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阿關
涙は
各自に
分て
泣かうぞと
因果を
含めてこれも
目を
拭ふに、
阿關はわつと
泣いて
夫れでは
離縁をといふたも
我まゝで
御座りました
いや
阿關こう
言ふと
父が
無慈悲で
汲取つて
呉れぬのと
思ふか
知らぬが
決して
御前を
叱かるではない、
身分が
釣合はねば
思ふ
事も
自然違ふて
あゝ
宜く
私を
高坂の
録之助と
覺えて
居て
下さりました、
辱なう
御座りますと
下を
向くに、
阿關はさめ/″\として
誰れも
憂き
世に
一人と
思ふて
下さるな。