彼子あれ)” の例文
これは本当これは嘘であるというたそうだ、だから彼子あれは確かに化身に相違ないというような説が俗人社会に行われて居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
何だとてそばへゆけば、まあ此処へお座りなさいと手を取りて、あの水菓子屋で桃を買ふ子がござんしよ、可愛らしき四つばかりの、彼子あれ先刻さつきの人のでござんす
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「軽はずみをしないように用心おしよ。——宅でも彼子あれがいると少しは依怙たよりになるんだがね」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうぞ、彼子あれが先祖の功にめんじて、このたびの不心得は、お助けおき下さるように」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何故って、両女ふたりで育ててみますと、彼子あれが可愛くて可愛くて、お互いに手離せるものでもなし、片一方が独り占めにするということも出来ないようになってしまったのでございます
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
可愛らしき四つ計の、彼子あれが先刻の人のでござんす、あの小さな子心にもよく/\憎くいと思ふと見えて私の事をば鬼々といひまする、まあ其樣な惡者に見えまするかとて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼子あれが、このたび、大庭景親に徒党して、殿へ、抵抗てむかいいたしたのは、まったく、一時の魔がさしたのでござりまする。……ほん気な仕様しわざとは、彼子あれを生んだこの母にも信じられませぬ。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可愛かわいらしき四つばかりの、彼子あれ先刻さつきひとのでござんす、あのちいさな子心こゞゝろにもよく/\くいとおもふとえてわたしことをば鬼々おに/\といひまする、まあ其樣そん惡者わるものえまするかとて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)