)” の例文
石をらして平坦にしたところがあって、燃え残りの偃松が、半分炭になって、散らばっていたが、木材は求められなかった。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
千浪は大きく頷首うなずいて、髪から、かんざしを抜き取った。そして、大次郎の口もとから眼を離さずに、横ざまに片手をさし伸べて、行燈あんどん灯立ほたちをらした。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、袋を俵の陰に隠しておいて米の面をもと通りにらした。それからかねて稽古しておいた「寿」の字を祖母の手つきに似せて指で書きつけた。
収穫時に落ちる種子で翌年には十分であり、そして春に一度ならしぐわらす必要があるだけである。そしてこれは土壌の肥沃度が減退し始めるまで継続される。
村の鎮守の丁寧にらされた砂上などには、ほとんまつて老媼が孫の相手をして遊んで居るのが見あたる。
(新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
それであきらめたり投げてしまったりはしない、切れた堤を築き直し、石を一つずつ積み、崩れたがけらし、流された家を再建したりして、逞しく立ち直ってゆく
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今まで薄暗いところで見た娘のかおのくぼみやゆがみはすっかりらされ、いつもの爛漫らんまんとした大柄の娘の眼が涙をいたあとだけに、尚更なおさらえとしてしおらしい。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
灰は美しくらされては掻きかへされ、均らされては掻きかへされ、大きな灰の塊は隅に積まれて、栄一はその上に二重文字で『超然』と云ふ文字を繰返し繰返し書いてゐた。
丁度田圃が碁盤の目の様に整理されてしまい、水道がコンクリートの護岸で板張の様な水底にらされてしまい、蜿蜒えんえんと連なった雑木林が開墾されて桑園とされてしまった様に
煉瓦というものがたいへん乾いていて、まだ平らにらさないうちから漆喰の水分を吸いつくしてしまい、新しく炉を築くには手桶に何杯もの水が入用なのを知っておどろいた。
たんばかりの畑地はよくらされてある。麦でも直ぐいてよさそうに準備されている。何の種を播くのかとなおよく見ていると、百姓の馬としては、あまりに神威を備えた白馬はふさわしくない。
火鉢の灰をらしてみた
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
白い小山をねらした雪田が三稜角形に、へららされたようになって、五、六町もつづいている、自分が従来見た雪田というのは、多少の凸凹たかひくがあるにしても
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
薫はひじで払いけるが、小初はかまわず背筋へ入れた砂をぽんぽんと平手でたたらして
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
職業の踏みらされた路を行くのがいちばん安心だと極めてしまった若い人々。
新しくらされた土の上には、亜鉛屋根だの、軒燈だの、白木の門などが出来て、今まで真鍮しんちゆうびやうを打つたやうな星の光もどうやら鈍くなり、電気燈が晃々くわう/\とつくやうになつた。
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
深林の中に踏みらした小径がある、晃平は「こりゃ鹿の路だあ」と言って、目もくれずに先へ立って登る、禿木はげきの枯れ切った残骸が、蒼玄あおぐろい針葉樹林の間に、ほの白く見える
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
また森林に入ってからは、みちは前ほどにらされておらず、木の根岩角は、旧道のおもかげを存して古のお中道が、断絶されたたこの糸のように、頭上に懸かっているのが指さされる。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
誰かが前に土をらした痕のある、野宮地にはあつらえ向きな、三間位な平地が出来ている、黄花石楠花、小岩鏡、チングルマ、岩梅などが、疎らに生えている、位置は東を向いて、富士山と対している
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)