彼方あそこ)” の例文
彼方あそこへ行って金を預けて買出しをすれば大丈夫だと、うち云置いいおいて出て来たまゝ帰ってねえで、もとより家蔵いえくらを抵当にして借りた高利だから、借財方しゃくざいかたから責められ
あの方はお金があるために悪者達に狙われているし、貴郎はあんまり美しい為に私のような悪い女に魅込みこまれたではありませんか——おや、畜生! また彼奴が、彼方あそこから私達を見張っている!
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼方あそこまでは何の気なしに乗って来たが、さあ隧道トンネルに掛ったら、旅という心地こころもちが浮いて来た。あの隧道を——君、そうじゃないか——誰だって何の感じもしないで通るという人は有るまいと思うよ。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)