“もの”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:モノ
語句割合
39.4%
23.9%
所有3.4%
3.4%
2.8%
2.6%
1.8%
1.2%
1.1%
1.1%
0.6%
0.6%
0.5%
器物0.4%
物品0.4%
物象0.4%
作品0.3%
存在0.3%
0.3%
0.3%
品質0.3%
0.3%
東西0.3%
車夫0.3%
食物0.3%
鬼神0.2%
0.2%
0.2%
物価0.2%
財産0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
岩石0.2%
0.2%
料理0.2%
0.2%
物体0.2%
着衣0.2%
衣類0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
魍魎0.2%
0.2%
0.2%
0.1%
事実0.1%
0.1%
0.1%
役者0.1%
0.1%
0.1%
万物0.1%
事物0.1%
人間0.1%
作物0.1%
0.1%
0.1%
価格0.1%
信号0.1%
光景0.1%
入費0.1%
初阪0.1%
動物0.1%
0.1%
品物0.1%
0.1%
外物0.1%
奇観0.1%
0.1%
0.1%
婦人0.1%
子供0.1%
実物0.1%
家畜0.1%
対象0.1%
専有0.1%
0.1%
後裔0.1%
必要0.1%
0.1%
感興0.1%
所有品0.1%
新造0.1%
春心0.1%
書籍0.1%
0.1%
核心0.1%
武器0.1%
0.1%
漢子0.1%
物像0.1%
物資0.1%
物質0.1%
現物0.1%
現金0.1%
0.1%
用事0.1%
男女0.1%
0.1%
盗賊0.1%
0.1%
盜賊0.1%
着物0.1%
研究劇団0.1%
禽獣0.1%
0.1%
稿0.1%
0.1%
純益0.1%
0.1%
芸妓0.1%
萬象0.1%
藝術0.1%
0.1%
言葉0.1%
言語0.1%
諸法0.1%
0.1%
負債0.1%
貨幣0.1%
賄賂0.1%
資金0.1%
足跡0.1%
連中0.1%
道具0.1%
0.1%
金銭0.1%
銘刀0.1%
鏡餅0.1%
0.1%
霊物0.1%
頭巾0.1%
食事0.1%
飼料0.1%
0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
だから平常へいじょううたをおうたいになり、ものらしておいでなさるときは、けっして、さびしいということはなかったのであります。
町のお姫さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
(四三)しんへいは、もと(四四)悍勇かんゆうにしてせいかろんじ、せいがうしてけふす。たたかもの(四五)其勢そのいきほひつてこれ利導りだうす。
「お前はお嫁になることもできないで、おんだされたのをじないの。まだ人の家の財産を自分の所有ものにしているつもりなの。」
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
若き御連枝はムッとしてそのまま訪問されず、しかも、その人も配偶をむかえてから、かわものはなかったとのたんをもたれたのだから悲しい。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
きさまは不孝不弟であるから、死期がもうせまっているのだ。僅かな田地も汝のものにならない。持っていてどうするつもりなのだ。」
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
他の一人 いや、手前こそ、お邪魔になるところへ小長いものを突き出しておって、不調法をつかまつりました。平に御勘弁を。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
事情わけを知らない引船と禿かむろは、さっきここを出て行く前に、次の部屋へ、大名の姫君でもせるような豪奢なよるものを敷いて行った。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「予は自ら誓えり、世を終るまで鏡を見じと、しかり断じて鏡を見まじ。否これを見ざるのみならず、今思出おもいいだしたる鏡というものの名さえ、務めて忘れねばならぬなり。」
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
拔放し喜内が寢たる上に打跨うちまたがものをも云ずつかとほれと咽喉のどもと刺貫さしとほせば喜内はアツと聲を立しが元來物に動ぜぬ人なれば心を鎭めて考ふるにのどに貫きし刀の刄右の方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は今この花を見捨ててぬるのがものうくその花辺に彽徊しつついる内にはしなく次の句が浮んだ。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
……ホ、ホ、ホ、ホ、そういうたとて、名古屋山三なごやさんざや政宗どの程な晴れ着でもない、ただあかがついていぬというだけのもの、さあ世話をやかせずに袖を通してみなされ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みのるがそれ迄に少しづゝ書き溜めておいたもののある事を知つてゐた義男は、それにこの規程きていの分だけを書き足して送つた方が好いと云つてみのるに勸めたのであつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
今しも台所にては下婢おさん器物もの洗ふ音ばかりして家内静かに、他には人ある様子もなく、何心なくいたづらに黒文字を舌端したさきなぶおどらせなどして居し女、ぷつりと其を噛み切つてぷいと吹き飛ばし
