)” の例文
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「さあ、どこのいえでしょうね。どこでも、このお天気てんきのうちに、をつけるんですよ。きっと、このあとは、ゆきがふりますからね。」
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あらをはつたとき枯葉かれはおほいやうなのはみなかまでゝうしろはやしならみきなはわたして干菜ほしなけた。自分等じぶんら晝餐ひるさいにも一釜ひとかまでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
譬えば新体詩なんぞになんじと書いてナと読ませてナのおもかげとかナの姿とか読ませる。文字を見ずにただ聞くとはなが幽霊になったようだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「冬ごもりの間は、乾物かんぶつばかり召しあがっておいでだから、こんな青々した木の芽やをさし上げたら、きっとおよろこびになるだろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冬木とうぼくが縁の日向に坐って、懐手でぼんやりしているところへ、俳友の冬亭とうていがビールと葱をさげてきて、今日はツル鍋をやりますといった。
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
会場の楽屋で、服の胸をはだけ、両手を椅子の背中へたらしたかっこうにこしかけている長野は、とめみてたちあがりもしなかった。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
ズット背後うしろの方の薄暗い処のドアいて、青い葉服ぱふくを着た顔中髯だらけの大男が一人トロッコをノロノロと押しながら出て来たんです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よごれたふく、まぶかく冠ったもみくちゃの鳥打帽とりうちぼう、そのひさしの下から、機械の油で真黒になった顔がのぞいている。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
でたくさんです。困苦欠乏こんくけつぼうにたえる精神がなによりも大切です。それはそうとして、ご自習をお始めください」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
平次は叔母さんがれてくれた、去年貰つた新茶の、火が戻つてすつかり臭くなつたのを、それでも有難さうにすゝつて、八の報告を促します。
十二、三ばかりの、女の子が前かがみに何か線の細かなをすすいでいる、せりかときいてみるとかすかに顔を赤らめながら、人参にんじんの葉だという。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
浪「いつものばゞあがまいりました、あの大きなかご脊負しょってお芋だの大根だの、や何かを売りに来る婆でございます」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うめはなはなののどかな村むらを、粟毛くりげ額白ぬかじろの馬をのりまわした糟谷は、当時とうじわかい男女の注視ちゅうし焦点しょうてんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ごちそうは、これも恒例で、赤飯に、小さいながらも、おかしら付きの焼鯛やきだい、それにじると大根なますだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
北野きたのはづれると、麥畑むぎばたけあをなかに、はな黄色きいろいのと、蓮華草れんげさうはなあかいのとが、野面のづら三色みいろけにしてうつくしさははれなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おかみさんはあんな青々あおあおした、あたらしいべたら、どんなにうまいだろうとおもうと、もうそれがべたくって、べたくって、たまらないほどになりました。
巌角いわかどを鋭どく廻って、按摩あんまなら真逆様まっさかさまに落つるところを、きわどく右へ切れて、横に見下みおろすと、の花が一面に見える。雲雀はあすこへ落ちるのかと思った。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、やがて、もゆだったので、湯から揚げて水にひたした。それから、鍋を持ちあげて井戸端いどばたどぶのところまでもって行き、溝に煮え湯をこぼそうとした。
私共夫妻が最初千歳村に来て、ある小川の流れにを洗う女の人に道問うた其れはH夫人であったそうです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「また地球で、わしをからかうんだね。地球のことはもうたなにあげときましょう。さて今夜の料理にはね、牡牛おうしの舌の塩づけに、サラダをそえて、その上に……」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それが火口かこうからあがつて形状けいじようは、西洋料理せいようりようり使つかはれるはなてゐるから菜花状さいかじようくもばれる。これには鎔岩ようがん粉末ふんまつくははつてゐるから多少たしよう暗黒色あんこくしよくえる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すると其処の電燈の下には、あの優しい花宝玉が、でっぷり肥った阿姨アイと一しょに、晩餐の食卓を囲んでいた。食卓には皿が二枚しかない。その又一つはばかりである。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はる野路のぢをガタ馬車ばしやはしる、はなみだれてる、フワリ/\と生温なまぬるかぜゐてはなかほりせままどからひとおもてかすめる、此時このとき御者ぎよしや陽氣やうき調子てうし喇叭らつぱきたてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さては谷川の岸にを洗いつつ、みち行く貴人にえんなることばを送り、見いだされてその家につかえ、故郷の親兄弟をよろこばせたりしたのかも知れぬが、くだってはそれもことごとく
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
