もの)” の例文
お喜代は、なぜなのか、その手を急にぎ離したくなった。ふだん何とも思っていない露八が、恋しくなって、かこわれものの身がしみじみといやになった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「不貞? ——そうかな。お稲はもと、甲府のやなぎ町へ、江戸から流れて来た旅芸者、それを鮎川の親分仁介が、根びきをした持ちものだと——おれは聞いたが」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やんごとなき宮すじの姫が六条の妓家ぎかに養われていたり、また、元は院ノ少将なにがしのおもものが、今は夜ごと武者のしゃくに出て、無残にむしられているなどの例も
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)