“物象”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ぶっしょう38.5%
もの30.8%
もののかたち15.4%
ぶつしやう7.7%
ものかたち7.7%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
とかく物象ぶっしょうにのみ使役せらるる俗人は、五感の刺激以外に何等の活動もないので、他を評価するのでも形骸以外にわたらんのは厄介である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
祖父は根かぎり眼をみはつてゐたが、呪はしい睡魔が、執念く彼の眼の前の物象ものを曇らせてしまつた。
海の底かのように、庭は薄蒼く月光に浸っていた。庭は、まことに広く、荒廃れていた。庭の一所に、頼母の眼を疑がわせるような、物象もののかたちが出来ていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これが、此の廢殘はいざんさかひにのさばつてもつとも人の目を刺戟しげきする物象ぶつしやうだ………何うしたのか、此の樹のこずえあかいと一筋ひとすじからむで、スーツと大地だいちに落ちかゝツて、フラ/\やはらかい風にゆらいでゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
私はその中をひとり狂気のようになって歩いていた。そして山吹町の中ほどにある、とある薪屋まきやのところまでもどって来ると、何というわけもなくはじめてそばにある物象ものかたちが眼につくようになって来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)