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慵
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ものう
ふりがな文庫
“
慵
(
ものう
)” の例文
しかし五六日もいると、この生活もやがて
慵
(
ものう
)
くなって来た。
可憐
(
かれん
)
な暴君である葉子のとげとげしい神経に触れることも
厭
(
いと
)
わしかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
筆を執りて文を草することも出来しなり、されどこのごろは筆を執るも
慵
(
ものう
)
くてただおもひくづをれてのみくらす、誠にはかなきことにこそあれ。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
私はいつかとろんとした、
慵
(
ものう
)
げな眼を見張って、賑かな、明るい往来の、種々雑多な音響と光線の動揺を凝視して居た。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
仕掛
流
(
ながれ
)
の末には
杜若
(
かきつばた
)
など咲き
躑躅
(
つゝぢ
)
盛りなりわづかの處なれど風景よし
笠翁
(
りつをう
)
の詩に山民
習得
(
ならひえ
)
て一身
慵
(
ものう
)
し
間
(
かん
)
に
茅龕
(
ばうがん
)
に臥し
倦
(
うみ
)
て松に
倚
(
よ
)
る
却
(
かへつ
)
て
辛勤
(
しんきん
)
を
把
(
とつ
)
て
澗水
(
かんすゐ
)
に
貽
(
おく
)
る曉夜を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
彼は
実
(
げ
)
に夢ならでは有得べからざる
怪
(
あやし
)
き夢に
弄
(
もてあそ
)
ばれて、
躬
(
みづから
)
も夢と知り、夢と覚さんとしつつ、なほ
睡
(
ねむり
)
の中に
囚
(
とらは
)
れしを、
端無
(
はしな
)
く人の呼ぶに
駭
(
おどろか
)
されて、
漸
(
やうや
)
く
慵
(
ものう
)
き枕を
欹
(
そばだ
)
てつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
そうしてその倦怠の
慵
(
ものう
)
い気分に支配されながら、自己を幸福と評価する事だけは忘れなかった。倦怠は彼らの意識に眠のような幕を掛けて、二人の愛をうっとり
霞
(
かす
)
ます事はあった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
明るく暮れて行く静かな空に反響する子供達の歌声が、
慵
(
ものう
)
く夢のやうに聞えた。
奥間巡査
(新字旧仮名)
/
池宮城積宝
(著)
女が
慵
(
ものう
)
い声で訊くと、若い男は懐中時計を出してちょっと考えて
ペルゴレーズ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
雖
レ
佳慵
レ
命
レ
駕
佳
(
よ
)
しと
雖
(
いえど
)
も
駕
(
が
)
を
命
(
めい
)
ずるに
慵
(
ものう
)
し
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
光
透入
(
すきい
)
る水かげに
慵
(
ものう
)
げなりや、もとほりぬ。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
善
(
よ
)
し
悪
(
あ
)
しを
云
(
い
)
ふも
慵
(
ものう
)
し
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
黄牛
(
あめうし
)
は声も
慵
(
ものう
)
く
坂
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
もう長いあいだ二十年も三十年もの前から慢性の神経衰弱に
憑
(
つ
)
かれていて、外へ出ても、街の雑音が地獄の底から来るように
慵
(
ものう
)
く聞こえ
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は前の晩に名古屋に一泊し、明くる朝京都へ向つたのであつたが、汽車の中から雨がしと/\降り続いて、いかにも
慵
(
ものう
)
い、鬱陶しい日であつた。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
宮はその身の上の日毎輝き
勝
(
まさ
)
るままに、いよいよ意中の人と
私
(
わたくし
)
すべき陰無くなりゆくを見て、
愈
(
いよい
)
よ楽まざる心は、
夫
(
つま
)
の愛を承くるに
慵
(
ものう
)
くて、
唯
(
ただ
)
機械の如く
事
(
つか
)
ふるに過ぎざりしも
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何も
為
(
す
)
るのが
慵
(
ものう
)
いと云うのとは違って、何か
為
(
し
)
なくてはいられない頭の状態であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
光
透入
(
すきい
)
る水かげに
慵
(
ものう
)
げなりや、もとほりぬ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
始終遊びつけた家では、相手の女が二月も以前にそこを出て、
根岸
(
ねぎし
)
の方に世帯を持っていた。笹村はがらんとしたその
楼
(
うち
)
の
段梯子
(
だんばしご
)
を踏むのが
慵
(
ものう
)
げであった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
両岸の春に酔ったような
慵
(
ものう
)
げなぬるま水を、きら/\日に光らせながら、吾妻橋の下へ出て行きます。
