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失
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な
ふりがな文庫
“
失
(
な
)” の例文
「ところで、
失
(
な
)
くなった絵図面がたった一晩ここへとめられた時、どこにどんな工合に置いてあったか、皆んな知っているだろうな」
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうした見張をしばらく続けている中に、先程の恐怖は大分
失
(
な
)
くなって行った。が、そのかわり今度は寒気が容赦なく押寄せて来た。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「率直」という、戦時中に得ていたはずのただ一つのぼくの倫理は、いまはぼくのなかで、
鞘
(
さや
)
を
失
(
な
)
くした鋭利な短剣でしかなかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
そんな時間が経過している
間
(
ま
)
にお常さんの姿も席上から消えて
失
(
な
)
くなってしまい、多くの芸子舞子の姿も消えて失くなってしまった。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そうら、始まったぞ、と
私
(
わし
)
一ツ腰をがっくりとやったが、縁側へつかまったあ——どんな風に、
失
(
な
)
くなったか、はあ、聞いたらばの。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「またこの後とてもそれが出來ることは疑ひありません。若し一つの手段が效力を
失
(
な
)
くしたら、また別のが工夫される譯ですから。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
父親があのトランクを永久に譲ってくれたとき、「どのくらい長くこれを
失
(
な
)
くさないでいるかな?」と、冗談にたずねたのだった。
火夫
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
だが又八は、からくもその杖の先から二度まであぶないところを
遁
(
のが
)
れた。総身の毛あなから酒の気が一瞬に消えて
失
(
な
)
くなっていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
置き
失
(
な
)
くした験温器を
捜
(
さ
)
がしていた、次の間の小夜子は、長火鉢の二番目の
抽出
(
ひきだし
)
を二寸ほど抜いたまま、はたりと引く手を留めた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい
失
(
な
)
くなるようになった事でも、充分想像が出来た。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
がふたりの荷物はもとより、この部屋についているものも何一つ
失
(
な
)
くなっていない。どろぼうの仮定もこれで見事に逆証されてしまった。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
文学に対する態度もまた
随
(
したが
)
って以前とは全く違って、一生の使命とするというような意気込も理想や抱負も
全
(
まる
)
で
失
(
な
)
くなっていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
親が口銭で叩き上げた身代を息子がドカッとやって
失
(
な
)
くしてしまう。俺は家の商売をやって貰うのは嬉しいけれど、それが心配でならない
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
メリー・ガアデン嬢といへば、今は
巴里
(
パリー
)
に住んでる、米国で名うての
首歌妓
(
プリマドンナ
)
だが、ある時
劇場
(
しばゐ
)
の稽古場で、大事の宝を
失
(
な
)
くしてしまつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
料理から個性というものが
失
(
な
)
くなり、ただ上っすべりした万人向きの無意義な薄っぺらなことにして、お茶を濁しているように思われます。
衰えてきた日本料理は救わねばならぬ
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
独逸
(
どいつ
)
の
名高
(
なだか
)
い作者レツシングと
云
(
い
)
ふ人は、
至
(
いた
)
つて
粗忽
(
そそつか
)
しい
方
(
かた
)
で、
其上
(
そのうへ
)
法外
(
ばか
)
に忘れツぽいから、
無闇
(
むやみ
)
に
金子
(
かね
)
や
何
(
なに
)
かゞ
失
(
な
)
くなる
(洋)金の勘定を仕ずに来た
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「余り嘘ばかり云って先生や奥さんの信用を
失
(
な
)
くしましたから、譬え一時間でも二時間でもお目にかかり度くて参りました」
旧師の家
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
母や祖母を早く
失
(
な
)
くした私のために、世話する役人などは多数にあっても、私の最も親しく思われた人はあなただったのだ。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
彼は——印半纏の男は、顏色を
失
(
な
)
