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彼方
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かなた
ふりがな文庫
“
彼方
(
かなた
)” の例文
鯨の屍骸は、狂おしく
迅
(
はや
)
い潮流に乗って、矢のように走り出したのだ。しかも、その方向は、はるか
彼方
(
かなた
)
に浮ぶ氷山を目指している。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
中空
(
ちゅうくう
)
には大なる
暈
(
かさ
)
戴
(
いただ
)
きし
黄
(
きいろ
)
き月を仰ぎ、低く地平線に接しては煙の如き横雲を漂はしたる
田圃
(
たんぼ
)
を越え、
彼方
(
かなた
)
遥かに
廓
(
くるわ
)
の屋根を望む処。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「ここの
山際
(
やまぎわ
)
から、
彼方
(
かなた
)
、石井山の
蛙
(
かわず
)
ヶ
鼻
(
はな
)
の下まで、筑前が馬を走らすゆえ、その馬蹄のあとを、築堤の縄とりとせい。よろしいか」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
海を圧する歓呼と万歳声裡に
船橋塔
(
フォアキャッスル
)
の
彼方
(
かなた
)
、
檣
(
マスト
)
に高く
英国旗
(
ユニオンジャック
)
を
靡
(
なび
)
かせたイキトス号はいよいよ巨体を揺すぶって埠頭を離れ始めたが
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
彼方
(
かなた
)
の
山背
(
やまかげ
)
からぞろ/\と
現
(
あら
)
はれて
來
(
き
)
たが、
我
(
わ
)
が
鐵車
(
てつしや
)
を
見
(
み
)
るや
否
(
いな
)
や
非常
(
ひじやう
)
に
驚愕
(
おどろ
)
いて、
奇聲
(
きせい
)
を
放
(
はな
)
つて、
向
(
むか
)
ふの
深林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
へと
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
「誰?」と言いかけて走り出で、障子の
隙間
(
すきま
)
より
戸外
(
おもて
)
を見しが、彼は早や町の
彼方
(
かなた
)
に
行
(
ゆ
)
く、その後姿は、隣なる広岡の家の
下婢
(
かひ
)
なりき。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
即ち坂を
彼方
(
かなた
)
に下り尽せば
其処
(
そこ
)
にはダージリンという都市があって、夏も甚だ涼しく
印度
(
インド
)
の大官連の避暑地となっている所である。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
進みましょう、前へ! 僕らは、はるか
彼方
(
かなた
)
に輝いている明るい星をめざして、まっしぐらに進むのだ! 前へ! おくれるな、友よ!
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
こう云う弦四郎は眼を走らせて、遥かの
彼方
(
かなた
)
に森林に蔽われ、頂きだけを出している、洞窟のある岩の山を、意味ありげに眺めやった。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なるほど、借用のお芝居の衣裳道具が入れてあったに相違なく、その
蓋
(
ふた
)
が、遥か
彼方
(
かなた
)
にけし飛んで、中身が無残にはみ出している。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼方
(
かなた
)
には冠を
戴
(
いただ
)
ける大司教があり、はるか高くには太陽のごとく輝いたる中に、帝冠を戴きまぶしきまでに輝いてる皇帝があった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
我かならず
三二
万歳を
諷
(
うた
)
ふべしと、
往
(
い
)
きて香央に説けば、
彼方
(
かなた
)
にもよろこびつつ、妻なるものにもかたらふに、妻もいさみていふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
彼方
(
かなた
)
の床の間の
鴨居
(
かもい
)
には
天津
(
てんしん
)
の
肋骨
(
ろっこつ
)
が万年傘に代へてところの
紳董
(
しんとう
)
どもより贈られたりといふ
樺色
(
かばいろ
)
の旗二流おくり来しを掛け
垂
(
たら
)
したる
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
流れの
彼方
(
かなた
)
には、ルーヴル美術館の
厳
(
おごそ
)
かな正面が広げられていて、その退屈そうな小窓には、
夕陽
(
ゆうひ
)
が生々とした残照を投げていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
代表的なレコードは、今は市場にないが『ノルマ』の「山の
彼方
(
かなた
)
は」(八一五八)、『ファウスト』の「
黄金
(
こがね
)
の
犢
(
こうし
)
」などであったろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
幾重にも
突兀
(
とっこつ
)
した山々のため、指ざす
彼方
(
かなた
)
は
模糊
(
もこ
)
とした想像であり、語って聞かされた状景はなかなか実感となって浮ばなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
やがて、彼は、
拳
(
こぶし
)
を握り固め、闇の
彼方
(
かなた
)
に、うとうとと眠りかけた村のほうへ、それを振ってみせる。そして、
大袈裟
(
おおげさ
)
な調子で叫ぶ——
