“ものう”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
56.1%
物憂22.6%
8.4%
物懶6.8%
物倦1.7%
1.0%
物売1.0%
0.7%
物惰0.7%
倦怠0.3%
物疎0.3%
物鬱0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
わたくしやうやくほつとしたこころもちになつて、卷煙草まきたばこをつけながら、はじめものうまぶたをあげて、まへせきこしおろしてゐた小娘こむすめかほを一べつした。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その一寸いっすんのばしが、目覚めざまし時計の音を聞いてから、温かい蒲団ふとんの中にもぐっているように、何とも云えず物憂ものうく、こころよかった。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
筆を執りて文を草することも出来しなり、されどこのごろは筆を執るもものうくてただおもひくづをれてのみくらす、誠にはかなきことにこそあれ。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
犬は宏子を見ると、寝そべったまま、房毛の重い尻尾を物懶ものうそうにふった。その途端女中部屋から、声をあわせて笑声が爆発した。
雑沓 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そう促して、共に箸を手にしたのであったが、青年は至って物倦ものうげな様子で、その貴族的な顔に疲れの色を浮べ、ほとんど食わないと云っていい位少食だった。
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
成程さう思つて見ると、うかしてゐるらしくもある。色光沢いろつやくない。眼尻めじりに堪へ難いものうさが見える。三四郎は此活人画から受ける安慰の念をうしなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まだ朝霞あさがすみがたちこめているので、おおかた薪拾まきひろいの小僧こぞうか、物売ものうりだろうくらいに思っていた蛾次郎は、だんだん近づいて見てびっくりした。どうも、それは鞍馬くらま竹童ちくどうらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われは只管ひたすらに恍惚として夢の中なる夢の醒めたる心地となり、何事も手に附かず、夕餉ゆふげの支度するもものうく、方丈の中央まんなか仰向あふのきにね伸びて、眠るともなく醒むるとも無くて在りしが、さて
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寒気のために五臓まで締めつけられたような君たちは口をきくのさえ物惰ものうくてできない。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
男女の朝鮮人の農民が、ぼんやり集まって、倦怠ものうそうに路上に立ったりしゃがんだりしている。みな朝鮮服で、長煙管ながぎせるをふかしている者、洋傘こうもりをさしているものもある。
たゞ折々をり/\きこゆるものは豌豆ゑんどうさやあつい日にはじけてまめおとか、草間くさまいづみ私語さゝやくやうな音、それでなくばあきとり繁茂しげみなか物疎ものうさうに羽搏はゞたきをする羽音はおとばかり。熟過つえすぎ無花果いちじくがぼたりと落ちる。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「しかし」と小一郎はやや物鬱ものうく、「競争になるかも知れませんなあ」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)