)” の例文
高窓たかまど障子しょうじやぶあなに、かぜがあたると、ブー、ブーといって、りました。もうふゆちかづいていたので、いつもそらくらかったのです。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんでも夜中よなかすぎになると、天子てんしさまのおやすみになる紫宸殿ししいでんのお屋根やねの上になんともれない気味きみわるこえくものがあります。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さてはや、念佛ねんぶつ題目だいもく大聲おほごゑ鯨波ときこゑげてうなつてたが、やがてそれくやうによわつてしまふ。取亂とりみださぬもの一人ひとりもない。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あのしろ着物きものに、しろ鉢巻はちまきをした山登やまのぼりの人達ひとたちが、こしにさげたりんをちりん/\らしながら多勢おほぜいそろつてとほるのは、いさましいものでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ぶときはそのはねじつうつくしいいろひらめきます。このとりはね綺麗きれいですが、ごゑうつくしく、「ぶっ、ぽう、そう」ときつゞけます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いま餘波なごりさへもないそのこひあぢつけうために! そなた溜息ためいきはまだ大空おほぞら湯氣ゆげ立昇たちのぼり、そなた先頃さきごろ呻吟聲うなりごゑはまだこのおいみゝってゐる。
とたんに海騒うみざいのような観衆のりはハタとつばを呑んでやんだ。燕青の真白な肌にあい朱彫しゅぼりのいれずみが花のごとく見えたからである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『はゝゝゝゝ。きみはまだわたくし妻子さいし御存ごぞんじなかつたのでしたね。これは失敬しつけい々々。』といそがはしく呼鈴よびりんらして、いりきたつた小間使こまづかひ
やがて夕方ゆうがたになりました。松蝉まつぜみきやみました。むらからはしろゆうもやがひっそりとながれだして、うえにひろがっていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
本線ほんせんシグナルつきの電信柱でんしんばしらは、ものを言おうとしたのでしたが、もうあんまり気が立ってしまってパチパチパチパチるだけでした。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
河また河、谷また谷、ぼうぼうたる草は身を没して怪きん昼もく、そのあいだ猛獣もうじゅう毒蛇どくじゃのおそれがある、蕃人ばんじん襲来しゅうらいのおそれもある。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その婦人は母ではなく、琴もこの琴ではなかったかも知れぬけれども、大方母もこれをらしつつ幾度かあの曲をうたったであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その持っているものは、キイキイきながら、モソモソ動いています。これで、おばあさんにも、いまはじめてよくわかりました。
さいはひそのは十一時頃じごろからからりとれて、かきすゞめ小春日和こはるびよりになつた。宗助そうすけかへつたとき御米およねいつもよりえ/″\しい顏色かほいろをして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もう忍耐にんたい出來できない、萬年まんねんペンをとつてりあげた、そのおそろしいしもとしたあわれみをふかのようにいてゐる、それがたゝけるか。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
機関車きかんしゃの前へのこのこでてきてにげようともしないので、汽笛きてきをピイピイらしてやっといはらったというような話もあった。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
いははなをば、まはつてくごとに、そこにひとつづゝひらけてる、近江あふみ湖水こすいのうちのたくさんの川口かはぐち。そこにつるおほてゝゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
馭者ぎょしゃが馬を追うごとに、馬車はぎしぎしときしめきながら、落ち葉の波の上を、沈んでは転がり浮かんでは転がって行った。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
が七になつても、ふねはひた/\と波止場はとばきはまでせてながら、まだなか/\けさうにない。のうちまたしても銅鑼どらる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
きながら、雛鳥ひなしてきました。それはばかにおおきくて、ぶきりょうでした。母鳥ははどりはじっとそのつめていましたが、突然とつぜん
そのさへづこゑあつらうとしてたがひ身體からだえ飛び越えてるので小勢こぜい雲雀ひばりはすつとおりてむぎすゝきひそんでしまふ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
また、デーデーデーと元気よく鳴くこともあり、たまに春めいた日には森の方から針金のような夏向きのフィービーというをたてる。
おもひせまつて梅川うめかはは、たもとをだいてよろ/\よろ、わたしはうへよろめいて、はつとみとまつて、をあげたときしろゆびがかちりとつたのです。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「今のはさるき声であります。これからまたほかき声をおかせいたします。……さあひょっとこ人形、いたりいたり、犬のき声」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
昼より風出でてこずえることしきりなり、冬の野は寒きかな、すさあらしのすさまじきかな。人の世を寒しと見て野に立てば、さてはいづれに行かん。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
水煙みづけむりてました——ねえさんは三月兎ぐわつうさぎ友達ともだちとが何時いつになつてもきない麺麭ぱん分配ぶんぱいしたときに、茶碗ちやわんるのを
