もの)” の例文
生命いのち一つを繋ぎ兼ねるものがごろごろ幾何いくらあるか知れない、悪いことをした罰では決してない、天災というものは、例えば貴下のような正直ものでも用捨なくひきさらうのだから
厄払い (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
田舎ものの愚直を丸出しにして、返事によってはただではおかぬと詰めよる。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
挨拶は済ましたが、咄嗟とっさのその早さに、でっぷりものと女は、きもの引掛ひっかける間もなかったろう……あの裸体はだかのまま、井戸の前を、青すすきに、白くれて、人の姿のあやしいちょうに似て、すっと出た。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
轎の中はひっそりとしていて、何人たれも乗っていそうにないし、見ているものもないので、轎の傍へ寄って往ってれをあげた。垂れをあげて農夫は驚いた。轎の中にはお姫さまのようなきれいな女がいた。
棄轎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼は*愚ならず、思慮缺かず、斷じて惡きものならず
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ステッキ掻寄かきよせようとするが、すべる。——がさがさとっていると、目の下の枝折戸しおりどから——こんなところに出入口があったかと思う——葎戸むぐらどの扉を明けて、円々まるまると肥った、でっぷりもの仰向あおむいて出た。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)