感興の逸せぬうちにと刻まれた作品で、稍まだかたい實の青さに、赤みを交へ、もぎつた枝あとの、青い葉の影には、金色の小蜘蛛がかくれてゐる。
劇作もなまけ、なんの見て頂くような作品も出来なかったので、先生を訪問することも大いに怠っていたが、去年からひそかなもくろみを心のなかで成長させていた。
日本一の桃太郎は、桃の中から生れたといふ、それにもまさるめでたき作品を、生めよといふ祝言がはりに、ふとしも、こんな、蕪雜なものを書いてしまつた。多謝!
あまりに強くそれを現はしすぎた作品だとは思つたが、不思議と心をひかれてゐる。さうした表現のよしあしはとにかくとして、なにか、桃と人と傳説とを見つめてゐるものを受けとつたのだつた。