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念佛
さてはや、
念佛、
題目、
大聲に
鯨波の
聲を
揚げて
唸つて
居たが、やがて
其も
蚊の
鳴くやうに
弱つてしまふ。
取亂さぬ
者は
一人もない。
念佛の
濁つた
聲も
明るく
響いた。
地上を
掩うた
霜が
滅切と
白く
見えて
寮の
庭に
立てられた
天棚の
粧飾の
赤や
青の
紙が
明瞭として
來た。
そして武州家滅亡のゝちに
剃髪して尼となり、何処かの「
片山里に草の
庵を結んで、あさゆう
念佛を申すよりほかのいとなみもなかった」