此金これ)” の例文
破落戸ごろつき仲間に遣る物を遣らねば此納まりむづかしく、我れは詮方なけれどお名前に申わけなしなどゝ、つまりは此金これの欲しと聞えぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と手を合せて伏拝み何所どこの人だか知りませんから心のうちしきりと礼を云い、翌日あしたに成りますると此金これでお米を買うんだと云う
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今度は、どうもお目出たかった。ともども名誉のことであった。ついては宮内省より百円お下げになったから、此金これを君へ持参した。まあ、赤飯でもたいて祝って下さい」
「どうぞ、此金これで、苦界くがいが抜けられますように。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其文そのふみびらけばたゞ一トこと美尾みをにたるもの御座候ござさふらふ行衞ゆくゑをおもとくださるまじく、此金これまちちゝをとのねがひに御座候ござさふらふ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日はちっと遅いから明日あした屹度帰す、是は誠に心ばかりだが……娘は明日屹度取戻してお前のうちへ帰るようにして上げるが、此金これほんの心ばかりだ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから、此金これは、木の代というつもりで差し上げて置いたのですから、私へお返しになることはいけません。それに今夜は大晦日ですよ。お入用のことがあったら、後をお持ちになって下さい。
車夫くるまやの足が何時より遲いやうに思はれて、御好物の飴屋が軒も見はぐりました、此金これは少々なれど私が小遣の殘り、麹町の御親類よりお客の有し時
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
馬「妙々梅と桜で六百出しゃ気儘か、宜しい…皆様みなさん先へ入らっしゃい…じゃア婆さん此金これで」
「それは、毎々御志有難うございます。しかし、私は、前既に充分頂いております。此金これはお返しします。もしお祝い下さるお心があったら、私はそういう事は不得手で分りません。あなたが此金これよろしいようになすって下さい」
車夫くるまやの足が何時より遅いやうに思はれて、御好物の飴屋あめやが軒も見はぐりました、此金これは少々なれど私が小遣の残り、麹町かうぢまちの御親類よりお客の有し時
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其の時お内儀さんが此金これをと云って下すったから、ソックリお前のとこもって来てやったら、お前が気の毒がって、以来はモウ横山町の横と云う字にも足は踏かけめえと云って
車夫くるまやあし何時いつよりおそいやうにおもはれて、御好物ごかうぶつ飴屋あめやのきはぐりました、此金これ少〻せう/\なれどわたし小遣こづかひのこり、麹町かうじまち御親類ごしんるいよりおきやくありとき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お世話がいがあったと思って居ました、処がアヽ云う訳になったもんですから、お内儀さんが、此金これで堺屋のしきいまたがせない様にして呉れと仰しゃって、金子かねをお出しなすったから
お歳暮には何ほど下さりますかと、朝より寝込みて父の帰りを待ちしは此金これなり、子は三界の首械くびかせといへど、まこと放蕩のらを子に持つ親ばかり不幸なるは無し
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山「誠に少ないがおっかさんに此金これで何ぞあったかい物でも買って上げて」
歳暮せいぼにはなにほどくださりますかと、あさより寢込ねこみてちゝかへりをちしは此金これなり、は三がい首械くびかせといへど、まこと放蕩のらおやばかり不幸ふかうなるは
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すぐ手前に仕舞って置けと云うて渡した其の金子を手前が盗出ぬすみだして此所こゝへ持って来るとは何ういう了簡じゃ、此金これがなければ片時も己はあの寺にられぬという事も、手前う知ってるじゃないか
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
我れは詮方せんかたなけれどお名前に申わけなしなどと、つまりは此金これの欲しと聞えぬ。
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れは詮方せんかたなけれどお名前なまへに申わけなしなどゝ、つまりは此金これしときこえぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
端金はしたにはあらざりけんを、六三ろくさ此金これとヾめず、重々ぢゆう/\大罪だいざいくびおふせらるヽともらみはきを、なさけのおことばてつしぬとて男一匹をとこいつぴき美事みごとなきしが、さても下賤げせんてば、こひかねゆゑするとやおぼ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これより以後いご一生いつしやう五十ねん姫樣ひめさまにはゆびもさすまじく、まし口外こうぐわいゆめさらいたすまじけれど、かねゆゑぢるくちにはあらず、此金こればかりはとおそれげもなく、つきもどしてさてつくづくとびけるが、歸邸きていそのまヽ暇乞いとまごひ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その頃には皆々うち寄つて笑ひたきもの、とて此金これを受合ける。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)