幇間
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何
(
なに
)
も
為
(
す
)
るのが
慵
(
ものう
)
いと云ふのとは
違
(
ちが
)
つて、
何
(
なに
)
か
為
(
し
)
なくてはゐられない
頭
(
あたま
)
の状態であつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
必
(
かならず
)
しも
力
(
つと
)
むるとにはあらねど、夫の前には
自
(
おのづか
)
ら気の張ありて、とにかくにさるべくは振舞へど
恣
(
ほしいま
)
まなる
身一箇
(
みひとつ
)
となれば、
遽
(
にはか
)
に
慵
(
ものう
)
く
打労
(
うちつか
)
れて、心は整へん
術
(
すべ
)
も知らず
紊
(
みだ
)
れに乱るるが常なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
肉置
(
しゝおき
)
厚き
喉袋
(
のどぶくろ
)
、
涎
(
よだれ
)
に濡らす
慵
(
ものう
)
げさ
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
女の
弁
(
しゃべ
)
ったりしたりすることを見ていると、暗いその部屋を起つのが億劫なほど、心も体も一種の
慵
(
ものう
)
い安易に侵されるのであったが、やはりいらいらした何物かに苦しめられていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と覚えず
濁声
(
だみごえ
)
を挙げた。するとリヽーはやう/\それが聞えたのか、どんよりとした
慵
(
ものう
)
げな瞳を開けて、庄造の方へひどく無愛想な一瞥を投げたが、たゞそれだけで、何の感動も示さなかつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼等
(
かれら
)
は
此
(
この
)
抱合
(
はうがふ
)
の
中
(
うち
)
に、
尋常
(
じんじやう
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
に
見出
(
みいだ
)
し
難
(
がた
)
い
親和
(
しんわ
)
と
飽滿
(
はうまん
)
と、それに
伴
(
とも
)
なう
倦怠
(
けんたい
)
とを
兼
(
か
)
ね
具
(
そな
)
へてゐた。さうして
其
(
その
)
倦怠
(
けんたい
)
の
慵
(
ものう
)
い
氣分
(
きぶん
)
に
支配
(
しはい
)
されながら、
自己
(
じこ
)
を
幸福
(
かうふく
)
と
評價
(
ひやうか
)
する
事
(
こと
)
丈
(
だけ
)
は
忘
(
わす
)
れなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
肉置
(
ししおき
)
厚き
喉袋
(
のどぶくろ
)
、
涎
(
よだれ
)
に
濡
(
ぬ
)
らす
慵
(
ものう
)
げさ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
今まで赤々していた
夕陽
(
ゆうひ
)
がかげって、
野面
(
のづら
)
からは寒い風が吹き、方々の木立や、木立の蔭の人家、黄色い
懸稲
(
かけいね
)
、
黝
(
くろ
)
い畑などが、一様に
夕濛靄
(
ゆうもや
)
に
裹
(
つつ
)
まれて、一日
苦使
(
こきつか
)
われて疲れた
体
(
からだ
)
を
慵
(
ものう
)
げに
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と覚えず
濁声
(
だみごえ
)
を挙げた。するとリヽーはやう/\それが聞えたのか、どんよりとした
慵
(
ものう
)
げな瞳を開けて、庄造の方へひどく無愛想な
一瞥
(
いちべつ
)
を投げたが、たゞそれだけで、何の感動も示さなかつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今朝
(
けさ
)
見ると彼女の眼にどこといって
浪漫的
(
ロマンてき
)
な光は射していなかった。ただ寝の足りない
眶
(
まぶち
)
が急に
爽
(
さわや
)
かな光に照らされて、それに抵抗するのがいかにも
慵
(
ものう
)
いと云ったような一種の
倦怠
(
けた
)
るさが見えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と覚えず
濁声
(
だみごえ
)
を挙げた。するとリリーはようようそれが聞えたのか、どんよりとした
慵
(
ものう
)
げな
瞳
(
ひとみ
)
を開けて、庄造の方へひどく無愛想な
一瞥
(
いちべつ
)
を投げたが、ただそれだけで、何の感動も示さなかった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何時ごろであったろうか、病人のように
慵
(
ものう
)
い神経が、ふと電話のベルに飛びあがった。りんりんと続けさまに鳴ったが、ボオイたちもすっかり寝込んでいると見えて、誰も出て行くものがなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
兄はかすかに「うん」と云って
慵
(
ものう
)
げに承諾の意を示した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「熱情ですつて。それあ
然
(
さ
)
ういふ人もあるわね。少し親切にすると、すぐ
上
(
かみ
)
さんにならないかなんて言ふ人があるわ。だけれど其もこゝにゐるからこそ然うなんだよ。出てしまつちや、やつぱり駄目さ。」彼女は
慵
(
ものう
)
げな声で言つて
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
慵
漢検1級
部首:⼼
14画
“慵”を含む語句
慵斎
慵鬟高髻緑婆娑