこでないといふのもこれめであらうとおもひます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
これまた、御本尊ごほんぞん羅刹らせつに申上て候。今日ほとけうまれさせまします時に、三十二の不思議あり、此事、周書異記云文しうしよいきといふふみにしるしけり。
親でもない人を誰が親にして事える者があるかと云うような調子で、折々は互に説がちがって居ました。これれは私の十六、七の頃と思います。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一夜いちや涼風りょうふうを銀座に追う。ひとかたす。正にこれ連袵れんじんを成し挙袂きょべい幕を成し渾汗こんかん雨を成すの壮観なり。良家の児女盛装してカッフェーに出入す。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「お竹倉」は勿論その頃にはいかめしい陸軍被服廠や両国駅に変つてゐた。けれども震災後の今日こんにちを思へば、——「かへつて并州へいしうを望めばこれ故郷」
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
右の方に尾根らしいものがちょいちょい姿を見せる。しかしこれは松葉沢の源頭に当るものらしい。二人で左右に別れて切明けの跡を探した。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
一にいはく、やはらぎを以て貴しとし、さかふこと無きをむねと為せ。人皆たむら有り、またさとれる者少し。これを以て、或は君父きみかぞしたがはずして隣里さととなりたがふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
余にしてこれと彼とを分別するの力なきならば余は誰によりて身を処せんや、見よ彼ら余の不遜を責むるものも相互あいたがいに説をことにするにあらずや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
この四郎右衞門は當年たうねん六十五歳の老人らうじんなり夫を是より三十五年のあひだ殘金ざんきん勘定かんぢやうかゝらばこれ何歳なんさいに至るぞや大岡殿おほをかどの仁心じんしんおもふべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「滅せぬもののあるべきか。これ菩提ぼだいの種と思いさだめざらんは、口惜しかりき次第ぞと、急ぎ、都に上りつつ、敦盛卿の御首みしるしを見れば——」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もつて、あゝ云ふ世界を頭から拒絶してしまふのは、むしろあゝ云ふものに敗ける事だよ。その点では僕はもつと勇敢だ。僕はこれからダンスを始めるよ。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
よつせいいへせり。の・老子らうしまなものすなは儒學じゆがくしりぞけ、儒學じゆがくまた老子らうししりぞく。『みちおなじからざれば、あひめにはからず』とは、あにこれ
あゝ王者よ、吾は以何ばかり忠実なる、王の勇敢なる軍人であらうよ! 吾これなる剣は賢き王の御旗の許に是如く麗はしく喜びに踊りつゝあり。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
昨夜老人のもとへ来たのはだ藻西一人さ、帳番の証言だからこれも確かだ、藻西は宵の九時頃に来て十二時頃まで居たそう
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
罪過の語はアリストテレスが、これを悲哀戯曲論中に用ひしより起原せるものにして、独逸語ドイツご所謂いはゆる「シウルド」これなり。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
もっとも牧之翁自身も、「これ余が発明にあらず諸書に散見したる古人の説なり」といっているのであるから、此処ここでは問題にすることもなかろう。
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
日本にほん化物ばけもの後世こうせいになるほど面白おもしろくなつてるが、これはじ日本にほん地理的關係ちりてきくわんけい化物ばけもの想像さうざうする餘地よちがなかつたためである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「然うかい、君も然うなのかい、」と私は引取ツて、「工場の前も幾度いくたびとほツたか知れないが、今日ほど悲しいとかんじたことはこれまで一度いちどもなかツた。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
これ剣道の師の命令にそむき、女侠客の為に抑留されて、心ならずも堕落していた身から出たさび。斯う成るのも自業自得と、悔悟の念が犇々と迫った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「わが郷関きょうかんいずれの処ぞこれなる、煙波江上、人をして愁えしむ」と魚容は、うっとり呟いた時、竹青は振りかえって
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
野干すなわち口脚を以て水を通ず、水入って井に満ち師子浮み出づ、仏いわく師子王は我身これなり、五百師子は諸比丘是なり、野干は阿難あなん是なりと〉。
扨て参考書だが、帯は愚か、たすきにもならない本ばかりで、あれでもなしこれでもなしと、やっと捜がし出したのがオーベルラントで四冊ものの登山案内
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
これは明らかに荷が勝ち過ぎたのと、彼の体力の不足から来たものだろう。予は彼の為に、後者を其の原因にる。
明治めいぢ三十五ねんはるぐわつ徳島とくしまり、北海道ほくかいだう移住いぢゆうす。これよりき、四男しなん又一またいちをして、十勝國とかちのくに中川郡なかがはごほり釧路國くしろのくに足寄郡あしよろごほりながるゝ斗滿川とまむがはほとり牧塲ぼくぢやう經營けいえいせしむ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
大阪方の主将は木村重成、長曾我部盛親もりちかの二人。これに向うは河内国の先鋒藤堂高虎兵五千、井伊直孝三千二百。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
又定生の外祖母と稱するものも別本に見えてゐる。「貞圓妙達比丘尼びくに、天明七年丁未ていび八月十一日」と書し、深川佐賀町一向宗と註してあるものがすなはちこれである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
何卒、梅子さん、呉々くれ/″\これの御研究をお忘れないことを望みます、人生の奥義あうぎは此のさゝやかなる新約書の中にあふれて、めども尽くることは無いでありませう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
□四月させる事なし、鉄線開きたけのこ出。ひぐらし鳴き、蚯蚓みみず出、螻蟈けら鳴き、芭蕉実を結ぶ、国人これを甘露と名づく。
ただこれだけの事ならば別に仔細しさいし、こゝに不思議なるはの女の顔で、眼も鼻も無い所謂いわゆるのツぺらぼう。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
身共は京都におわします一品薬王寺宮いっぽんやくおうじのみや様の御申付おもうしつけによってこれまで参いった宮侍、吉岡鉄之進と申す者じゃ。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
火を月の方に送るもこれ、滅ぶる心を動かすも是、地を相寄せて一にするもまた是なり 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
御礼御序おついで御頼おたのみ申候。なおあなたよりも御祝之品に預り痛み入候。いづれこれより御礼可申上もうしあぐべく候。扇子だけありあわせていし候。御入手可被下くださるべく候。御出張之先之事、御案も候半。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
直諫とはあやまちをいいあらわし、をすぐにのべて、是非ぜひをまげず、つよくいさむるなり。かくのごとくなれば聞く人おそれて従う。孔子こうしの法語のげんとのたまうこれなり。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「えゝ天人のものなんかは地の人間が買やしない。私達わたしたちがいつまでこれをもつてゐたところが何の用にもたりないから、いつそのことこれは竜宮様へ差し上げてしまへ。」
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
これも用法不詳ふしやうなれど、煙管きせるのラウの如きくだをば上より下へかたむみ、全体ぜんたいをば大なる西洋煙管の如くにし、噐中にものりて管より之をひしやに考へらる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
これは又余りに失敬なと腹の中に熱いうねりが立つものから、予は平気を装うのに余程骨が折れる。
浜菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
……………………もうこれまでと思った私は、矢庭に懐の小刀ナイフを抜くと、ぶッつかる様に、その友人の胸を目がけて突進しました。……………………一瞬間の出来事です。