くして、爲すべき事を知らぬもののやうに、手をもぢもぢとさせて、こくりと唾を呑んだ。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
そうして、おかしいことには、お姫さまの化粧室に置いてあって、いつもお使いになる古代の鏡が同時に
失
(
な
)
くなっていたのだそうでございます
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
「へえ、リモオジュの絵葉書があるね。これは泉ちゃんのところへ送ってよこしたんだね。よくそれでもこんなに
失
(
な
)
くならないで残っていたね」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あなたがわたくしのからだに織り込もうとなすった禍いが夢のように、……この毒のある花の匂いのように、
失
(
な
)
くなってしまうところへ参ります。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
トレープレフ (母親を抱いて)僕の気持がお母さんにわかったらなあ! 僕は何もかも、すっかり
失
(
な
)
くしてしまった。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
人情の花も
失
(
な
)
くさず義理の幹もしっかり立てて、
普通
(
なみ
)
のものにはできざるべき親切の相談を、一方ならぬ
実意
(
じつ
)
のあればこそ源太のかけてくれしに
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それからは、
見
(
み
)
えない
眼
(
め
)
で、
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
を
探
(
さぐ
)
り
廻
(
まわ
)
り、
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
や
草
(
くさ
)
の
実
(
み
)
を
食
(
た
)
べて、ただ
失
(
な
)
くした
妻
(
つま
)
のことを
考
(
かんが
)
えて、
泣
(
な
)
いたり、
嘆
(
なげ
)
いたりするばかりでした。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
愛の働きを聞いてからは子を
失
(
な
)
くしてまたおおぜいの子を持った
心地
(
こころもち
)
で、望みという事を教えられてから、辛抱をするにも楽しみがつきましてね——
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
しかも
刹那
(
せつな
)
に人間の魂の無限性を消散してしまつて、生の余韻を
失
(
な
)
くしてしまつたやうな惜しい気持ちがしますね。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
とてもその勢いで取って返し、その家に訪ねていって、名札の取れて、もういなくなってしまった事情を訊ねてみる力は
失
(
な
)
くなってしまったのである。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
少女たちが瘠せ細りながらも神経がやや脂肪づき、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
卯薔薇
(
うばら
)
ほどの花になつて咲く年齢になつても、明子だけは依然色を
失
(
な
)
くした
蕁麻
(
いらくさ
)
として残つた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
この社会的勢力が変遷するに伴って支配階級の質も変化するが、しかし支配階級そのものが
失
(
な
)
くなるのではない。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
陽
(
ひ
)
というものがまるで
失
(
な
)
くなってしまったのではないというしるしに、時どきうすい影を投げることもあるが、それは忽ち暗い雲の袖に隠れてしまった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ぼくをみるなり「坂本さん。これあんたんじゃろう。
随分
(
ずいぶん
)
、あんたを探していたのよ」と差出してくれたのは、
失
(
な
)
くしたとばかり、思っていた蟇口です。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
おじいさんはやさしく
云
(
い
)
いました。「木ペン
失
(
な
)
ぐした。」キッコは
両手
(
りょうて
)
を目にあててまたしくしく泣きました。
みじかい木ぺん
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
小径
(
こみち
)
をぐるぐる廻り、ここという場所を探し、そこで銀貨を「
失
(
な
)
く」し、
踵
(
かかと
)
で押し込み、腹這いに
寝転
(
ねころ
)
がる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
赤
(
あか
)
ん
坊
(
ぼう
)
をひっかいたり、お
嬢
(
じょう
)
さんの
手提
(
てさげ
)
を
失
(
な
)
くしたり、
取
(
と
)
り
返
(
かえ
)
しのつかないことをするようになりました。
花の咲く前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
とか何とか程よく
威
(
おど
)
しましたんでね、元も子も
失
(
な
)
くしちゃ大変と、首をつないでおいて、下郎風情があのような
