念佛ねんぶつ)” の例文
新字:念仏
さてはや、念佛ねんぶつ題目だいもく大聲おほごゑ鯨波ときこゑげてうなつてたが、やがてそれくやうによわつてしまふ。取亂とりみださぬもの一人ひとりもない。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
念佛ねんぶつにごつたこゑあかるくひゞいた。地上ちじやうおほうたしも滅切めつきりしろえてれうにはてられた天棚てんだな粧飾かざりあかあをかみ明瞭はつきりとしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そして武州家滅亡のゝちに剃髪ていはつして尼となり、何処かの「片山里かたやまざとに草のいおりを結んで、あさゆう念佛ねんぶつを申すよりほかのいとなみもなかった」
お房の母は、また、其れが苦になツて、をりさへあれば其の非行ひかうを数へ立てて、所天をツテ罵倒こきおろした。雖然馬の耳に念佛ねんぶつだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
つがせ其身はたゞ明暮あけくれ念佛ねんぶつの門に入て名號みやうがうとなふるほか他事たじなかりしとぞ依て追々おひ/\佛果ぶつくわを得富右衞門は長命ちやうめいにてつひに年齡八十一歳に至りねむるが如く大往生だいわうじやうを遂げしとぞ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先驅さきがけひかり各自てんでかほ微明ほのあかるくして地平線上ちへいせんじやう輪郭りんくわくの一たんあらはさうとする時間じかんあやまらずに彼等かれらそろつて念佛ねんぶつとなへるはずなので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一番首いちばんくび一番乘いちばんのり、ソレ大得意だいとくいときであるからなんとなく了簡れうけんやはらかに、首筋くびすぢもぐにや/\としてをりから、自然しぜんあめさびしくなどはお念佛ねんぶつひとつもとなへるところ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うませいよいよさかえ行けるに母のお勝も大いに安堵あんどし常に念佛ねんぶつまい道場だうぢやうに遊びき庄兵衞が菩提ぼだいとむら慈悲じひ善根ぜんこんを事としたれば九十餘さい長壽ちやうじゆたも大往生だいわうじやう素懷そくわい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしおつぎがぢつゝそれでも餘儀よぎなくかくしてつてつたこめ必要ひつえうはなかつた。念佛ねんぶつ伴侶なかま交互かはりがはりすこしづゝの食料しよくれうつててくれるのを卯平うへい屹度きつとあましてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
決し在所ざいしよの永正寺と云尼寺あまでらへ入みどり黒髮くろかみそり念佛ねんぶつまい生涯しやうがいおくりし事こそ殊勝しゆしようなれされば長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それだから追分おひわけ何時いつでもあはれにかんじらるゝ。つまるところ卑怯ひけふな、臆病おくびやう老人らうじん念佛ねんぶつとなへるのと大差たいさはないので、へてへば、不殘のこらずふしをつけた不平ふへい獨言つぶやきである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此處こゝぬものか、なないものか、自分じぶん判斷はんだんをして、きるとおもへば平氣へいきし、ぬとおもしづか未來みらいかんがへて、念佛ねんぶつひとつもとなへたらうぢや、何方どつちにしたところが、わい/\さわぐことはない。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)