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
渠等かれら無頼ぶらいなる幾度いくたびこの擧動きよどう繰返くりかへすにはゞかものならねど、ひとそのふが隨意まゝ若干じやくかん物品ものとうじて、その惡戲あくぎえんぜざらむことをしやするをて、蛇食へびくひげい暫時ざんじ休憩きうけいつぶやきぬ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
耳に風がうなり、睫毛まつげに霧が痛いほどぶつかッて後ろになる。地の物象ものすべて——町、森、原野、山波、渓流——点々たる部落の羊や牛の影までが見る見るあとへぎられて行く。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あい染附の、大きな皿は、ルイ王朝時代のものを模した奴で、これは、戦後の作品ものではない。疎開して置いたものに違いない。この皿は、昔のまんまだ、少くとも、これだけは。
神戸 (新字新仮名) / 古川緑波(著)
したがって「五蘊は空」だということは、つまり、世間にある一切の存在ものはみんな空だということになるのであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
こんな誓ひが人とものとの間にあつた後、村々の人は、石城しきの中に晏如として眠ることが出来る様になつた。さうでない村々では、何者でも垣を躍り越えて這入つて来る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「戦場ゆえ、平馬めは、貸すのはイヤだという。おいっ、たれかほかに、於通に馬をかして、みずからは口輪をとって、犬山まで歩いてやるような、優雅みやびものはおらんか。たれでもよいぞ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此狆の胸掛は百合子さんのリボンと同じ品質ものだと思いながら、乃公は狆の目を突付いてやった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「不貞? ——そうかな。お稲はもと、甲府のやなぎ町へ、江戸から流れて来た旅芸者、それを鮎川の親分仁介が、根びきをした持ちものだと——おれは聞いたが」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは毛巡税もうじゅんえつと云う者の住んでいた家で、五六年前に瘟疫おんえきで一家の者が死絶えて、今では住んでいる者は無いはずであるが、それでも時どき小供こどもが出て来て東西ものを買うのを見たことがあるから
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その日も暮れ近く旦那つりより恵比須ゑびすがほして帰らるれば、御新造も続いて、安産の喜びに送りの車夫ものにまで愛想よく、今宵こよひを仕舞へば又見舞ひまする、明日あすは早くにいもと共のれなりとも
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
茶をついでやったり、お重箱じゅう食物ものを出して与えたりしましたが、お粂がもてなせばもてなしてやる程、次郎はもじもじして、いつもの野趣の風がない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帷帳とばりを周らした中は、ほの暗かつた。其でも、山の鬼神もの、野の魍魎ものを避ける為の燈の渦が、ぼうと梁に張り渡した頂板つしいたに揺らめいて居るのが頼もしい気を深めた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
陰に廻りて機關からくりの糸を引しは藤本の仕業に極まりぬ、よし級は上にせよ、ものは出來るにせよ、龍華寺さまの若旦那にせよ、大黒屋の美登利紙一枚のお世話にも預からぬ物を
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
余は此書の価直かちを論ずるよりも寧ろ此著の精神をうかゞふを主とするなり。即ち紅葉が粋と侠とを集めて一美人を作り、其一代記をものしたる中に、如何なる美があるを探らんとするなり。
其うち物価もの次第だん/″\高くなり、お秀三人のくらしは益々困難に成って来た。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それではお前此娘これの一生も可愛さうだし、また一人ツぽちになつた、私は誰が養ひますえ、お前は今でもたくさん家に、財産ものがあるとお思ひか知らないが、さうさう居喰も出来ないよ。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ときにいつもはたものたれらつかまへて、尻上しりあがりの、すました調子てうしで、なにかものをいつてなかつたことはほとんどい、それにひとからいてたことはかつてないので
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
血を吐くやうな ものうさ、たゆけさ
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
お可久は、鮓の皿や汚れものを、台所へ片づけて、風呂に入った。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一体あの宗旨では、若いものまでがそれは生意気でございましてね、ほんとでございますよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
