これ)” の例文
やまおきならんでうかこれも無用なる御台場おだいば相俟あひまつて、いかにも過去すぎさつた時代の遺物らしく放棄された悲しいおもむきを示してゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これが悪いと言うなら、クリスマスの支度をするのは皆悪かろう。斯ういう理窟も知らないで、唯頭から叱ればいいと思っている。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おつぎは勘次かんじ敏捷びんせふあざむくにはこれだけのふか注意ちういはらはなければならなかつた。それもまれなことでかずかならひとつにかぎられてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これもつ相持あひぢする、ぜいなり伊尹いゐん(九七)はうり、百里奚りけい(九八)りよる、(九九)みなつて其上そのかみもとめしところなり
彼は意志の方面、これ智能ちのうの方面で、この両方面における遺伝的系統をたずぬるに、抽斎の前途は有望であったといってもかろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
取出し源兵衞といふ餠屋や有と繰返くりかへし改めしに茗荷屋みやうがや源兵衞と云があり是は近頃遠國ゑんごくより歸し人ときゝ及ぶさだめてこれならんと寶澤にも是由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山「はい、直ぐに来まする心得、これに少々ばかり金子がありますが是に添えて置きますから何うかお前さん是で万事いように為すって」
しんずい王莾おうもうや、晋宋しんそう斉梁せいりょうや、則天そくてん符堅ふけんや、これ皆これをして天下を有せしむる数百年にゆといえども、正統とすからずとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これは相当皮肉な、同時に痛快な言葉でもあって、彼が転変極まりなき時代を明確に、且つ無作法に認識して居る事を示して居る。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父なる卿の眼前にこれを見て如何許いかばかり嬉しく思い給ふらんと、人々上座の方を打ち見やれば、入道相國のも喜ばしげなる笑顏ゑがほ引換ひきかへて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
十萬世界の大地のちりは知人しるひともありなん。法華經ほけきやう供養の功徳くどくしりがたしとこそほとけはとかせ給てさふらへ、これをもて御心あるべし。
喜ぶから小説になると云うと小説は娯楽の為めと云う意味になる。これくわしく説明しようとすると小説の目的と云う議論になる。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これを取り彼をひろげてしばらくは見くらべ読みこころみなどするに贈りし人の趣味はおのずからこの取り合せの中にあらはれてきょう尽くる事を知らず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ちゆふ老人の帳場番頭の居ること、制服のギヤルソンが二三人うやうやしさうに立つて居ること、これ等はどの国の旅館ホテルも少しの違ひがない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
彼とこれとを全然ひとまとめにして取り扱い、名称上、また実際上、その間何らの区別を設けぬようにありたいと思うのである。
かくてたとへば群鶴むらづるの、一部はリフエの連山やま/\にむかひ、また一部は砂地すなぢにむかひ、これ氷をかれ日を厭ひて飛ぶごとく 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
井沢香央の人々、七四かれにくこれかなしみて、もは七五しるしをもとむれども、七六ものさへ日々にすたりて、よろづにたのみなくぞ見えにけり。
「そんな嘘なんか、聞きたくないわ。ほんとに仕事は何うだったの? あたしだって、これには関係してるんじゃありませんか」
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、どつちかとへば、愛嬌あいけうもある、く、趣味しゆみわたし莫迦ばかにするほどでもない。これ長所とりゑ面白味おもしろみもないが、気質きしつ如何いかにもまる出来できてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼れがいたという城は伊祖城といって、今もなお残っているが、浦添城をへだたること十町ばかりの山脈つづきで、しかかれこれとがその両端をなしている。
浦添考 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
如何いかなる事業じげふしたがふとも、體力たいりよくこれともなふて強健きやうけんならずば、ごと活動くわつどうするあたはず、また所期しよきの十一だもたつするあたはざるは、世上せじやうそのれいおほところなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
玉を烹たるもの、そのゆゑをきゝかまふたひらきればすでに玉はなかばかれたり。其たまわたり一寸ばかりこれしん夜光やくわう明月のたまなり。俗子ぞくしやくせられたる事悲夫かなしきかなしるせり。
これに問ふべきは、何がゆゑに小説は国民の美質をのみ描かざるべからざるかといふ事なり。国民の短処、醜処は(吾人はこれなしと断ずるの理由を認むるあたはず)
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
〔譯〕周子しうしせいしゆとす、こゝろ本體ほんたいを守るを謂ふなり。※説づせつに、「よく無し故にせい」と自註じちゆうす、程伯氏ていはくしこれに因つて天よくせつ有り。叔子しゆくしけいする工夫くふうも亦こゝに在り。
「それではこれで失礼します。」と自分は起上たちあがった、すると彼は狼狽あわてて自分を引止め、「ま、ま、貴様怒ったのですか。し僕の言った事がお気に触ったら御勘弁を願います。 ...
