『野槌の百（のづちのひゃく）』

チチ、チチ、と沢千禽の声に、春はまだ、峠はまだ、寒かった。木の芽頃の疎林にすいて見える山々の襞には、あざやかに雪の斑が白い。 「あなた。——あなた」 お稲は、力なく、前に行く人をよんだ。 かの女の十間ほど前を、三五兵衛は黙々と、あるいて行く …

著者	吉川英治
ジャンル	文学 > 日本文学 > 小説 物語
初出	「週刊朝日　夏季特別号」1932（昭和7）年6月1日
文字種別	新字新仮名
読書目安時間	約53分（500文字/分）
朗読目安時間	約1時間28分（300文字/分）

作品に特徴的な語句

生（で） 女子（こ） 妾（もの） 禿（ぱげ） 掠奪（よこど） 人（と） 拝（あわ） 病臥（ふせ） 留（とめ） 上（あ） 剥（めく） 曳（ぴ） 奪（だく） 満（まる） 交（ま） 眼（まな） 知己（しるべ） 確（たし） 坊（ぼ） 鍛（うち） 鉄（がね） 鳥目（とりめ） 刀（もの） 戦（そよ） 誘（おび） 爽々（せいせい） 布（ぬの） 返（けえ） 大刀（どす） 奪（た） 宥（いたわ） 潜（もぐ） 的（あて） 掌（て） 落（おと） 拗（すね） 葬（ほうむ） 蓄（た） 胤（だね） 斑（ふ） 戸（ど） 斬（や） 情婦（おんな） 縞（じま） 紛失（なく） 帰（けえ） 殺（や） 競（せ） 小稲（こいね） 宿（しゅく） 容貌（きりょう） 嫉妬（やきもち） 錆（さ） 妓（おんな） 鍛（う） 稀（たま） 鬱々（くさくさ） 男女（ふたり） 入札（にゅうさつ） 冗戯（からかい） 破滅（はめ） 父親（てておや） 咽（む） 騙（かた） 馬沓（うまぐつ） 香（にお） 面（つら） 飯焚（めした） 音（おと） 縫（ぬ） 襞（ひだ） 茨（いばら） 相（そう） 相槌（あいづち） 苦悶（くもん） 芒（すすき） 芋坂（いもざか） 眉間（みけん） 聟（むこ） 老女（としより） 老先（おいさき） 神楽（かぐら） 竈（かまど） 立（た） 稼（かせ） 竦（すく） 端（はし） 秩父（ちちぶ） 福生（ふっさ） 禍（わざわい） 策（て） 石神（いしがみ） 睫毛（まつげ） 繋（つな） 空身（からみ） 縒（よ） 紛（まぎ） 糧（かて） 羽村（はむら） 紺碧（こんぺき）