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
締直
(
しめなほ
)
し支度をして行んとする故
彼方
(
かなた
)
に居る雲助共は
大聲
(
おほごゑ
)
揚
(
あげ
)
ヤイ/\
能
(
よく
)
そんな事で
行
(
いけ
)
る者か何でも乘て
貰
(
もら
)
へ/\今時
生若
(
なまわか
)
い者が大金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
老婆は大きな眼鏡をかけて冬の仕事に取かかって
襤褸
(
つづれ
)
を
縫
(
ぬっ
)
ている……鳥籠の上に
彼方
(
かなた
)
の
家根
(
やね
)
の上から射し下す日は
温
(
あたた
)
かに落ちて
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
野母
(
のも
)
半島の
彼方
(
かなた
)
には、玄界灘が
果
(
はて
)
しもなく、別にまた橘湾と玄海を結びつける天草灘があり、大小の天草列島が、その間に
星散碁布
(
せいさんきふ
)
する。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
縁側から見渡せば、一めんに崩れ落ちた家屋の
塊
(
かたまり
)
があり、やや
彼方
(
かなた
)
の鉄筋コンクリートの建物が残っているほか、目標になるものも無い。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
大江山課長は双眼鏡を借りて指さされた
遥
(
はる
)
か
彼方
(
かなた
)
の海上を見た。なるほど水上署の旗を
翻
(
ひるがえ
)
した一艘の汽艇が矢のように沖合を逃げてゆく。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
静かな日の影はうらうらと向う岸の人家に照り
映
(
は
)
えて、その屋並の
彼方
(
かなた
)
に見える東山はいつまでも静かな朝霧に
籠
(
こ
)
められている。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
神谷の言葉に
彼方
(
かなた
)
を
眺
(
なが
)
めると、いかにも、森の中の怪屋のあたりとおぼしく、一団の
火焔
(
かえん
)
が、大きな
狐火
(
きつねび
)
のようにメラメラと燃えている。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして、宮様は一瞬にして雲の
彼方
(
かなた
)
に消えてゆく人である。どうして、そのような人を尊敬しなければ生きてゆけないのだろう。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その一はイリのイリにおけるごとく他の一の光をうけて返すと見え、第三なるは
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
より等しく吐かるゝ火に似たり 一一八—一二〇
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
池の
彼方
(
かなた
)
が芝生の築山、築山の真上に姿優しい姫神山が浮んで空には
断
(
ちぎ
)
れ/\の白雲が流れた。——それが
開放
(
あけはな
)
した東向の縁側から見える。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
從つて、ヘイの
彼方
(
かなた
)
の共有地にこの頃張られたジプシイの
天幕
(
テント
)
を見に散歩しようと云ひ出してゐたのも延期になつてしまつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
北の方に湖の尽きているその
彼方
(
かなた
)
は瑞西の首都
Zürich
(
チュリヒ
)
であって、ゆうべまでそこの旅舎に
宿
(
とま
)
っていたのであった。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
わが腰を休めたる石の
彼方
(
かなた
)
には、山より集り落つる清水の
筧
(
かけひ
)
ありて、わが久しく物を思へる間、
幾人
(
いくたり
)
の
少女
(
をとめ
)
來りて、その水を汲みては歸りし。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
川水は荒神橋の下手で
簾
(
すだれ
)
のようになって落ちている。夏草の茂った
中洲
(
なかす
)
の
彼方
(
かなた
)
で、浅瀬は輝きながらサラサラ鳴っていた。
鶺鴒
(
せきれい
)
が飛んでいた。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ホールの庭には
桐
(
きり
)
の木が
生
(
は
)
え、落葉が地面に散らばつて居た。その
板塀
(
いたべい
)
で囲まれた庭の
彼方
(
かなた
)
、倉庫の並ぶ
空地
(
あきち
)
の前を、黒い人影が通つて行く。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
船が伊東の海岸を離れる頃は、大島が
幽
(
かす
)
かに見えた。その日は、
往
(
ゆき
)
の時と違って、海上一面に水蒸気が多かった。水平線の
彼方
(
かなた
)
は白く光った。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
但馬守
(
たじまのかみ
)
は
懷
(
なつ
)
かしさうに
言
(
い
)
つて、
築山
(
つきやま
)
の
彼方
(
かなた
)
に、
少
(
すこ
)
しばかり
現
(
あら
)
はれてゐる
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めた。
紀
(
こつな
)
も
身體
(
からだ
)
がぞく/\するほど
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
を
慕
(
した
)
はしく
思
(
おも
)
