物象もののかたち)” の例文
海の底かのように、庭は薄蒼く月光に浸っていた。庭は、まことに広く、荒廃れていた。庭の一所に、頼母の眼を疑がわせるような、物象もののかたちが出来ていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
月は澄みきった空に漂い、その光は物象もののかたちを清く蒼白く、神々しい姿に照らしていた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おお何んたる奇怪な物象もののかたちが現われて来たことであろう! いざり車が、耳の下まで白髪を垂らした老人を乗せ——老人が自分でいで、忽然と、植え込みの前へ、出て来たではないか! やがて
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)