物倦ものう)” の例文
私は物倦ものうげに立ち上って、部屋の外の、扉の横にあるスウィッチを、半開きにした扉から手をのばして、パチリとひねった。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
そう促して、共に箸を手にしたのであったが、青年は至って物倦ものうげな様子で、その貴族的な顔に疲れの色を浮べ、ほとんど食わないと云っていい位少食だった。
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
阿賀妻はそのままの恰好かっこうでうすくまぶたをあけたが、すぐにまた、いかにも物倦ものうげにしわりとそれを閉じた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
物倦ものうく着物の前を合せて、それからひそかに姉や兄やまた母親の姿をさけて、茶の間に行った。
咲いてゆく花 (新字新仮名) / 素木しづ(著)
すると他の選手たちは命令によって動くという意識なしに、窪田の思い通りにそれに従い初めた。窪田の物倦ものうげに垂れた眼瞼の奥には、勝利をはらむ幾多の画策が黙々としてかくされてあった。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
「動物園払下げ?」これはうれしいとビラにかれて入る客もあるのだろうが、——あるから、そんなビラを誇示しているのだろうが、私は、動物園の狭いおりのなかで物倦ものうげに
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)