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念佛
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ねんぶつ
さてはや、
念佛、
題目、
大聲に
鯨波の
聲を
揚げて
唸つて
居たが、やがて
其も
蚊の
鳴くやうに
弱つてしまふ。
取亂さぬ
者は
一人もない。
念佛の
濁つた
聲も
明るく
響いた。
地上を
掩うた
霜が
滅切と
白く
見えて
寮の
庭に
立てられた
天棚の
粧飾の
赤や
青の
紙が
明瞭として
來た。
そして武州家滅亡のゝちに
剃髪して尼となり、何処かの「
片山里に草の
庵を結んで、あさゆう
念佛を申すよりほかのいとなみもなかった」
お房の母は、また、其れが苦になツて、
機さへあれば其の
非行を数へ立てて、
所天を
罵倒した。雖然馬の耳に
念佛だ。
繼せ其身は
只明暮念佛の門に入て
名號を
唱ふる
外他事無りしとぞ依て
追々佛果を得富右衞門は
長命にて
終に年齡八十一歳に至り
眠るが如く
大往生を遂げしとぞ
先驅の
光が
各自の
顏を
微明るくして
日が
地平線上に
其の
輪郭の一
端を
現はさうとする
時間を
誤らずに
彼等は
揃つて
念佛を
唱へる
筈なので
一番首一番乘、ソレ
大得意の
時であるから
何となく
了簡も
柔かに、
首筋もぐにや/\として
居る
折から、
自然雨の
寂しく
降る
夜などはお
念佛の
一つも
唱へる
處。
産せいよいよ
榮え行けるに母のお勝も大いに
安堵し常に
念佛三
昧の
道場に遊び
亡き庄兵衞が
菩提を
弔ひ
慈悲善根を事としたれば九十餘
歳の
長壽を
保ち
大往生の
素懷を
然しおつぎが
恥ぢつゝそれでも
餘儀なく
隱して
持つて
行つた
米の
必要はなかつた。
念佛の
伴侶が
交互に
少しづゝの
食料を
持つて
來てくれるのを
卯平は
屹度餘して
居た。
決し
在所の永正寺と云
尼寺へ入
翠の
黒髮を
剃て
念佛三
昧に
生涯を
送りし事こそ
殊勝なれ
然ば長庵を
それだから
追分が
何時でもあはれに
感じらるゝ。つまる
處、
卑怯な、
臆病な
老人が
念佛を
唱へるのと
大差はないので、
語を
換へて
言へば、
不殘、
節をつけた
不平の
獨言である。
此處で
死ぬものか、
死なないものか、
自分で
判斷をして、
活きると
思へば
平氣で
可し、
死ぬと
思や
靜に
未來を
考へて、
念佛の
一つも
唱へたら
何うぢや、
何方にした
處が、わい/\
騷ぐことはない。