ものう)” の例文
律詩の前聯に「逢迎到処忘為客。得失従来嬾問天。」〔逢迎到ル処客ルヲ忘レ/得失従来ヨリ天ニ問フニものうシ〕と言っているのを見れば
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
成程さう思つて見ると、うかしてゐるらしくもある。色光沢いろつやくない。眼尻めじりに堪へ難いものうさが見える。三四郎は此活人画から受ける安慰の念をうしなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何所どこきて、何所どこくもが始まるかわからない程にものううへを、心持こゝろもちな色がふうと一面にかゝつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎は此表情のうちにものうい憂鬱と、かくさゞる快活との統一を見出した。其統一の感じは三四郎に取つて、最も尊き人生の一片である。さうして一大発見である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またたくもものうき空の中にどろんと溶けて行こうとする。過去はこの眠れる奥から動き出す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)