別嬪
(
べっぴん
)
を私するとは不埓至極じゃ、分にすぎるぞ。
旗本退屈男:10 第十話 幽霊を買った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
『
豚
(
ぶた
)
ッて
云
(
い
)
つたのよ』と
愛
(
あい
)
ちやんは
答
(
こた
)
へて、
私
(
わたし
)
はお
前
(
まへ
)
が
何時
(
いつ
)
までも
然
(
さ
)
うして
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
ないで、
急
(
きふ
)
に
失
(
な
)
くなつて
呉
(
く
)
れゝば
可
(
い
)
いと
思
(
おも
)
つてるのよ、
眞個
(
ほんとう
)
に
眩暈
(
めまひ
)
がするわ』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
それからそこへ
逗留
(
とうりゅう
)
しておるうちに私が長い間連れて歩いた二
疋
(
ひき
)
の羊が
失
(
な
)
くなったという始末なんです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
はじめに見た武家の
御息子
(
ごそくし
)
様のような
初々
(
ういうい
)
しい丁寧な言葉づかいも、しだいに
失
(
な
)
くなったともいった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
わずか一年
過
(
た
)
つか過たない内に——花魁のところに来初めてからちょうど一年ぐらいになるだろうね——店は
失
(
な
)
くなすし、家は
他人
(
ひと
)
の物になッてしまうし、はははは
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
日本授産館の山師に
騙
(
だま
)
されて財産を半分程
失
(
な
)
くしたのと全く自暴自棄に陥つたやうな話であつた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
忽ち叫ぶお代の声「ヤア大変だ、満さん来てくっせいよ。わしの
箪笥
(
たんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
が明いて中の
衣服
(
きもの
)
が皆んな
失
(
な
)
くなったよ」と
俄
(
にわ
)
かに騒いで「ぬすっとうめ」と表へ駆け出す。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「それから親方さん、わたしあの手紙に附いているお金をお預かり申したんですけれど、それを
失
(
な
)
くしてしまいましたから、ぜひそのお
詫
(
わ
)
びをしなければなりませんが」
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
調べておいたんだよ。一つも
失
(
な
)
くなってはいなかったんだよ。そして昼休みが済んだら二つ失くなっていたんだよ。そして休みの時間に教場にいたのは君だけじゃないか。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
けれど
爲
(
しよ
)
うことなしに
眠
(
ねむ
)
るのはあたら一
生涯
(
しやうがい
)
の一
部分
(
ぶゝん
)
をたゞで
失
(
な
)
くすやうな氣がして
頗
(
すこぶ
)
る
不愉快
(
ふゆくわい
)
に
感
(
かん
)
ずる、
處
(
ところ
)
が
今
(
いま
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
如何
(
いかん
)
とも
爲
(
し
)
がたい、
眼
(
め
)
の
閉
(
とづ
)
るに
任
(
ま
)
かして
置
(
お
)
いた。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
彼女の結婚したアラン・マクドオナルドは——エンマが言う——絲切り歯が一枚
失
(
な
)
い。結婚の晩に、この、年齢の割りには鳥渡異常な事実に気がついて、変に思ったのだった。
消えた花婿
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
アキの品物は一つ一つ
失
(
な
)
くなった。私の女からいくらかずつの金を借りてダンスホールへ行くようになった。しかし男は見つからなかった。それでも働く決意はつかないのだ。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
わたしは永久に
失
(
な
)
くならないように、あなたの
生命
(
いのち
)
を吸わなければならないのよ。わたしはあなたをたいへんに愛していたので、ほかの恋びとの血を吸うことに決めていたの。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
實は私自身強ひて泊る氣も
失
(
な
)
くなつてゐた時なので、それもよからうと直ぐ思ひ直した。
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
もう助かる望みがないと心を決めてしまったので、初め私の元気をすっかり
失
(
な
)
くした、あの恐怖の念が大部分なくなったのです。絶望が神経を張り締めてくれたのでしょうかね。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
失
常用漢字
小4
部首:⼤
5画
“失”を含む語句
失敗
失策
過失
紛失
失錯
失望
大失策
失笑
失礼
失敬
消失
紛失物
失踪
失禮
喪失
見失
遺失
茫然自失
大失敗
失念
...