彼方あッち)” の例文
留めれば留めるほど、わめく。散々喚かして置いて、もう好い時分と成ッてから、お政が「彼方あッちへ」とあごでしゃくる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
茫然として母が袖を顔にあてて泣くのを視ていたが、ふと何だか胸が一杯になって泣こうとしたら、「まあ、彼方あッちへお出でなさい」、と誰だか袖を引張るから、見ると従弟いとこだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
阿母かあさんの奥様は想出したように私の方を向いて、「荷物がまだ其儘でしたっけね。今案内させますから、彼方あッちへ行って荷物の始末でもなさい。雪江、お前一寸ちょっと案内してお上げ。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)