あれ)” の例文
雨風のなおはげしくおもてをうかがうことだにならざる、静まるを待てば夜もすがらあれ通しつ。家に帰るべくもあらねば姉上は通夜したまいぬ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今の心のさまを察するに、たとえば酒に酔ッた如くで、気はあれていても、心は妙にくらんでいるゆえ、見る程の物聞く程の事が眼や耳やへ入ッても底の認識までは届かず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けえらねえ事も有るから、それでわしが案じるからいうので、行くなアとはいわねえ、行ってもいゝから早くけえってうというのだ、おめえは今迄親にあれことをいい掛けた事はねえが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのおうち子供衆方こどもしゅがたはなしでは、おばあさんの来るという日の夜に限って、山から狐が沢山に下りて、そのお宅の縁側は、土でざらざらになるのと、きっとその日は雨風であれるということです。
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
同時に大きなあれが窓を破るかに打ち叩いた。
小曲 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
短慮功を為さずと遺言され、それからちっとばかりおとなしくなったが、気のあれえのは性質うまれつきだから止まねえのよ、今日高輪たかなわから乗合船のりえいぶねで客を送り、深川へ上げて佐賀町の友達の処で用を