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
畑では麦が日に/\照って、周囲あたりくらい緑にきそう。春蝉はるぜみく。剖葦よしきりが鳴く。かわずが鳴く。青い風が吹く。夕方は月見草つきみそうが庭一ぱいに咲いてかおる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
れはうでほそかつたが、このなかには南蠻鐵なんばんてつ筋金すぢがねはひつてゐるとおもふほどの自信じしんがある。ほそきにいてゐるてのひらが、ぽん/\とつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
女房にようぼいわく、御大層ごたいそうな事をお言ひでないうちのお米が井戸端ゐどばたへ持つて出られるかえ其儘そのまゝりのしづまつたのは、辛辣しんらつな後者のかちに帰したのだらう(十八日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
言葉ことばはまたしばらく途切とぎれた。と、程近ほどちかくのイギリス人のいへでいつとなくりはじめたピヤノのが、その沈默ちんもくをくすぐるやうに間遠まとほこえて※た。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
翌朝よくてうかれはげしき頭痛づつうおぼえて、兩耳りやうみゝり、全身ぜんしんにはたゞならぬなやみかんじた。さうして昨日きのふけた出來事できごとおもしても、はづかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのきわどい一瞬間、大鼠山の方角から、かぶらの音が高く聞こえて、窓を通して一本の鏑矢広間の壁に突っ立った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのはずみに、銅貨がすべり落ちて、入口の石段いしだんでちゃりんとった。まっかになった指はまげることができず、銅貨をにぎっていられなかったからだ。
そのおと寂寞せきばくやぶつてざわ/\とると、りよかみけられるやうにかんじて、全身ぜんしんはだあはしやうじた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
左様さやうであらう、ソラ此器これ脈搏みやくはくくんだ、うだグウ/\るだらう。登「エヘヽヽヽくすぐつたうござりますな、左様さやうよこぱら器械きかいをおあてあそばしましては。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
天地間てんちかんぼくにんとりかず。ぼくしばらく絶頂ぜつちやういしつてた。このときこひもなければ失戀しつれんもない、たゞ悽愴せいさうかんえず、我生わがせい孤獨こどくかざるをなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
新室にひむろしづ手玉ただまらすもたまごとりたるきみうちへとまをせ 〔巻十一・二三五二〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
源四郎げんしろうの家では、屋敷やしき掃除そうじもあらかたかたづいたらしい。長屋門ながやもんのまえにある、せんだんの木に二、三のシギがいこぼしつつ、しきりにキイキイとく。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「おお、かあさんや、」とおとうさんがった。「あすこに、綺麗きれいとりが、こえいているよ。がぽかぽかとして、なにもかも、肉桂にくけいのようなあま香気かおりがする。」
シューラは素早すばやくはねきて、毛布もうふゆかへおっぽりすと、はだしでつめた床板ゆかいたをぱたぱたと大きくらしながら、ママのところへんでき、いきなりこうわめいた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
やつらがたうとけようと、中国ちうごく日本にほん兄弟きやうだいうへに×(3)あつむちそうそうたか
はじめは小川のせせらぎのように、かすかにかすかにりだし、ついで谷川たにがわの岩にくだける水音のようにひびきだして、法師のあわれにも、ほがらかな声が、もれはじめました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この室は家の主人の部屋へやにて、その時は東京に行き不在の折なれば、怪しと思いて板戸を開き見るに何の影もなし。しばらくのあいだすわりて居ればやがてまたしきりに鼻をらす音あり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、やがて發車はつしやふえつた。わたくしはかすかなこころくつろぎをかんじながら、うしろ窓枠まどわくあたまをもたせて、まへ停車場ていしやぢやうがずるずるとあとずさりをはじめるのをつともなくちかまへてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なるほど旨味うまい。いくらか元気げんきてきたので、ラランについてうえうえへとんでゐた。するともなくさきにゆくラランがまえのやうにのどらしはじめた。ペンペはでない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
果敢はかなのやとうちあふげばそら月影つきかげきよし、ひぢせたる丸窓まるまどのもとにんのさゝやきぞかぜをぎともずり、かげごとかあはれはづかし、見渡みわた花園はなぞのるのにしきつきにほこりて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「しめたぞ!」と大悦おほよろこびで、ぐツと氣を落着おちつけ、眼をつぶり、片手かたて後頭部こうとうぶを押へて息をらして考へて見る………頭の中が何か泡立ツてゐるやうにフス/\ツてゐるのがかすか顳顬こめかみに響く。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
鏽銀しやうぎんかねる……かすかに、……かすかに……やるせなきたましひめもあへぬ郷愁ノスタルヂヤア
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それにつれて戸のる音さえ、ガンガーン、ガンガーンと次第に調子をたかめて行って、はてしもなく高く騒々しくなって行く音は、家中のありとあらゆる戸——袋戸棚の戸でも、戸棚でも
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)