あれ)” の例文
僕のうちにはあれの肉体が深く喰い込んでいます。それにどうでしょう、僕の心とあれの心とは全く背中合せに反対の方を向いているんですからね。
囚われ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
夫人の変態性へんたいせいがこの手紙を書かせ、夫との夜の秘事に異常な刺戟しげきを与えたというのでした。——私のあれは、最後にこんなことをいたことを覚えています。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その時どうかしてあれの冷たい眼差しが僕の胸を刺すんです。僕の心は急に堅くなり、妻の顔には執拗な反撥が浮ぶんです。
囚われ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そういえば思い出しましたが、あれの居るときに、妙な質問を私にしたことがありましたよ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実際僕はあれの過去をすっかり知りたかった、ほんとうに愛したいためにです。然し妻はいつも、もう忘れてしまった過去のことを今新らしく思い出さして下さるなと答えるきりです。
囚われ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)