地質調査ちしつちょうさをするときはこんなどこから来たかわからないあいまいな岩石もの鉄槌かなづちを加えてはいけないと教えようかな。すぐの前を及川おいかわ手拭てぬぐいくびいて黄色のふくいそいでいるし、おうかな。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
物思へばものみなもの転寝うたたねに玉の螺鈿らでんの枕をするも
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まア此寒このさむいのに可愛かあいい手で足をなでてゝるところはうだえ、……可愛想かあいさうだなー、……残余あまつた料理ものがあつたツけ……賓客きやくのこした料理ものさらなかに取つてあるだらう、……アーそれさ
杯が小さいと見えて、ほかの大きなものしても、あッけないくらいなものだった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わっと叫ぶに泰助も驚きて、見遣る座敷の入口に、けぶりのごとき物体ものあって、朦朧もうろうとして漂えり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おくるしいんですか。え、おれませんか。上の着衣ものなど、お脱ぎになっては」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまに我輩が何か言はうものなら、私は斯様こんな裸体はだかで嫁に来やしなかつたなんて、其を言はれると一言いちごんも無い。実際、彼奴あいつが持つて来た衣類ものは、皆な我輩が飲んで了つたのだから——はゝゝゝゝ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「なあに、好い加減さ。雅号なんざ、どうだって、ものさえたしかなら構わない主義だ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつも主人のそばに肩をすぼめて細くなりて居し夫人を見しものは、いずれもあきれ果てつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
母の名でいささか収入はいって来る金があって、一日も早く隠居してそれで居食いしたいと何時も言い暮らしていたけれど、やっと一人口を糊するに足るもの
消えた花婿 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
帷帳とばりめぐらした中は、ほの暗かった。其でも、山の鬼神もの、野の魍魎ものを避ける為の灯の渦が、ぼうとはりに張り渡した頂板つしいたに揺めいて居るのが、たのもしい気を深めた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この時、風一陣、窓に近きくりこずえものありてみしようなる音す。青年は筆を止めて耳傾くるさまなりしが
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一体此辺こゝらは四月時分には随分大きなものもかゝります。
しばしものを求め得ずとも、なぞもあさましく魚の餌を飲むべきとてそこを去る。しばしありてうゑますますはなはだしければ、かさねて思ふに、今はへがたし。
にはかにも飢ゑてものほしげなるに、彼此をちこち六六𩛰あさり得ずして狂ひゆくほどに、たちまち文四が釣を垂るるにあふ。其のはなはだかんばし。心又六七がみいましめを守りて思ふ。我はほとけの御弟子なり。
腹立紛れに贋物を取ッて骨灰微塵こっぱいみじんと打砕き、ホッと一息き敢えずまた穿鑿せんさくに取懸り、また贋物を掴ませられてまた事実ものにしてまた打砕き、打砕いてはまた掴み、掴んではまた打砕くと
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ウカウカと文三がつかませられるままに掴んで、あえだりもんだり円めたり、また引延ばしたりして骨を折て事実ものにしてしまい、今目前にその事が出来しゅったいしたように足掻あがきつもがきつ四苦八苦の苦楚くるしみ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
春の夜を淋しく交る白い糸を、あごの下に抜くもものうく、世のままに、人のままに、また取る年の積るままに捨てて吹かるるひげは小夜子の方に向いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
姿勢を変えるさえものうく見えた男はただ
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
陰に廻りて機関からくりの糸を引しは藤本の仕業にきわまりぬ、よし級は上にせよ、ものは出来るにせよ、龍華寺さまの若旦那わかだんなにせよ、大黒屋の美登利紙一枚のお世話にも預からぬ物を
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは仕方が無いとあきらめるから、お前は何もないで宜いから唯横町の組だといふ名で、威張つてさへくれると豪気がうぎ人気じんきがつくからね、己れはこんな無学漢わからずやだのにお前はものが出来るからね
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そうじゃないか、彼女あれは立派な役者ものだ。男だったら、おれの相手だがと、だから、高田先生せんせいに言ったんだ。」
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
緞帳どんちょう芝居——小芝居へ落ちていた役者ものは、大劇場出身者で、名題役者なだいやくしゃでも、帰り新参となって三階の相中部屋あいちゅうべやに入れこみで鏡台を並べさせ、相中並の役を与え、たしか三場処ほど謹慎しなければ