つた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
海の
彼方
(
かなた
)
に、薄茶色に煙りながら、桜島岳が荒涼としてそそり立った。あの
麓
(
ふもと
)
に行くのだと思った。皆、黙ってあるいた。衣嚢が肩に重かった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
荒れはてた野原の
彼方
(
かなた
)
の遠くの窓から流れてくる光が、ちらほらとほのめいているのを、彼はどんなにさびしい思いをして見やったことだろう。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
稲穂の実り豊かに垂れている田の
彼方
(
かなた
)
に
濃藍色
(
のうらんしょく
)
に
聳
(
そび
)
える山山の線も、異国の風景を眼にして来た梶には殊の
他
(
ほか
)
奥ゆかしく
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
つねにそれはぼくには異国の
彼方
(
かなた
)
にしかなく、せめて自家製の「充実」をかんじたいがために、ぼくはつねになにかに熱中していたいと思った。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
事実、「四十一度十三分の仰角」で見て、「はるか
彼方
(
かなた
)
に」見える大木というのは、あまりに高過ぎて不自然、あるいはむしろ不合理であろう。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
左右一面に氷の面が地平の遙か
彼方
(
かなた
)
まで果てしなく
展
(
ひろ
)
がっている。けさ運転士は南方に氷塊の徴候のあることを報じた。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
このように、颱風は大陸と日本との間隔を引きはなし、この帝国をわだつみの
彼方
(
かなた
)
の安全地帯に保存するような役目をつとめていたように見える。
颱風雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
或日黄金丸は、用事ありて里に出でし
帰途
(
かえるさ
)
、独り
畠径
(
はたみち
)
を
辿
(
たど
)
り
往
(
ゆ
)
くに、
只
(
と
)
見れば
彼方
(
かなた
)
の山岸の、野菊あまた咲き乱れたる
下
(
もと
)
に、黄なる
獣
(
けもの
)
眠
(
ねぶ
)
りをれり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
彼方
(
かなた
)
の席には小山の妻君がお登和嬢と並びし事とて一々料理の説明を聞き「お登和さん、このマルボントースは
柔
(
やわらか
)
で結構ですがどうして
拵
(
こしら
)
えます」
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
電車通を、右に折れたとき、半町ばかり
彼方
(
かなた
)
の自分の家の前あたりに、一台の自動車が、止まっているのに気が付いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
雜木林
(
ざふきばやし
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
白
(
しろ
)
く
連
(
つらな
)
つて
居
(
ゐ
)
る
西
(
にし
)
の
遠
(
とほ
)
い
山々
(
やま/\
)
の
彼方
(
かなた
)
に
横臥
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
たのが
俄
(
にはか
)
に
自分
(
じぶん
)
の
威力
(
ゐりよく
)
を
逞
(
たくま
)
しくすべき
冬
(
ふゆ
)
の
季節
(
きせつ
)
が
自分
(
じぶん
)
を
棄
(
す
)
てゝ
去
(
さ
)
つたのに
氣
(
き
)
がついて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ここは人家も少からず、町の
彼方
(
かなた
)
に秩父の山々近く見えて
如何
(
いか
)
にも田舎びたれど、熊谷より大宮郷に至る道の中にて第一の賑わしきところなりとぞ。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そしてその出来事自体はその翌日には一年昔の記憶の
彼方
(
かなた
)
へ遠ざけられているのであったが、ただ顔だけが切り放されて思いだされてくるのである。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
侍臣剣を抜きて流れに架すとそれを歩んで
彼方
(
かなた
)
の小山の
麓
(
ふもと
)
の穴に入り少時の後出て剣を踏んで王の口に還り入った。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
大海の
彼方
(
かなた
)
の国から訪れて来て、年ごとの豊産と繁栄とを祝福したまう神がマユンガナシまたはマヨの神であった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いま、はるか
彼方
(
かなた
)
の縁の雨戸に、コトリと、外から人でもさわるような物音がして、萩乃は、びくっと首をあげた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
“彼方”の意味
《名詞》
いずれも離れた場所の意
かなた
あちら
あっち
あなた
(出典:Wiktionary)
“彼方”の解説
『彼方』(かなた、Là-Bas)は、フランスの作家、J・K・ユイスマンスによる長編小説。
日本語版は田辺貞之助訳によるもの(創元推理文庫、改版2002年)が刊行されている。
(出典:Wikipedia)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“彼方”で始まる語句
彼方此方
彼方是方
彼方側
彼方向
彼方岸
彼方様
彼方詰
彼方此處