彼方むかふ)” の例文
お前さん、あの、うちの耕地の彼方むかふにある森を知つておいでだらう。そしてその森のむかふの、広い草地もおほかたは知つておいでだらう。
厨房だいどころすみからすみまでけむりで一ぱいでした、公爵夫人こうしやくふじん中央まんなかの三脚几きやくきつてッちやんにちゝましてました、それから料理人クツク圍爐裡ゐろり彼方むかふ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もう葉を失つて枯れ黒んだ豆がショボ/\と泣きさうな姿をして立つて居たりして、其の彼方むかふに古ぼけた勾配の急な茅屋かややが二軒三軒と飛び/\に物悲しく見えた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
眉毛まゆげながく、睫毛まつげく、彼方むかふうなじに、満坐まんざきやくにして、せなはうは、花輪はなわへだてゝ、だれにもえない。——此方こなたなゝめくらゐな横顔よこがほで、鼻筋はなすぢがスツとして、微笑ほゝゑむだやうな白歯しらはえた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
図の上半部を成してゐる彼方むかふには翠色すゐしよく悦ぶべき遠山が見えてゐる、其手前には丘陵が起伏してゐる、其間に層塔もあれば高閤かうかふもあり、黒ずんだ欝樹が蔽ふた岨もあれば
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しかし先きへ進むにつれて、だんだんあたりがひらけ、木立が疎らになつて、これまで祖父が波蘭ポーランド彼方むかふでも、つひぞ見たことのないやうな、恐ろしくひろびろとしたところへ出た。
其の蝙蝠傘の此方こつちは自分が握つてゐるが、彼方むかふは真の親切者が握つてゐるのだか狐狸が握つて居るのだが、妖怪変化、悪魔の類が握つてゐるのだか、何だか彼だかサッパり分らない黒闇〻こくあん/\の中を
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)