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「一山三塔さんとうものへは慈円より、あらためて道理ことわりを明白に申し伝うびょう候と。——わかったか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それでは、まだ童形どうぎょうでご修行あるはずの法規おきてでございます。古来からの山門の伝習をお破りあそばしては、恐れながら、一山のものが、不法を鳴らして、うるそう騒ぎはいたしませぬか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてそれには財産がきたらその中から、相当のものをやって追っ払うのが一番いい。そういうことにしましょうとお高は決心した。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その結果、若松屋惣七から相当のものを託された金飛脚が、掛川宿へ駈けつけたのだがそのときは、それやこれやを苦に病んで、つまり、どっちかといえば、気の小さな男だったのだろう。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところが一切の万物ものは、もちつもたれつの存在であるばかりでなく、すべてのものは、ちょうどかわの水のようにつねに流れているのです。動いているのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
加之それに段々、予期していたことが、実際とは違って来るのに、気が付くに連れて、世の中の事物ものが、何も彼も大抵興が醒めたような心持がする。——昨夕ゆうべのお宮が丁度それだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「これこれ若者、馬鹿なことを申せ、いずれお前は旅の人間ものでこの土地の様子を知らぬからこそさような太平楽も申しておれ、恐ろしいこの土地の話を聞いたら恐らく身顫みぶるいするであろうぞ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今は成り果てて仕舞ひました、何だだと取られるものは多くなる、れる作物ものに変りは無い、其れで山へも入ることがならねい、草も迂濶うつかりることがならねい、小児こどもは学校へらにやならねい
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
もともとお蔵屋敷のものといえば、武士であってなかば町人のような、金づかいのきれいな物毎ものごとに行きわたった世れた人が選まれ、金座、銀座
うもさう一時いちどきまとめてかれるとわからぬね、このぷくつゐぢくおれ祖父そふ拝領はいりやうをしたものぢやがね、かまなにかはみなおれが買つたんだ、しか貴様きさま見込みこみくらゐものがあるぢやらう、此四品このよしなで。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
大概堀切に居らっしゃると思いやしたから、一緒に連れて来たんで、三百両ぐらいの価格ものは有るんだが、即金ならば百両でもいというんですが、それが三百両とか五百両とかになれば
「それが宜い、俺や信号ものを揚げるぞ。」と磯二は棹の先に手拭をくゝり付けようとすると、平七は慌てて
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
あんな光景ものを見なければよかった。今夜まで何も知らずに寝ていたらドンナにか気楽でよかったろう。明日あすの朝起きてみたら、皆騒いでいる。材木置場おきばで可愛い娘が絞殺しめころされている。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ナニよろしうがす、わたしひとり脊負しよつきます、なるたけ入費ものかゝらぬはうよろしうがすから。「いかえ。金「エヽうがすとも。と早桶はやをけ脊負しよ焼場鑑札やきばかんさつもらつてドン/\焼場やきばまして。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
擦違すれちがった人は、初阪ものの顔を見て皆わらいを含む。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何だか変な動物ものが時々来るよといっておったそうである。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
りてまぐはひして嫡妻むかひめとす。ここにその孃子、常に種種のためものを設けて、恆にそのひこぢに食はしめき。
たかがセルのコートを一枚買うのに、いろいろ番頭の出して見せる品物もの
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
池田 いや、このたびの殿の御乱行には、彼らの中の心あるものは、みな眉をひそめておるのだ。聞こえたとてかまわん。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あたえられたる外物ものにより、またあたえられたるこの肉体の経験を通して、霊智れいちにまですすみゆくべき消息が、このようにして人間生活のあらゆる断面に現われているのは至妙ふしぎである。
たましいの教育 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
家人しもべの群も多くあり、そこに、麗しく珍しき奇観もの多くあれど
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
