彼娘あれ)” の例文
「ねえ、源さま。なるほど、お亡くなりになった先生は、萩乃の父ですけれど、それなら、いくら後添えでも、このわたしは彼娘あれの母でございますよ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは勿論もちろん彼娘あれだッて口へ出してこそ言わないが何んでも来年の春を楽しみにしているらしいから、今唐突だしぬけに免職になッたと聞いたら定めて落胆するだろう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「それはいつか彼娘あれが申したではございませんか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼娘あれにもな、あやからせとう存じますので。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
叔母に咄して……ダガ若し彼娘あれのいる前で口汚たなくでも言われたら……チョッ関わん、お勢に咄して
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼娘あれに眼をつけるとは、殿もまた、持病が出たらしいぞ。えらい騒ぎにならねばよいが——。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ど、どうして、彼娘あれがこのあたりになど」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ハテそうしては彼娘あれが……」ト文三は少しくしおれたが……不図又叔母の悪々にくにくしい者面しゃっつら憶出おもいいだして、又憤然やっきとなり、「糞ッ止めても止まらぬぞ」ト何時いつにない断念おもいきりのよさ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「お蔭様で彼娘あれもしっかり者——。」
「へ? 彼娘あれを?」