もの)” の例文
二人のお婆さんはそれまで何一つものをいうでなかった。だが、温かな親しさと、幼ない桃色の上気と、軽るい好奇心と何かの反射的亢奮とが彼女たちに見えた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
拔放し喜内が寢たる上に打跨うちまたがものをも云ずつかとほれと咽喉のどもと刺貫さしとほせば喜内はアツと聲を立しが元來物に動ぜぬ人なれば心を鎭めて考ふるにのどに貫きし刀の刄右の方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
君は安らかにものをいふ、それもよい。なだらかに説く、それもよい。然し兎もすると、今の君の言葉は流れ過ぎる。詩が散文でない限りより一層のリズムの純化を私は君に欲する。切に切に祈る。
愛の詩集:03 愛の詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
玉枝さんのものを云ふことは誠に珍らしいことであつた。
「何ですね。もっと静かにものをお言いなさいな」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
思い出はものもなく私のまえに
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上て引せけるに曲者はこゝぞと思ひ滑々ずる/\と引出す處を半四郎は寢返ねがへりをする體にて曲者のくび股間またぐらはさみ足をからみて締付しめつけけるに大力だいりき無雙ぶさうの後藤にしめ付られて曲者はものを云事もかなはずたゞ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
君は安らかにものをいふ、それもよい。なだらかに説く、それもよい。然し兎もすると、今の君の言葉は流れ過ぎる。詩が散文でない限りより一層のリズムの純化を私は君に欲する。切に切に祈る。
この安はようもの
ものいはず群れゐ木を挽く毛ごろものくりの頭巾の日の光はや
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
竹煮草ふふめばこほし我と子とほのけくものを云ひつつ通る
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さあれ今ものいはぬけもの忍びやかにきぞぬる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
足音あのとのす、ものいはぬけものしのびかにひきかへすらし。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕暮ゆふぐれものもなき修道女しうだうめの長き一列ひとつら
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ものいはず、かうべもあげず
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)