富太郎金三郎深田の葦刈よしかり。女中三人は午前つけ。午後裏畑うらはた草取くさとり。伝太郎をたのんで十一俵買。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
げんげやたんぽぽやの花の上を渡って来る風で野天のようにカラリとしている。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
野には、日当ひあたりのいい所には草がすでにもえて、なずなど青々としている。関さんはところどころで、足をとめて、そろそろ芽を出し始めた草をとった。そしてそれを清三に見せた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「海老の天ぷら、のひたしもの、かき鍋、やっこ豆腐、えびと鞘豌豆さやえんどうの茶碗もり——こういう料理をテーブルの上にならべられた時には、僕もまったく故郷へ帰ったような心持がしましたよ。」
マレー俳優の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは去年の秋の頃、綿のような黄金色こがねいろなす羽に包まれ、ピヨピヨ鳴いていたのをば、私は毎日学校の行帰ゆきかえり、を投げをやりして可愛がったが、今では立派にふとった母鶏ははどりになったのを。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
野原はの花のさいているじぶんにしろ、稲の苗のうわったじぶんにしろ、月が出れば、明るくて美しいものです。しかし月が出ても出なくても、もう和太郎さんには、どうでもいいことです。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
花畠はなばたけむぎの畠、そらまめの花、田境たざかいはんの木をめる遠霞とおがすみ、村の小鮒こぶな逐廻おいまわしている溝川みぞかわ竹籬たけがき薮椿やぶつばきの落ちはららいでいる、小禽ことりのちらつく、何ということも無い田舎路ではあるが
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
良吉はいぶかしさうに膳の上を見入つたが、其處には故郷くにから來たらしい食物は一つもなかつた。甘つたるい浸物したし鹽鱒しほますの燒いたのと、澤庵と辣薤らつきようとが珍しくもなく並んでゐるばかりだつた。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
紅梅こうばいの花をけたつぼ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
前妻こなみ一二が 乞はさば
てふのはをなぶるよに
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ます
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのころ、しろくものあわただしくはしる、そらしたで、ねこは、はなにとまろうとする、しろ胡蝶こちょう葉蔭はかげにかくれて、ねらっていました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
さて、つまみ、ちがへ、そろへ、たばねと、大根だいこのうろきのつゆ次第しだいしげきにつけて、朝寒あさざむ夕寒ゆふざむ、やゝさむ肌寒はだざむ夜寒よさむとなる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
煙草色たばこいろの制服のなかで、機械工だけが許されている色制服のちがいで、女工たちのあいだに人気があった。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
れるはなを見、飛ぶ蝶に眠気ねむけを誘われ、のどかな町の音響や、城普請しろぶしんのみの音など聞いていると、将士は無為むいに飽いて、ふとそんな錯覚すら抱くのだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは雲雀ひばりに化して、の花のを鳴き尽したるのち、夕暮深き紫のたなびくほとりへ行ったかも知れぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お八重は叱るものが居なくなったせいか、昨夜ゆうべの残りの冷飯ひやめしの全部と、糠味噌ぬかみその中の大根やを、ぬかだらけのまま残らず平らげたために、烈しい下痢を起して
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
モウ二三にんるまで待つてはられぬ、はらへつたまらぬのぢや——これめしと間違まちがへたとふ話です、其頃そのころ商売しやうばいではなかつたから、其位そのくらゐのものでござりましたらう。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それからは、毎日まいにち毎日まいにちことばかりかんがえていたが、いくらしがっても、とてべられないとおもうと、それがもとで、病気びょうきになって、日増ひましせて、あおくなってきます。
第二十八 サラダサンドイッチ はチサの若葉を塩水で洗ってよく水気を切っておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
はるかざつて黄色きいろぬのおほうたやうなはなも、はるらしいあめがちら/\とつてしもけたやうな滅切めつきりあをみをくはへてころそのひらいた心部しんぶにはたゞわづか突起とつき見出みいだす。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一軒の小さな八百屋やおやがあって、あかる瓦斯ガスの燃えた下に、大根、人参にんじんねぎ小蕪こかぶ慈姑くわい牛蒡ごぼうがしら小松菜こまつな独活うど蓮根れんこん、里芋、林檎りんご、蜜柑の類がうずたかく店に積み上げてある。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まだの花も咲かず蝶々も出ないのですが、路傍のよもぎ田芹たぜりが芽ぐんで、森の蔭、木立こだちの中に、眞珠色の春霞はるがすみが棚引いて、まだ陽炎かげろふは燃えませんが、早春のよそほひは申し分もありません。
もっとも、六人もの子供の食事をまかなうのだから、お一つ買うのにも頭を使うと使わないとでは随分な違いになる訳であるが、いやしいことを云えば、お惣菜そうざいの献立なども大阪時代とは変って来て
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)