「北京にゐるやつは、何うも行くのをいやがりましてな。何しろ遠いんですから。向うから来てゐるものでないと、何うしても行かうとは言はないんです?」
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
かりそめにもぬしある人のものから艶書を持って来て返事をやるような文治と心得てるか、なんの為に文治の所へ来て居る、わりゃア畳の上じゃアしねねえから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小六のはだは白かりき。色の黒き婦人ものにては、木戸にるが稀なりとて、さる価をぞ払いしなる。手品師はせんずるに半ば死したる小六の身のそのうつくしくつややかなりし鳩尾きゅうび一斤の肉を買いしなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
笹村は手紙をそこへほうり出して、淋しく笑った。そして「もう自分の子供ものじゃない。」とそう思っている母親をあわれまずにはいられなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
昔の神事に使った極めて古い実物ものだと言って、相当に高く売りつけられたものが、実は極く新しい贋物だったりする。
南島譚:03 雞 (新字新仮名) / 中島敦(著)
野豚でなきやあ、屹度、仔豚か何か、ほかの家畜ものに違えねえ。おらの尻の下でしよつちゆう、何かもぞもぞしてゐよつただから。
無闇にお喋りをしたりせずにはいられなかったような対象ものも、一向面白くもなければ可笑しくもなく、今は平気で見過ごすことができ、固く結んだ私の唇にはただ無関心な沈黙が宿るに過ぎない。
一人の農夫が草鞋穿わらぢばきまゝ、ぐいと『てツぱ』(こつぷ酒)を引掛けて居たが、やがて其男の姿も見えなくなつて、炉辺ろばたは唯二人の専有ものとなつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
力を受けても愛を受けなければ、イエスのものとならない。その力はすぐまた失われてしまうのです。
最後の後裔もの現世うつしよにて、未だ曾て類ひなき極悪人たらしめて、彼の重ねる悪業の、一つ一つに先祖さきおやの亡霊どもがひつぎの中で安息を掻き乱され、娑婆では知られぬ苦悩を忍び
しかも、それ位の算盤なら何もわざわざ、印度洋のマン中まで出て来てはじくが必要ものはないのだ。忠兵衛さんじゃあるまいし。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
母子だけしか知らない温かいものこもっているかもしれないと、思うことだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
聴衆は綾之助の名と、綾之助の芸から、すこしでも多く、期待した感興ものを得ようとした。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「それじゃこうしたらどうだろう。お徳の部屋の戸棚とだなの下を明けて当分ともかく彼処あそこへ炭を入れることにしたら。そしてお徳の所有品ものは中の部屋の戸棚とだな整理かたづけて入れたら」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
手拭てぬぐいで汗をく度に肉がげて目に見えて手足が細くなった、それさえ我儘をさしちゃあおきませなんだ、貴女は御全盛のおかげに、と小刀針こがたなばりで自分が使う新造ものにまでかかることを言われながら
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紅蘭こうらんに似るそのまぶたにもいっぱいな春心ものをいわせながらである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空虚な家庭内の淋しき生の悩みなどで神経的な沈鬱な性情に変化していたことは日記や書籍を通じてうかがい知れる、けれども近頃読で居た地袋の新刊書籍ものから測るに
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
「ナニ、一寸面白いものを讀んでたものだつたから……え、如何したの、遊びかい、用事かい?」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
万人の翹望ぎょうぼうする上流階級の特権なるものは皆この悪魔道に関する特権に外ならず。人類の日常祈るところの核心ものは皆、この外道精神の満足に他ならず。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから僕は決して武器などを携帯しないように気をつけています。自分を制しきれなくなってそんな武器ものを振り廻しちゃ大変ですからね、そんなときには僕の意思というものが留守になっています。
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
空なる状態 まことに、因縁より生ずる一切すべてものは、ことごとく空です。空なる状態にあるのです。まさしく「樹を割りてみよ、花のありかを」です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
の様な不都合な漢子ものを置くのは、国体上容易ならぬことと心着きまして、私から教会へ指図して放逐致した次第で御座りまする——承りますれば、彼奴等きやつら平生
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それらの物像もの背後うしろにして、痩せた、身長せいの高い左門が、左手に刀を持ち、その拳を腰の上へあて、右手の拳も腰の上へあて、昆虫むしが飛び足を張ったような形で、落ち着きはらって立っている姿は
