もの)” の例文
「そちも聞いているはず。幼少から仕えている西華門院せいかもんいんのお内を、情夫おとこゆえに逃げ退いて、女院のお名にまでご迷惑をかけたみだらもの
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若き御連枝はムッとしてそのまま訪問されず、しかも、その人も配偶をむかえてから、かわものはなかったとのたんをもたれたのだから悲しい。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いくらこんなものでも、まさかネ、野宿はできませんからね。どこかに宿をとらなくちゃアならないと思っていたところを
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
色が白いとか恰好が何うだとか言ふて世間の人は暗雲やみくもに褒めたてたもので御座ります、私が如何にも放蕩のらをつくして家へとては寄りつかぬやうに成つたを
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かねちから權威けんゐもつて、見事みごともの祕藏ひざうすべし、ふたゝこれ阿母おふくろ胎内たいないもどすことこそかなはずとも、などかすべのなからんや、いで立處たちどころしるしせう。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
容色きりょうも悪くはなし年だって私とおんなじなら未だいくらだって嫁にいかれるのに、ああやって一生懸命に奉公しているんだからね。全く普通なみものにゃ真似まねが出来ないよ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ゲレンのお艶と言うシタタカものに迷い込みまして、かなりの金を注ぎ込んだあげく後妻に迎えました。
思い乱れて寝られぬままただひとり家をで、思わず知らずぼんやりと最前詣でた明神の境内の方へとまいりますと、坂の半ばでふと行きずりに出逢いましたものがあります。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
元気の好い愛嬌もの女将マダムセレスティンが、一人で切り廻していたのだ。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「かりそめにも、義朝のおももの。乳のみ児すらあるものを、問罪所の牢などにおかず、なぜ侍どもの一部屋なり空けてやらぬか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸ものおぼしき見目うるわしき女子を見初みそめ、この七年間、何ものにも眼をくれず、黄金のみ追い来りし文珠屋佐吉もんじゅやさきち
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一生をモルガンにまかせて、何処ででもはてよう、国籍は、もう日本のものではないのだという覚悟が、はっきりした。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
してお内儀かみさんはと阿関の問へば、御存じで御座りましよ筋向ふの杉田やが娘、色が白いとか恰好かつかうがどうだとか言ふて世間の人は暗雲やみくもに褒めたてたもので御座ります
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ウム、いくらでも急いでやるが、汝、主家のあだばわりをする男の囲いものと醜い不義をしておりながら、侍らしい潔癖を装うのは止めにしろ!」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたしゃ知らずのお絃というやくざもので、まともの口をきくことなんか、名前のとおりにまったく知らずでございますのさ。オヤ、はばかりさま」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
豪儀なことや、というものもあれば、あんなに厭がってたのだから、あてが代っても好いというふうになっていった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
してお内儀かみさんはと阿關おせきへば、御存ごぞんじで御座ござりましよ筋向すぢむかふの杉田すぎたやがむすめいろしろいとか恰好かつかううだとかふて世間せけんひと暗雲やみくもめたてたもの御座ござります
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれど形の上では、もう誰が目にも、お米は啓之助のかこもの、宅助はその番人というていになっているのを否めない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わがままもののお内儀さんという人にも、長いあいだ、したい三昧ざんまいをさせて、ずいぶん眼にあまることまで、見て見ぬふりをなすったのでございますよ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
九女八は、若いもの調戯からかいたがる台助のくせを知っているので、口へは出さないが、腹の中でそう思っている。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そんなものはどうでもいい。捨てておけ、捨てておけ。貴様もまたばか正直に、啓之助を嫌って逃げたかこものを、なんでそう一心に捕まえたがっているのじゃ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お藤はすぐ、おのが恋仇敵ともいうべき左膳の思いもの弥生のことを、われから話題はなしに持ち出したのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで、おかしいのは、母は、なんでそんなに厳しくしたかといえば、出来もしないことにふけって、なま半可なものになるのを、ばかに怖れたのではないかと思う。
「御心配なさらないでもようございます。何もいいはしません。こちらの親類のものだと申し上げました」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やかたのお下婢すえものでもあろうか、今、どこからともなく戻って来て、下部門しもべもんの外にたたずんだ人影がある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女は、昨夜ゆうべ、自分の情夫おとこが他のものと一緒にいたことを耳にして、大変なけんまくで駈けこんで来たのだ。彼女は下駄もはいたままで座敷へ飛込みかねない物凄ものすごい有様だった。
磯五は、駕籠に揺られながら、若いもののようにはゆかないおせい様のからだを思い出して、きたないお勤めが済んだように、駕籠のそとの地面へぺっぺっとつばを吐いた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
悪くしたら、藩の若侍のところへ、品川辺りの化粧のものが人目を忍んで来よったのかも分らん。——お預り中の義士方の手前にも、ちとつつしんでくれんときまりが悪いぞ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹娘の旦那、銀行の頭取りは、事ごとに木場の旦那とは違ったゆきかたで、自分のものにした妹娘の家作かさくに手入れをする、動産、不動産、いずれも消てしまわないものを注ぎ込んだ。
「川長のお米というあばずれもの、エエ、法月さんとは、ずっと前からのお知り合いでネ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「殿、このものはいったい——旅のお慰みとしても、チトどうもお見苦しくは……」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
以前役者の女房にそれしやが必要だつたごとく、姐御てあいもなかなか、粹もあまいも噛みわけた苦勞人でなければおさまらなかつただらうし、男まさりの氣強いものでなければ、無考へな
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
その乗合の混んでいるしとみの蔭にうしろ向きになっている仲間ちゅうげんづれの女が、この間りょうへ手形を貰いに来た森啓之助のかこいものだろうと、新吉は遠くから眺めていたが、自分の居場所は
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして公儀こうぎの眼を逃れて潜行せんこうしているのも、大体はさっき壁辰に話した通り、大迫玄蕃以下十六人の首をねらうためではあるが、一つには、あの園絵というものがあるばっかりに、自分はいま
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……四男の右門うもん義春は現に……わしらとは腹ちがい、父のおもものの子ではないか
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をいわれる。誰が兄貴を、男めかけにするものがあります。」一角は、とうとう笑い出して、「犬、猫などと、見下げたようなことをおっしゃるが、兄貴は、それこそ犬、猫のごとくに——。」
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは足利殿のおもものとも見えない狂女のまなじりだった。世の姫君そだちの女性とは根本からちがっている。たとえば、走るにしても、気のちがッた白鷺しらさぎなぎさに何かを探し廻るような迅さであった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことによったらという疑念をもって、銭湯をねらってみたが、まさか、自分も裸になって、湯気の中のものを一人一人あらためてみることもできないので、何か、番台のおやじに吹っかけている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、このものが、たしかに弦之丞の居所を存じていると申すのじゃな」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(浮気ものめ。もう、てめえなどの甘手にのるか。てめえのためには……)
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たえず旦那という者の眼を怖れるかこものには、ありがちな行いです
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしこのおばさんはただものではない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)