此女これ)” の例文
え? 「モナコの岸」? マアセル? このマアセルか。せよジョウジ、冗談じゃあねえぜ。此女これあおめえ、俺んとこのかかあじゃねえか。
「何が阿呆あほうかいな? はい、あんた見たいに利口やおまへんさかいな。好年配えいとしをして、彼女あれ此女これ足袋たびとりかえるような——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「雪岡さん、君は一体どんな考えでいたんです? つい此間こないだ函根に行く前に奇麗に此女これと手を切って行ったんじゃありませんか」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「親分さん。どうぞお待ちくださいまし。わたくしから何もかも申し上げますから、どうぞ此女これはお赦しねがいます」
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此女これはよほど大切だいじに保養せねばならんのです。それに私もこの頃過労くたびれているので、ゆっくり静養したいと思います
いつでも此女これから話は聞いていました、一人お母様っかさんがあるけれ共生死いきしにが分らない、しかし丈夫な人で、若い気象だったから達者でいるかとお噂は能くしますが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「義一さん、船の出るのもが無さそうですからどうか此女これ……わたしの乳母ですの……の手を引いておろしてやってくださいましな。すべりでもするとこおうござんすから」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
此女これはチベットの婦人でその婦人が長くわずらって居るという。ちょっとヒステリーのような病気でありますが非常な美人で、なかなかシナの将校に対しては無限の勢力を持って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此女これの人別がわかりやしてな。」と提灯屋は言葉を継ぐ。
此女これも、親子縁が薄うおすのや。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
此の社会のことには私も大抵目が利いているから、それを見て直ぐ「此女これは、なか/\売れる女だな。」と思った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「むむ。母がいなくなってから、うちのことはみんな此女これに頼んでいるんだ。」と、赤座はにこにこしながら言った。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
喜「いから黙ってろ、殿様此女これの里は白銀町しろかねちょう白旗稲荷しらはたいなりの神主の娘ですが、何うしたんだか、亭主思いで、わたくしが酒を飲んでは世話を焼かせますが、能く面倒を見ます」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや、瑞西スイスへ出かけるところです。家内が少し健康からだがわるいので、医者から山へ転地しろと云われたものですから。しかし山が寒くて此女これが困るようでしたら、湖水の方へ降りるつもりです。
こんな者でも相応なところから嫁に貰いたいと申込んで来るが、何しろ此女これがいなくなると僕が困るからね。このも僕の家内がきまるまでは他へ縁付かないと言っている。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蟠「礼にゃア及ばねえ、頼みというのはほかじゃねえがな、此女これを今度或る大名へ奉公に出すのだが、余り下方風しもがたふうも安ッぽい、手数であろうが御殿風に髪を直してくれまいか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「一体、この女はうしてちたんだろう。旦那は此女これを御存知ですか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
安「若旦那、なんですえ此女これは」
此女これはあなたのお嫁さんでしょう。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)