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
二十けんにもあま巨大きよだい建物たてものは、るから毒々どく/\しい栗色くりいろのペンキでられ、まどは岩たたみ鐵格子てつがうしそれでもまぬとえて、内側うちがはにはほそい、これ鐵製てつせいあみ張詰はりつめてある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いずれの地に行きたまふかと問ふに、これより椎葉山しいばやまに向ふなりと言ひて別れ、それよりみち無き断崖に登るを見るに、そのはやきこと鳥の如しといふ。話は少年の時小一より聞けり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
とこにおはひりゃったら、(小さき藥瓶を取出し)このびんってこれなる藥水やくすゐをばおみゃれ。
吾人ごじんは敢て此処ここにおいて彼れの行事をべんと欲するに非ず、ただこれを以て松陰の履歴に比すれば、彼もこれも、獄中の生涯と、陰謀の生涯とを以て、おもなる生涯と為したることを
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かれかれこれこれかげになりてのお指圖さしづ古參こさん婢女ひとあなどらず明日きのふわすれしやうらくになりたるはじようさまの御情おなさけなり此御恩このごおんなんとしておくるべききみさまにめぐはゞ二人共々ふたりとも/″\こゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これ年頃としごろになったのでございますから、縁談えんだんくち諸方しょほうからあめるようにかかりましたが、俚諺ことわざにもおびみじかしたすきながしとやら、なかなかおもつぼにはまったのがないのでございました。
他ノ高等精神作用亦皆習練ニヨリテ育成セラルルコトこれニ同キモノナリ
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
これも上の御大法なり、かれも政府の表向きなれども、この事を行なうにかく私に取り計らえば、表向きの御大法には差しつかえもあらず、表向きの内証などとて笑いながら談話してとがむるものもなく
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これは元禄の、世にも不思議な怪異談であるのです。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
選びたり。これは彼より奪ふべからざるものなり。
律子と貞子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
討ちつ討たれつ爭へり、これかばねを囘すため
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
あなたはこれを見て何も不思議がる事はない
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
これが、そのときの円朝の即興である。
落語家温泉録 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
これ義人ぎじんなり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
よきしゆくなりしならん大きな宿屋荒果あれはてあはれなりこゝに木曾義仲馬洗うまあらひの水といふ有りといへど見ず例の露伴子愛着の美人も尋ねずわづかに痩馬に一息させしのみにて亦驅けいだす此宿より美濃みの國境くにさかひ馬籠まごめまでの間の十三宿が即ち木曾と總稱する所なり誠に木曾にりしだけありてこれより景色けいしよく凡ならず谷深く山聳へ岩に觸るゝ水生茂おひしげる木皆な新たに生面を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
いろひ、またゆき越路こしぢゆきほどに、られたとまを意味いみではないので——これ後言くりごとであつたのです。……不具かたはだとふのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ああこれは昨夜お客さんに戴いた自動奏楽機オルゴールだなと気がついた時には、最早「一つとや」を歌い出した。乃公は如何どうすることも出来ない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「おつうだつていまえこともあらな、そんだがおつかゞくつちや衣物きものしくつてもこればかりはやうがねえのよな」女房にようばうはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
景隆は紈袴がんこの子弟、趙括ちょうかつりゅうなればなり。趙括を挙げて廉頗れんぱに代う。建文帝の位を保つ能わざる、兵戦上には実にこれに本づく。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
山三郎は母といもうとが先に大津の銚子屋に参って居て、これから見合に相成るという事を聞いて、驚きまして、たくを出て大津の銚子屋へ参ったが
かれ黄の百合をおほやけの旗にさからはしむればこれ一黨派の爲にこれを己がものとなす、いづれか最も非なるを知らず 一〇〇—一〇二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
彼は弘前藩士たる抽斎が、外来の事物に応じて動作した一時のレアクションである。これは学者たる抽斎が、終生従事していた不朽の労作である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
貸給かしたまへと云けれども三郎兵衞更に承知せず外の話にまぎらして取合ざれば四郎右衞門も大いにはらたてこれほど事をわけて頼むに恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すでにして大夫たいふ鮑氏はうしかうこくぞくこれみ、景公けいこうしんす。景公けいこう穰苴じやうしよ退しりぞく。しよやまひはつしてす。田乞でんきつ田豹でんへうこれつてかうこくうらむ。