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
無論物惜しみをせず女に物資ものをくれてやり得らるるからではあるが、女に損を爲せないと云ふのが永井式やり方である。
永井荷風といふ男 (旧字旧仮名) / 生田葵山(著)
五穀は豊饒ほうじょうだし、塩は増産されるし、風土はよし、物質ものにも、天然にも、余りめぐまれているので、おまえ達、町人初め、百姓も、藩士も、貧困を知らずに少しんびりしすぎておるよ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それで、現物ものはどこに蔵い込んであるのか判っているのか。それがはっきり判っていなけァその芸当は出来ねえぜ」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
珍奇な、天瓜冬の砂糖菓子に小判を潜めて、賄賂まいないを贈る風習だった。天瓜冬の砂糖漬といえば、やるほうにも貰うほうにも、菓子のあいだに相当の現金ものはさめてある、無言の了解があった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
町人のゆらしている煙は西国煙草さいこくたばこらしい。それも阿波あわ煙草や薩摩さつま煙草ではなく中国ものだ——。そんな事を考えたりして、釣糸いとに心はいていないのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、女中に用事もの一つ言いつけるにも、まずかんにんどっせとあやまるように言ってからという登勢の腰の低さには、どんなあらくれも暖簾のれんに腕押しであった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
赤味を失わないで、今にも、糸のように細いしずくを、二人の男女ものへ、したたらせはしまいかと思われた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
喜「お酌をして上げな、大きいもので」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
渡辺の金吾は誠の盗賊ものに成りぬ、やがては明治の何と肩がきのつくべきほど、おそろしがらるゝ身かへりて恐ろしく、此処を離れて知らぬ土地に走らんと思ひたる事もあり
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つけたのサ又此方こなさんも其金はどうやらものした樣だがものした物ならものするは私が商賣ぢやサアきり/\と渡さぬか命までを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
渡邊の金吾は誠の盜賊ものに成りぬ、やがては明治の何と肩がきのつくべきほど、おそろしがらるゝ身かへりて恐ろしく、此處を離れて知らぬ土地に走らんと思ひたる事もあり
琴の音 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おう、これじゃアあんまりだから、小ざっぱりした着物ものとあっちの帯を出してくんねえ。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「こんど、菊五郎と、狂言座という研究劇団ものを組織して、帝劇で、坪内先生の楽劇『浦島』をやらせて頂けるので、浜子さんに、箏を引受けてもらいたいので——」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
縦令たとひ主命とはいひながら、罪なき禽獣ものいたずらにいためんは、快き事にあらず。彼の金眸に比べては、その悪五十歩百歩なり。ここをもて某常よりこの生業なりわいを棄てんと、思ふことしきりなりき。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
今は成り果てて仕舞ひました、何だだと取られるものは多くなる、れる作物ものに変りは無い、其れで山へも入ることがならねい、草も迂濶うつかりることがならねい、小児こどもは学校へらにやならねい
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ずっとふるいところの稿ものには、こんなことも書いてある。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
井沢香央の人々、七四かれにくこれかなしみて、もは七五しるしをもとむれども、七六ものさへ日々にすたりて、よろづにたのみなくぞ見えにけり。
キット相当な純益ものが残ると思いますわ
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから満枝は益す禿のちようを得て、内政を自由にするやうになつたから、定めて生家さとの方へみつぐと思の外、きめものの外は塵葉ちりつぱ一本らん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と、主人の春太郎という、自分も、抱えといっしょに、座しきに出ている三十ぐらいな働き芸妓もの
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嗚呼ああ有情うぜう萬象ものの子よ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ある時はモツァルトのごと苦しみゆ明るき藝術ものを生まばやと思ふ
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
