放浪記(初出)ほうろうき(しょしゅつ)
十月×日 一尺四方の四角な天窓を眺めて、始めて紫色に澄んだ空を見た。 秋が来たんだ。コック部屋で御飯を食べながら私は遠い田舎の秋をどんなにか恋しく懐しく思った。 秋はいゝな……。 今日も一人の女が来た。マシマロのように白っぽい一寸面白そうな …