けッ、ふざけやがってよ! 羅真人か糞羅漢くそらかんか知らねえが、オツに取り澄ましゃアがって、教え子も聞いて呆れら。——久米くめの仙人だって赤いものを見りゃ雲から落ッこちたっていうじゃねえか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲谷は山口の家の戸口へ着いたときには、もう、ぼんやりとして立ったまま急に言葉ものをいうことが出来なかった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
始終うちを外の放蕩三昧ほうとうざんまい、あわれなかないを一人残して家事の事などはさら頓着とんじゃくしない、たまに帰宅すれば、言語もののいいざま箸のろしさてはしゃくの仕方がるいとか、琴を弾くのが気にくわぬとか
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
さて、ここに掲げてある本文は要するに、「五うん」によって、作られている諸法ものはみな空である、という、その空のすがたについていったものです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
その心のなかのものを、木彫として現わそうとするだけに過ぎないが、その真摯しんしな狙いどころが、手となり、小刀の先の動きにまでくるあいだに、種々さまざまな雑念が
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花と望みし峯の白雲あとなく消れば、殘るはお蘭さまの御身一つと、痛はしや脊負ふにあまる負債ものもあり、あはれ此處なる邸も他人ひと所有ものと、唯これだけをさとり得ぬ
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
厚さ五分に幅一寸、長さ二寸という大きな貨幣もので、持ち重りするほど重かった。そうして昨日きのう鋳たかのように、ひどくいい色に輝いていた。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何百両とも知れないほどな賄賂ものをばらき、なんとか、お前さんの身を助け出そうとしていなさるんだがいかんせん、相手が総督ときちゃあ、これに立ち向う者はねえ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十両一ト資本もとでと云うが、何様どんな事をしても五十両なければ十分てえ訳にはかねえが、其の上になお三十両も余計な資金ものがあれば、立派にそれで取附けますが、其の金をお前さん取れますか
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
屍体したいの近くに二個所ばかり強く踏みにじってあるのが兇行当時の犯人の足跡ものらしかったが、単に下駄じゃないという事がわかるだけで推定材料にはテンデならない。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うもはなはしやくさはると、家内中うちぢう連中ものがこぼすんです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは腹切り道具ものです。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
できあがったものだって見られたざまぢゃない。どうせにごり酒だから濁ってゐるのはいゝとして酸っぱいのもある、甘いのもある、アイヌや生蕃せいばんにやってもまあご免かうむりませうといふやうなのだ。
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし人の金銭ものに手をかけたのはこれが初めです。
さあ見てくれといわぬばかりに投げ出してあった刀、四本のうち一本ぐらい、筋の通った銘刀ものがあるかと思ったところ、なかったぞ。フ、フ、フッ、揃いも揃って、関の数打ち物ばかりであったよ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そんな大きな鏡餅ものを何にするんだ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
騒ぎにつけこんで、悪いたまや、ものが、うようよとつめかけて来るもので御座ります。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
聖書辞典にると、「悪鬼とは、サタンに追従ついしょうして共に堕落おち霊物ものにして、人をうらみ之を汚さんとする心つよく、其数多し」とある。はなはだ、いやらしいものである。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
馴れない頭巾ものと見えて、うるさそうに、いて丸めて川の中へフワリと捨てた。——ついでに、下からさッとくる風と、頭巾くずれのびんの毛を、黄楊つげ荒歯あらはでざっといて、そのまま横へ差しておく。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当てがわれただけの食事ものでは、ややともすれば不足がちなもの……小体こていの家ではないことだが、奉公人を使う家庭となると、台所のきまりがあって、奉公人の三、四人も使っておれば
「何か言ってんだか! 痩馬だって、骨まで痩せてるわけじゃあるめえし、飼料ものせえちゃんと食わせりゃあ、今にゴムマリのようになっから見てろ。肥えてる馬なんかなら、誰が、買ってくっかえ。面白くもねえ。」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
呑めるんだらう、何しろでかものに違ひない。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)